モドリッチを激昂させた一言と急浮上したトレード話の現実味 多くの話題を提供する久保にまつわる噂の真相
スペイン国王杯準決勝で起こった“事件”
まずは、スペイン国王杯で起こった“事件”だ。4月1日(現地時間、以下同)に敵地サンティアゴ・ベルナベウで行われたレアル・マドリーとの準決勝第2レグ。延長後半の立ち上がりに、R・マドリーの39歳の大ベテラン、ルカ・モドリッチが、延長の前半でベンチに退いていた久保の首根っこを押さえつけた衝撃的なシーンの映像は、一気に拡散され、世界中を驚かせた。
第1レグを0-1で落としていたソシエダは、この試合で素晴らしいパフォーマンスを披露。トータルスコア4-4に持ち込んで延長戦に突入したが、迎えた115分に痛恨の失点を喫し、惜しくもファイナル進出を逃している。
R・マドリーにしてみれば、よもやここまでソシエダに粘られるとは思っていなかったのだろう。ホームで4ゴールを叩き込まれる屈辱に、多くの選手が苛立っていた。そうしたなか、延長後半が始まってすぐにサイドからの突破を図ったヴィニシウス・ジュニオールが、ソシエダのMFホン・アンデル・オラサガスティに手酷いタックルを浴び、もんどりうってピッチに倒れる。
いかにも露骨なファウルだった。しかし、レフェリーが提示したのはレッドカードではなくイエローカード。これにキャプテンとして激しく抗議したのがモドリッチだったのだが、そんな彼に向けて久保が放った一言がその怒りを増幅させ、首根っこをつかむという暴挙を招いたのだ。
一番の疑問は、ここでモドリッチにイエローカードすら出されなかったことだ。それに対する非難の声も一部で巻き起こったが、一方で「普段は冷静なモドリッチをあんな行為に駆り立たせるなんて、よっぽどのことを言ったに違いない」という憶測も、ネットを中心に広がった。
39歳のモドリッチに「みっともないな」と
「みっともない真似すんなよ。同じように(エドゥアルド・)カマビンガにだってレッドが出なかっただろう。これもそう(レッド)じゃないよ」
前半終了間際の90+2分に、自らが受けた暴力的なタックルを挙げて、そう主張したのだ。ここで久保が使った「みっともない(patetico)」という言葉は、スペインでは非常にポピュラーな口語で、「恥ずかしいな」「ダサいな」「いい加減にしろ」といった意味合いを持つ。ちなみにこの映像は、すでに12万回以上再生されている。
ピッチ上で年齢は関係ないし、現代のスペイン語ではビジネスシーンを除いてほとんど丁寧語は使われない。とはいえ、23歳の久保が39歳のモドリッチに向かってこれだけのことを言ってのけたのは(それもわざわざベンチから飛び出して)、やはり10歳という若さでバルセロナに渡り、幼い頃から現地の教育を受けてきたことと無関係ではないはずだ。
よくスラングだけ早々に覚えて、これ見よがしに使ったりする外国人選手もいるが、逆にそれが痛々しく映ることもある。久保のように堂々とこなれたスペイン語で文句を言える外国人は限られ、同じ日本人として実に頼もしく感じる。
それにしても、あらためて今回のモドリッチの首絞め行為に関して、スペインのメディアがほとんど触れなかったのは疑問だ。前述のTikTokは、「マドリー寄りのメディアが意図的に蓋をした」と結論付けているが、これだけ知名度のある選手の暴挙が大きく取り上げられないのだから、本当にR・マドリー側から圧力がかかったのかもしれない。