100年前のクラブでプレーする“ヒッコリーゴルフ” ゴルフ本来の自由と開放感、魅力に迫る
ヒッコリーゴルフが教えてくれる、ゴルフの奥深さと味わい
しかし、ヒッコリーシャフト特有の“打感”には、なんとも言えない魅力がある。かつてスチールシャフトのパーシモンヘッドでプレーした経験がある人なら、芯を外したときの手に伝わる“ビリッ”とした感覚を覚えている人も多いだろう。高性能クラブでは失われつつある、そんな繊細なフィードバックがここにはある。そして、芯をとらえたときの気持ちよさは格別だ。「そうそう、これがゴルフの爽快感だった」と、忘れていた感覚がよみがえる。
プロゴルファーも魅了される、ヒッコリーの世界
大会を制したのは69歳の倉本昌弘プロ。2日目に「68」のエージシュートを達成し、見事な逆転優勝を果たした。倉本プロは「ヒッコリーの魅力は一言では語り尽くせないほど深い。出場されたアマチュアの皆さんも本当に楽しんでおられました。我々プロにとっても、1年のご褒美のような大会です」と語った。
スポーツから感性が消えていく? 過剰なデータ重視の弊害
この状況に警鐘を鳴らすのが、元メジャーリーガーのイチロー氏だ。昨年の12月に放送された『情熱大陸 イチロー 2夜連続スペシャル』(MBS/TBS系)でのイチロー氏の発言が大きな反響を呼んだ。現代のメジャーリーグについて「退屈な野球」と語り、過度なデータ重視によって選手の個性や感性が失われていることに危機感を示した。「目で見えるデータばかりが重視され、感性が育たなくなっている。昔は個性が際立っていたのに、今は皆が同じようなプレーをしている」と指摘し、データだけに縛られず、自らの感覚を頼りにプレーすることの重要性を強調している。イチロー氏が語る懸念は、アマチュアスポーツにも通じるものがある。
その一方で、クラブを自在に扱う感覚や、自らの技術で戦略的にコースを攻略する醍醐味が、以前よりも希薄になってきているのではないだろうか。ヒッコリーゴルフは、あえて曲がりやすい100年以上も前のクラブや当時のレプリカクラブを使用し、ボールのコントロールに繊細なテクニックが求められる。飛距離を追求するのではなく、感覚を研ぎ澄ませ、スイングの精度を高めることで、プレーヤー本来の腕前が試される。数値やデータに左右されず、シンプルに「ゴルフそのもの」を楽しむ。この自由なスタイルこそが、ヒッコリーゴルフの最大の魅力だ。