マクラーレン・ホンダの二の舞? アストンマーティンは低迷から脱出できるのか

柴田久仁夫

日本GPもポイントに届かず。グリッドに向かうアロンソは、すでに険しい表情だった 【(c)柴田久仁夫】

アロンソ0ポイントの衝撃

 アストンマーティンF1の不振が止まらない。

 先週末の今季第4戦バーレーンGPは、フェルナンド・アロンソが15位、ランス・ストロールは17位だった。それ以前の3戦も、ストロールの2回の入賞以外は、リタイアか入賞圏外の完走に終わっている。

 何より深刻なのが予選での遅さと、王者アロンソの低迷だ。ここまでの4戦で、二人は一度も予選トップ10内に入れず、アロンソは今季いまだにノーポイント。ドライバーズ選手権17位に沈んでいる。

 バーレーンのレース後、アロンソは「とにかく遅すぎる。初日からずっとそうだった。一発もロングランも、ペースに欠ける」と吐き捨てた。コンストラクターズ選手権順位こそ、今のところは7位につけている。しかし同8位のレーシングブルズ、9位のアルピーヌよりマシン戦闘力に劣るのは明らかで、実態は全10チーム中9、10番手というところだろう。

 ほんの2年前、2023年のアストンマーティンは、アロンソが開幕8戦中6回も表彰台に上る強さを見せていた。それが今は、なぜここまで低迷してしまったのか。

次々に更迭される上級スタッフ

バーレーンGP決勝レースのアロンソ車。空力効率の悪さがAMR25の最大の欠点とのことだ 【(c)AstonMartin】

 アストンマーティンF1は、中堅F1チームだったレーシングポイント(旧フォースインディア)を、ストロールの父親で大富豪のローレンスが居抜きで買収して誕生した。かつてこのチームは、限られた年間予算を効率よく運用し、メルセデスやフェラーリなどのトップチームを時にしのぐ速さを見せる存在だった。

 そこにローレンス・ストロールが潤沢な予算を注ぎ込み、有力エンジニアを次々にライバルチームから引き抜き、スタッフも大幅に増員。最新鋭の風洞を含む、総工費300億円以上といわれる新社屋も建設したのだから、さらなる飛躍は間違いないはずだった。実際、2年前の活躍は、その期待に十分応えるものだった。

 ところがこの年の中盤以降、勢いは失速。翌2024年も不調に歯止めは効かず、アロンソの腕を持ってしても5位入賞が精いっぱい。そして今季は、さらに不振を極めている。資金も技術力もあるはずなのに、なぜ低空飛行から脱出できないのか。

 最大の理由は、オーナーであるローレンスの「忍耐力の欠如」であろう。自分の方針に従わない、あるいはすぐに結果を出せないスタッフを次々に切る。本人は表に出ないが、指令を出しているのがオーナーのローレンスなのは間違いない。退職者リストはかなり長い。その筆頭に来るのが、チーム代表だったオットマー・サフナウアだ。

 最下位をうろうろしていたフォースインディア時代のチームを、選手権4位を獲得するまでに飛躍させ、スタッフからも全幅の信頼を置かれていたサフナウアだったが、アストンマーティン移行の翌年、代表の座を辞した。「指揮権を奪われたから」と、のちに語っている。

1/2ページ

著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント