週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

「たかがボール1個分。されどボール1個分」 大谷翔平の復調を占うコンタクトポイントとは?

丹羽政善

2日ブレーブス戦の9回、大谷は今季3号となるサヨナラ本塁打を放ち、チームを開幕8連勝に導いた 【写真は共同】

「今はまだ何を打ったか(球種)は分かっていないので、そのぐらい自然に反応できている」

 4月2日(※日時はすべて現地時間)のブレーブス戦で、元チームメートのライセル・イグレシアスからサヨナラ本塁打を放つと、大谷翔平(ドジャース)は試合後、額に汗を浮かべながら手応えを口にした。

「失投が来たときに、最近はファウルが多かったんですけど、しっかり振れるということはまずいい反応ができているということですし、ファウルになっていたのが本塁打になっているというのは、いいスイング軌道でボールに入っていっているのかなと思う」

 状態が上がってきた――。誰もがそう受け取ったものの、続くフィラデルフィア遠征(4月4日~6日)では、11打数1安打、2四球。4月6日の試合では3打席連続三振を喫し、それは、昨年7月24日のジャイアンツ戦以来だった。

 確かに、相手は厳しい攻めを見せていたが、ミスショットもあった。どうしたのか? 惜しくもサイクル安打を逃した7日の試合後、こんな話をした。

「時差(ボケ)が治りきったところでこっちに来てという感じだったので」

 4月だからといって、疲れがない、ということはない。もちろん、9月の疲れとは種類が違うが、まだ体が移動や寒い中でのプレーに慣れていない。時差もある。日本での開幕戦を含めた移動、気候の違いが、大谷だけではなく、開幕8連勝を飾ったチームの勢いも止めた。

「1回目の遠征なのでなかなかリズムに乗り切れないところはあるのかなと思う」

ミスショットが増えた要因は?

6日のフィリーズ戦で3打席連続の空振り三振に倒れた大谷 【写真は共同】

 東京での開幕戦から8試合とその後の8試合を比較してみた。サンプルが少ないのは仕方がないが、かなりの差があった。

大谷の2025年打撃成績(開幕戦から8試合とその後の8試合) 【参照:Baseball Reference.com】

 これは大谷が言うように、東海岸遠征での疲労だけが原因なのか? メカニックなども、疲労に起因するといえばそれまでだが、細かくデータを見ていくと、大谷が本来のポイントで捉えられていない事実が浮かび上がってくる。

 まずは、こちら。大谷が右方向にゴロを打った割合を整理した。(4月12日試合終了時)

大谷が右方向にゴロを打った割合(12日試合終了時) 【参照:Baseball Savant】

 大谷のキャリア平均は22.0%。MLB平均は20.6%。今年は43.9%で、過去と比べても突出。もちろん、サンプルが少ないがゆえ極端な数字にもなるのだが、逆方向への打球も減っていて、17.1%はキャリア最低。逆にフライも含めた右方向への打球は61.0%で過去最多となっている。

 その要因――例えば、変化球が増え、ベースの前で打たされるケースが増えた、という仮説が立てられる。

 ただ、開幕から16試合の傾向を調べてみると、変化球の割合は45.63%。過去4シーズン(2021~24)は48.4%なので、むしろ少ない。実際、右方向へのゴロは、投手を左右に分けて調べたが、トータルでは真っ直ぐ系の方が多かった。変化球を打たされているわけではない。

大谷の右方向ゴロの本数(12日試合終了時) 【参照:Baseball Savant】

 こういう結果が出ている以上、ある程度は予想がつくが、大谷がどこでボールを捉えているかも確認してみた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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