浦和の耐えて粘った今季3勝目 J1首位・町田を倒した「4つの勝因」から見えるもの
もっとも今季の序盤戦に限れば浦和はチャレンジャーだ。4月13日の対戦を前にした浦和は2勝4分け3敗の12位で、町田は5勝2分け2敗の首位。さらに今季の浦和はアウェイ6試合で「勝ちなし」だった。
しかし浦和はアウェイ国立競技場で、2-0と勝利した。15分にはコーナーキックからのトリックプレーでマリウス・ホイブラーテンが先制ゴールを決め、38分には速攻から追加点。後半も押し込まれつつ無失点で耐えた。苦しんでいたチームが「何か」をつかんだ気配のある90分だった。
松尾のFW起用が生んだ効果
ただ間違いなく松尾の1トップ起用はハマり、彼自身もゴールを挙げて勝ち点3の立役者となった。試合後にマチェイ・スコルジャ監督はこう述べている。
「立ち上がりから選手たちはハードワークをしながら、戦術的な規律を守ってくれました。今日のストライカーは(松尾)佑介でしたが、彼は素晴らしいランナーであり、スキルも持っています。彼へのボールを増やした試合でした」
松尾はこう説明する。
「僕自身がボールを受けることもそうですけど、深さを作って、さらに(他のアタッカーに手前の)スペースを提供することも意識して試合に臨みました。相手を引き出してその裏を狙うプレーは後半も普通にできていたので、試合運びとして良かったと思います」
浦和が「裏に走る」「スペースに蹴る」選択を増やせば、ボールを握る時間自体はどうしても減る。町田戦のボール保持率は47%で、実際にボールをやや持たれる展開だった。
しかし浦和は松尾を先頭とする「走れるアタッカー」が攻撃だけでなく、相手ボール時の守備でも大きく貢献。彼らがパスコースを限定しつつ、ボランチやDF陣と連携して町田が狙いをよく封じた。前線守備は町田を零封した大きなポイントだった。
相馬勇紀を封じた右サイドの守備
スコルジャ監督はこう振り返る。
「相手の得意な相馬へのダイアゴナル(=斜めに入る)ボールを、ヒロ(石原広教)と(金子)拓郎でうまく抑えることができました。セカンドボールの回収も町田戦では重要でしたが、チームとしてそれがよくできました」
浦和は右サイドバック石原広教、右ウイング金子拓郎が「ダブルチーム」で相馬に対応。ボランチ安居海渡らも含めたユニットで人を掛け、自由を与えなかった。
もっとも右サイドの守備に人をかければ、左サイドは手薄になる。そこを崩されなかった理由は町田のクオリティ不足も一因だが、浦和の選手たちが運動量でカバーしていた部分は大きい。選手の総走行距離は町田の「118.3キロ」に対して、浦和は「122.1キロ」となっている。浦和が耐えて粘って走り勝った90分だった。
セカンドボールの争奪もカギに
スコルジャ監督はこう説明する。
「データを見るのはこれからですけど攻撃、守備の両方におけるスプリントの本数は今までより多いのではないかと思います。またセットアップ(=事前の設定)や構造のところも大事でした。町田はセカンドボールを拾うためにウイングバックが(内側に)絞りますが、それに対応するために(左サイドの)サヴィオと(右サイドの金子)拓郎も絞りながらプレーしました」
GK西川周作はこう振り返る。
「しっかりとつなぐ戦いと、ロングボールを使ってセカンドを拾っていく戦いを、時間帯ごとにはっきりできた試合になりました。DFラインもそうですし、ボランチ、FWの距離感を今日はかなり意識していました。自分を超えたあとのプレスバックも、みんなで話し合っていた部分です。これを継続できるのかが大事だと思っています」
金子もこう口にする。
「ロングボールに対してはウイングもそうですし、ボランチがしっかりとセカンドボールに行くところを言われていました。後半に少し我慢の展開になってしまったのは仕方ないと思いますが、前半はできていました」
縦と横をコンパクトにする、頭上を越されたら戻って挟むことにより、セカンドボール確保の確率は上がる。町田もセカンドボールの確保を強みとするチームだが、浦和は相手の強みで五分以上に試合を運んだ。さらに内側へ絞るだけでなく、たゆまぬ左右のスライド、前後の往復で穴を空けなかった。