週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

「たかがボール1個分。されどボール1個分」 大谷翔平の復調を占うコンタクトポイントとは?

丹羽政善

大谷の好不調を測るバロメーター

14日ロッキーズ戦、大谷はバックスクリーンへ会心の一発を放つなど3安打の活躍で連敗ストップに貢献した 【写真は共同】

 今年からベースボール・サバント(ホークアイを用いたメジャーリーグ独自のデータ解析ツールSTATCASTのデータを検索できるサイト)では、打者がボールをどの位置で捉えたかが、データとして提供されている。そのサンプルとして先日、大谷のデータが紹介されたが、リーグの中でも、もっともボールを引きつけて打っている1人だった。

【参照:Baseball Savant】

 コンタクトの位置は、メジャーリーグ平均(2024)がホームベースの先端から2.4インチ(1インチは2.54センチ)手前。つまり、2.4インチ投手寄り。大谷は先端から3.7インチ後ろ。その差は6.1インチもあった。

 もちろん、コンタクトポイントは打席の立ち位置を考慮する必要があるので、Baseball Savantでは、体の重心からの位置も計測し、公開されている。それによると昨年、大谷の重心からコンタクトポイントまでの距離は25.7インチで、メジャー全体で16番目の近さだった。

 ただ、今年のデータ(4月12日まで)を見ると、大谷のコンタクトポイントはベースの先端から2.3インチ後ろ。昨年より1.4インチも投手寄りになっていた。

 空振りまで含めた場合(バットとボールが一番近づいた地点で計測)の平均値はベース前0.4インチ。昨年は2.4インチ後ろだったので、2.8インチも差がある。重心からの距離は昨年が26.8インチ。今年は29.8インチなので、昨年より3インチ遠くなっていた。

 3インチというのは、ほぼボールの直径と同じだ。空振りまで含めた場合の平均値、また、重心からの平均距離は、いずれもボール約1個分、コンタクトポイントが投手寄りになっているということが分かる。

 メジャーリーグでは、ホームプレートの前にお金が落ちていると言われ、長打を打つならホームプレートの前で捉えるというのが一般的な考え方。しかし、それは大谷本来のコンタクトポイントではない。一昨年もコンタクトポイントはベースの先端から4.3インチ後ろ。重心からの距離は25.7インチ。

 たかがボール1個分。されどボール1個分。

 今後、大谷のコンタクトポイントはどうなるのか。ホームプレートの先端のラインから下がり始めたそのとき、打球はセンターから左中間方向に放物線を描くようになり、本来の姿となると予想できるが、紛れもなくその数値は、大谷の状態を知る上でのバロメーターとなりそうだ。

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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