歴史に残るマスターズを制し「伝説」となったマキロイ 勝負を分けた「あの一打」を佐藤信人プロが解説

塩畑大輔

悲願のグリーンジャケットに袖を通したマキロイ 【Photo by Richard Heathcote/Getty Images】

 今年の「マスターズ」は、ロリー・マキロイの悲願のキャリアグランドスラム達成で幕を閉じた。一時は後続に4打差をつけてそのまま独走するかと思われたが、「アーメンコーナー」のワナにはまり、猛追するジャスティン・ローズに追いつかれ、プレーオフに突入。永遠に語り継がれるであろう世紀の名勝負を、佐藤信人プロはどう見たか? マキロイの心理状態も想像しながら解説してもらった。

誰もが「マキロイで決まりだろう」と思ったが…

ウイニングパットを決めて喜びを爆発させるマキロイ 【Photo by Richard Heathcote/Getty Images】

 すごい試合でした。ほとんどの試合には「これが勝負を分けたショットだった」というものがあると思うのですが、本当に最後までどちらに勝負が転ぶか分からなかった。結果として、ロリー・マキロイのキャリアグランドスラムが達成されて、感動的なラストシーンが観る者の胸を打つことになりましたが、そこに至るまでのドラマも、これまで見たことのないようなものでした。

 2打リードの単独首位で最終日を迎える難しさが、マキロイにはあったと思います。スタートの1番パー4、そしてバーディーを取りたい2番パー5と立て続けにティーショットがバンカーにつかまった。ダブルボギー、パーで、いきなり同組の(ブライソン・)デシャンボーに単独首位を譲ることになってしまった。

 どちらも「あと1ヤードで越えたのに」というような紙一重の一打ではありましたが、3日目までは気持ちよくキャリーで越えていたので、やはり最終日の出だしは心理状態もスイングも、これまでとは違ったんじゃないかと思います。

 それだけに、3番パー4で難しい下りのスライスラインを決めてバーディーを取れたのは大きかったですよね。10番までに3つバーディーを重ねてリード。難関ホールの11番でも、フェアウェー上のコブで左に跳ねてしまった第2打が、あと1ヤードというところでギリギリ池に落ちずに助かった。追うデシャンボーが池に落としたことで、観ていた誰もが「もう、マキロイで決まりだろう」と思ったはずです。

マキロイに試練を与えるマスターズの神

「アーメンコーナー」の13番、アプローチをクリークに入れ、うなだれるマキロイ 【Photo by Andrew Redington/Getty Images】

 初日が終わった時点での評論でもお話しましたが、今年のマキロイはスコッティ・シェフラーのゴルフを意識すると公言し、悲願のマスターズ初優勝のために「ボギーを打たないゴルフ」に徹していました。最終日の後半もそれがうまくいっていた。13番パー5も、大きなリードも活かして最初から2オン狙いをしない手堅い攻め方が取れていました。

 ただ、そこからがもう二転三転、というよりそれではきかないくらい、試合の流れがぐるぐると変わり続けましたよね。13番第3打のアプローチ。左から右へ下るグリーンの傾斜が強いので、ピンを狙わずグリーン左サイドに大きく外して狙う場面でしたが、右手前の小川に落としてしまった。

 打つ直前に一瞬ピンを見てしまうことで、かえって右に大きく外してしまうというのは、プロでも「あるある」ではあります。でも、あのマキロイが、この場面でやってしまう。マスターズの勝負というのは、本当に一筋縄ではいかないなと。

 14番パー4でも、パーパットがカップ右ふちで止まって、ジャスティン・ローズに単独首位を譲ることになってしまった。15番パー5では2メートルのイーグルチャンスにつけるスーパーショットを放って「やっぱりマキロイか!」と思わせたけど、パットが決まらずバーディーどまり。ここから18番まで、ずっと2~3メートルほどのパットが外れ続けた。

 17番パー4でほぼタップインのバーディーを挙げたのはさすがでしたが、ほかにどれか1つでも短いパットが決まっていたら、おそらくそこで勝負が決していたと思います…ショットをチャンスにつけて「マキロイいける」と思わせながら、惜しくも外れることで、そのたびにローズ、ルードヴィッヒ・アベルグら後続に優勝の可能性が浮上する。終盤は本当にジェットコースターのような展開になりました。

1/2ページ

著者プロフィール

1977年4月2日茨城県笠間市生まれ。2002年に新卒で日刊スポーツ新聞社に入社。サッカーの浦和レッズや日本代表、男子ゴルフ、埼玉西武ライオンズなどの担当記者を務める。2017年にLINE NEWSに移籍し、トップページの編成やオリジナルコンテンツ企画を担当。note、グノシーをへて、2024年7月からU-NEXTに所属。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント