週刊ドラフトレポート2025(毎週金曜日更新)

今年もあるぞ青学大からの上位指名!威力が増した精密右腕/高1から甲子園沸かせた左の強打者

西尾典文

制球力の高さと多彩な変化球で投げ分ける中西(左)と、東都大学野球を代表する強打者の小田(右) 【撮影:西尾典文】

 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 今回は昨年大学四冠(春季リーグ戦・全日本大学野球選手権・秋季リーグ戦・明治神宮大会)の偉業を達成した青山学院大を牽引する投打の柱について取り上げます。

高校、大学で日本一を経験。大学球界でも屈指の安定感を誇る右腕

抜群の制球力にストレートの成長力が目を引く中西 【撮影:西尾典文】

中西聖輝(青山学院大 4年 投手 182cm90kg 右投/右打)

【将来像】吉見一起(元中日)

高い制球力とフォークを生かした投球スタイルが近い
【指名オススメ球団】ヤクルト
安定感のある先発タイプの投手が欲しい
【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名(2位以上)の可能性あり

 一昨年は常廣羽也斗(広島1位)、下村海翔(阪神1位)、中島大輔(楽天6位)、昨年は西川史礁(ロッテ1位)、佐々木泰(広島1位)と多くの選手をプロに輩出している青山学院大。そんなチームで今年最注目の存在となるのがエースの中西だ。奈良県の出身で中学時代は強豪の橿原磯城リトルシニアでプレー。智弁和歌山では1年春から公式戦に登板すると、2年秋からエースとなり、3年夏には甲子園優勝も果たしている。大学では2学年上に常廣、下村、松井大輔(NTT西日本)など力のある投手がいたこともあって下級生の頃は登板機会が少なかったが、昨年春から先発の一角に定着。秋には6勝0敗と圧倒的な成績を残して最優秀投手とベストナインに輝き、チームの大学四冠達成にも大きく貢献した。

 今年春のリーグ戦も開幕戦こそ6回を投げて5失点で負け投手となったが、その後は2試合に先発して18イニングを投げて2失点(4月16日終了時点)とまずまずのスタートを切っている。筆者が実際に投球を見たのは敗れた開幕戦の中央大戦と、9回を13奪三振で2失点と好投した日本大戦の2試合だが、どちらも持ち味は十分に発揮した印象を受けた。最大の持ち味は多彩な球種を巧みに操り、あらゆるパターンで勝負できるという点だ。120キロ台中盤のスライダーと130キロ前後のツーシームという対になる変化球を上手くコーナーに投げ分け、左右のゾーンを広く使うことができる。特にスライダーは左打者の外角のボールゾーンからストライクになるボールを上手く使っており、見逃し三振を奪うケースも多い。また130キロ台で鋭く落ちるフォークもストライクゾーンとボールゾーンに投げ分けており、決め球として十分な威力を発揮している。時折交ぜる110キロ台のカーブも打者の目線をそらすのに有効だ。

 そして昨年からの成長を感じさせたのがストレートである。秋までは力を入れると140キロ台後半をマークすることはあったものの、大半は140キロ台前半が多く、少し物足りなさを感じた部分は大きかった。しかしこの春のリーグ戦は立ち上がりから終盤まで安定して140キロ台後半をマークしており、数字に見合うボールの勢いも感じられるようになっていたのだ。9回まで投げ切った日本大との試合でも味方が追いついた後の9回裏に、150キロ近いスピードボールを連発するなど、スタミナ面でも充実ぶりが見えた。

 ただ課題があることも確かだ。少し反動をつけようとして体が左右に振られる動きが大きくなり、左打者の内角を狙ったボールを引っ掛けるケースが目立ったのだ。開幕戦の中央大戦では立ち上がりに左打者に2つの死球を与えてピンチを招き、味方のエラーで失点を喫している。またリズムの良さは持ち味だが、日本大戦の初回には単調になってストライクゾーンにボールを集め過ぎて連打を浴び、いきなり2点を先制された。もう少しテンポを変えるなどして、投球に変化をつけることも必要になってくるだろう。

 ただ、元々持っていた制球力の高さと多彩な変化球に加えてボールの力がアップしたのは大きなプラス要因である。現在の投球を続けていけばこの春も勝ち星を重ねられる可能性は高く、順調にいけば上位指名も見えてくるだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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