マクラーレン・ホンダの二の舞? アストンマーティンは低迷から脱出できるのか

柴田久仁夫

マクラーレン・ホンダの二の舞になる?

鈴鹿に姿を見せたサフナウア元代表。F1キャリアはホンダから始まった 【(c)柴田久仁夫】

 去年のシーズン終盤には、マシン開発の指揮を執るダン・ファロウズが解任された。鬼才エイドリアン・ニューウィの右腕としてレッドブルで活躍した空力スペシャリストだが、就任からわずか2年後に成績不振の責任を取らされた。

 さらに今年初めには、チーム代表のマイク・クラックがトラックサイドオフィサーに配置換えされた。チームのトップがレース現場の責任者になるなど、F1ではほとんど聞いたことがない。極めて異例な降格人事といえる。これまた成績不振が理由だが、こちらも就任わずか2年だった。

 さかのぼればアストンマーティン発足時にグループCEOに就任し、スタッフ拡充や新社屋の建設など、チームの基盤整備に貢献したマーチン・ウィットマーシュも、昨年7月にチームを去った。この時期、アストンマーティンはニューウィのレッドブルからの引き抜きに成功しつつあったが、唯一の障壁がウィットマーシュだったといわれる。

 二人は2000年代初め、マクラーレンで一緒だったが、2005年にニューウィは追われるようにチームを去り、レッドブルに移籍した。ウィットマーシュとの確執があったと言われる。ニューウィ獲得のために、再び顔を合わせたくない相手であろうウィットマーシュを切ったということなのだろう。

 度重なる上級スタッフの更迭や離脱。今もチーム内に太いパイプを持つサフナウアは、「他にも嫌になって出て行ったエンジニアは何人もいる。チームの雰囲気は、お世辞にもよくないね」と、日本GPの際に話していた。

それでも来季は飛躍できる?

現チーム代表のアンディ・コーウェルは、ホンダのライバルだったメルセデスパワーユニット部門を率いた凄腕エンジニアだ 【(c)️柴田久仁夫】

 奇しくもホンダと組んだ2015年前後のマクラーレンも、今のアストンマーティンと似たような状況だった。こちらも資金力も技術力のあるチームだったが、ウィットマーシュを追い出す形でトップに返り咲いたロン・デニスがすっかりおかしくしてしまい、どん底の数年を送る(この時のドライバーも、アロンソだった)。そしてその後の復活までに、長い歳月を費やした。

 ホンダは来年2026年から、アストンマーティンと組む。新しいパワーユニットの開発はそれなりに順調で、すでに始まっている車体技術者との協力関係もうまく行っていると聞く。問題はその上のレベルであろう。

 ローレンス・ストロールが君臨する今のアストンマーティンは、エンジニアもマネージメントも腰を据えてじっくり仕事をする環境には見えない。ニューウィですら、結果がすぐに出なければ更迭されてしまうかもしれない。

 サフナウアは今のアストンマーティンを、NBAのシカゴ・ブルズになぞらえていた。マイケル・ジョーダンが所属した1990年代に黄金時代を築いたチームだが、それ以降30年近く優勝できていない。それはまさに、トップがダメだからというのだ。

 技術部門の層は厚く、来季はニューウィデザインの新コンセプトマシンが誕生する。ニューウィとホンダの仕事ぶりを高く評価するマックス・フェルスタッペンの移籍も、ここに来て現実味を帯びてきた。もしそれが実現すれば、普通なら成功は約束されたに等しい。しかしF1に限らずスポーツの世界では、計算通りにうまくいくことは滅多にない。

(了)

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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