歴史に残るマスターズを制し「伝説」となったマキロイ 勝負を分けた「あの一打」を佐藤信人プロが解説
誰もが「マキロイで決まりだろう」と思ったが…
2打リードの単独首位で最終日を迎える難しさが、マキロイにはあったと思います。スタートの1番パー4、そしてバーディーを取りたい2番パー5と立て続けにティーショットがバンカーにつかまった。ダブルボギー、パーで、いきなり同組の(ブライソン・)デシャンボーに単独首位を譲ることになってしまった。
どちらも「あと1ヤードで越えたのに」というような紙一重の一打ではありましたが、3日目までは気持ちよくキャリーで越えていたので、やはり最終日の出だしは心理状態もスイングも、これまでとは違ったんじゃないかと思います。
それだけに、3番パー4で難しい下りのスライスラインを決めてバーディーを取れたのは大きかったですよね。10番までに3つバーディーを重ねてリード。難関ホールの11番でも、フェアウェー上のコブで左に跳ねてしまった第2打が、あと1ヤードというところでギリギリ池に落ちずに助かった。追うデシャンボーが池に落としたことで、観ていた誰もが「もう、マキロイで決まりだろう」と思ったはずです。
マキロイに試練を与えるマスターズの神
ただ、そこからがもう二転三転、というよりそれではきかないくらい、試合の流れがぐるぐると変わり続けましたよね。13番第3打のアプローチ。左から右へ下るグリーンの傾斜が強いので、ピンを狙わずグリーン左サイドに大きく外して狙う場面でしたが、右手前の小川に落としてしまった。
打つ直前に一瞬ピンを見てしまうことで、かえって右に大きく外してしまうというのは、プロでも「あるある」ではあります。でも、あのマキロイが、この場面でやってしまう。マスターズの勝負というのは、本当に一筋縄ではいかないなと。
14番パー4でも、パーパットがカップ右ふちで止まって、ジャスティン・ローズに単独首位を譲ることになってしまった。15番パー5では2メートルのイーグルチャンスにつけるスーパーショットを放って「やっぱりマキロイか!」と思わせたけど、パットが決まらずバーディーどまり。ここから18番まで、ずっと2~3メートルほどのパットが外れ続けた。
17番パー4でほぼタップインのバーディーを挙げたのはさすがでしたが、ほかにどれか1つでも短いパットが決まっていたら、おそらくそこで勝負が決していたと思います…ショットをチャンスにつけて「マキロイいける」と思わせながら、惜しくも外れることで、そのたびにローズ、ルードヴィッヒ・アベルグら後続に優勝の可能性が浮上する。終盤は本当にジェットコースターのような展開になりました。