秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

　今回は4月上旬に行われた侍ジャパンU-18日本代表の候補選手強化合宿で目立つプレーを見せた本格派サウスポーと強肩強打の捕手を紹介します。

江藤蓮（未来富山 3年 投手 180cm/83kg 左投/左打）

【将来像】一回り大きい今永昇太（カブス）
長いリーチを柔らかく使える腕の振りとバランスの良いフォームは今永と重なる
【指名オススメ球団】ロッテ
若手の左投手が不足しているチーム事情から
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

　4月3日から3日間にわたって行われたU-18日本代表の候補選手強化合宿。昨年はこの合宿で高橋幸佑（北照→中日5位）が一躍注目を集めてプロ入りを果たしたが、今年の合宿で一気に評価を上げた印象を受けるのが江藤だ。未来富山は2018年創部という新しいチームで、甲子園はもちろん北信越大会出場の経験もない。江藤はそんなチームで1年春から外野手兼投手として公式戦に出場。1年秋からはエースとなると、昨年夏の富山大会では初戦の新川戦で完封、準々決勝の新湊戦でも1失点完投と見事な投球を見せ、チームを初の準決勝進出に導いた。江藤の名前がスカウトから聞かれるようになったのはこの頃からである。

　しかし秋の県大会では3回戦で敗退し、この春は部内の不祥事によって練習試合が取り止め。そのこともあってスカウトの間でも実際に投球を見たことがある人は少なかったそうだ。そんなベールに包まれていた存在で、しかも貴重な左腕ということで注目度も高かったが、視察した多くのスカウト陣の前で江藤は見事なパフォーマンスを見せる。2日目に行われた紅白戦、先頭打者にこそボールが先行したものの三者凡退で抑えると、次のイニングは全く危なげない投球で2回をパーフェクト、2奪三振と圧巻のピッチングを披露したのだ。180cm、83kgというプロフィールを見ても分かるように、高校生としては十分にたくましい体格だが、さらに姿勢が良く腕も長いためその数字以上にマウンド上で大きく見える。グラブを持つ右手を高く上げる動きはあるものの決して力任せではなく、下半身主導のバランスの良いフォームで楽に腕を振って投げられるというのが大きな長所だ。ストレートのスピードは筆者のスピードガンで最速142キロと、驚くような数字ではなかったが、肘の使い方に柔らかさがあり、球持ちも長いため打者の手元での勢いは申し分ない。まだ4月の上旬で、対外試合もできていなかったということを考えると、ここからまだまだスピードアップしていく可能性も高いだろう。変化球では打者の手元で鋭く変化するカットボールが一級品で、少しスピードを落としたスライダーでもカウントをとることができていた。この強化合宿や選抜高校野球でもチェンジアップやツーシームといったシュート系の変化球を上手く操る左腕は多かったが、逆にスライダー系のボールの良い投手があまりいなかっただけに、余計に江藤のピッチングが新鮮に映った。

　U-18侍ジャパンの小倉全由監督（前日大三監督）も紅白戦終了後に印象に残った投手として江藤の名前を挙げており、視察したスカウト陣からも称賛の声は多かった。わずか2イニングの登板でも残したインパクトは相当大きかったことは間違いないだろう。幸いなことにチームの不祥事による処分は3月末までの対外試合禁止となり、4月以降の公式戦には問題なく出場できることとなった。春季大会、そして夏の選手権でも順調なアピールを見せれば貴重な左腕だけに高い評価でのプロ入りも見えてくるだろう。