失意の開幕戦から半年でドイツ屈指のボランチに 佐野海舟の躍進の陰にある相棒の存在とトレーニングの成果
中盤のマシーンと称されるまでに
開幕戦となった2024年8月24日(現地時間、以下同)のウニオン・ベルリン戦後、佐野海舟の表情は曇っていた。新天地となったマインツでのリーグデビュー戦がほろ苦い形に終わり、「今まで感じたことのないプレッシャーや相手の強度をすごく感じた。これにいち早く慣れないといけない」と唇をかむ姿が印象的だった。
実際に試合内容を振り返っても、対戦相手の強度に苦しみ、自身の武器であるボール奪取力をなかなか発揮することができない。失点シーンでも巧みにかわされ、シュートブロックすらさせてもらえなかった。合流が遅れたこともあり、チームにフィットするまでには時間がかかるかもしれないと思ったことをよく覚えている。
ただ、いい意味で佐野は予想を裏切るパフォーマンスを見せていく。第3節のブレーメン戦こそ途中交代となったが、それ以降は全ての試合にフル出場。指揮を執るボー・ヘンリクセン監督が根気強く起用し続けたことで、みるみるチームに溶け込んでいった。
パーフェクトなボランチコンビの誕生
このアミリの存在が佐野の成長を促進させた。シーズン序盤、ヘンリクセン監督が佐野とアミリを呼んでミーティングを行った。そこで指揮官は、「君たち2人が協力しあうことは我々にとってものすごく大事なことだ。もう少し話し合って、コミュニケーションをとってほしい」と伝えたという。これによって両者のコミュニケーションが増え、中盤のバランスが徐々に良化。攻撃面で秀でた力を持つアミリと組むことで佐野自身の基準も上がっていった。
先日、アミリがドイツ代表に入ったことが刺激になるかと聞くと、佐野は「なります。なります」と食い気味に答え、パートナーに対する思いを明かしている。
「本当に素晴らしい選手ですし、彼のように難しいところで勝負強さを出せる選手が上に行けるんだと思う。いい見本が隣にいるのでしっかり見習いたい。もちろん、見習いながらもナディエムがいいプレーをできるようにということを考えて、自分がバランスがとっていけたらいいなと。信頼関係はめちゃくちゃ強いですし、常にお互いに見合って、お互いのために走るということがやれていると思います」