関東×関西「高校スポーツ最強地区はどっちだ!?」

明確な“色”を持つ前橋育英、昌平、市船、流経大柏 U-18プレミアリーグEASTに挑む関東の高体連4校の可能性

土屋雅史

昨年度の選手権で7年ぶりの日本一に輝いた前橋育英。“魅せるドリブラー”白井をはじめタレントは豊富で、初のプレミアEAST制覇も十分に狙える 【写真は共同】

 4月5日に開幕した2025年シーズンの高円宮杯U-18プレミアリーグEAST。この高校年代最高峰のステージに挑む関東の高体連4チーム、前橋育英、昌平、市立船橋、流通経済大柏は、クラブユース勢や一昨季の王者・青森山田といった強力なライバルを押しのけて、覇権をつかめるのか。ここではその可能性を探るとともに、一方で関西の高体連勢が、プレミアリーグWESTに2年連続で1チームも参戦できずにいる現状にも触れる。

“6年計画”で育てる昌平のサイクル

「やっぱり“色”があるんですよ。市船も昌平も前育も、それこそ我々にもオリジナルの色がある。自分たちらしさという色がはっきりしているチームが、プレミアに残っていけるんじゃないですかね」

 2025年シーズンの高円宮杯U-18プレミアリーグEASTに所属している関東地区の高体連4チームの印象を尋ねると、流通経済大柏(千葉)の榎本雅大監督はこう言い切った。前橋育英(群馬)、昌平(埼玉)、市立船橋(千葉)、そして流経大柏。確かに彼らはチーム名を聞いただけでイメージできるような、“自分たちらしさという色”をはっきりと持ち合わせている。

 昨年度の高校サッカー選手権で7年ぶりの日本一に輝いた前橋育英は、就任44年目を迎える名将・山田耕介監督のもと、Jクラブユース顔負けのポゼッションサッカーを展開。これまでにプロ選手を100人以上も輩出するなど、とにかく育成に定評がある。

 今年のチームにも、前橋育英において特別な番号である「14番」とキャプテンを任されているMF竹ノ谷優駕(3年)、攻守に効果的な働きを見せるボランチの柴野快仁(3年)、現代型右サイドバックの瀧口眞大(3年)、選手権で一躍脚光を浴びたドリブラーの白井誠也(3年)というU-17日本高校選抜メンバーの4人をはじめ、昨季から主力を務めてきた有望株が数多く残る。プレミアEAST制覇も十分に狙える陣容と言っていい。

 昨夏のインターハイで初の全国優勝を達成した昌平は、玉田圭司・前監督の退任を受け、市立長野を率いていた芦田徹監督が新指揮官に就任。入学時から注目を集めてきた山口豪太、長璃喜という2人の3年生MFを筆頭に、前線の強烈な個で勝負するアタッキングサッカーを志向する。

 彼らの強みは下部組織に当たるFC LAVIDAの存在だ。中学年代から充実したスタッフのもとで基本的なスキルを叩き込まれた選手の大半は、昌平に進学してチームの中核を担っていく。山口と長も“6年計画”の中で着実な成長を遂げてきただけに、この好サイクルは見逃せないポイントだろう。

流経大柏の合言葉は「全冠制覇」

高体連のチームがプレミアで生き残るために必要なのは、“自分たちらしさの色”だと説く流経大柏の榎本監督。今年の流経も伝統の圧倒的な運動量は健在だ 【写真は共同】

 初昇格の14年からプレミアに在籍し続けている市立船橋にとって、昨季は試練の1年となった。リーグ前半戦はまさかの白星なし。だが、「戦うこと、切り替えること、走ることという市船のベース」(波多秀吾監督)に立ち返った後半戦は、7勝3分け1敗と驚異的なハイペースで勝ち点を積み重ね、奇跡的な残留を手繰り寄せた。

 チームの礎を築いた布啓一郎・元監督の時代から脈々と受け継がれているのは、粘り強い堅守を貫き、速攻とセットプレーから確実に得点を重ねるストロングスタイル。「『高体連勢には絶対に負けない』という想いは自分たちの中にありますね」と口にしたキャプテンのMF森露羽安(3年)や、U-17日本代表のDF篠崎健人(2年)といった主軸を中心に、復権を期すシーズンへと向かう。

 亀田歩夢(カターレ富山)や松本果成(湘南ベルマーレ)ら豊富なタレントを有し、昨季の高体連勢の中では最強の呼び声も高かった流経大柏は、選手権でもチームとしてのまとまりを感じさせるハイレベルなサッカーを披露。日本一へあと一歩まで迫ったが、最後は前橋育英にPK戦の末に敗れ、17年ぶりの戴冠には届かなかった。

 本田裕一郎・前監督から20年に指揮を引き継いだ榎本監督は、伝統の圧倒的な運動量と走力を生かしたハイプレスはそのままに、攻撃面をブラッシュアップ。今季もスピードスターのMF安藤晃希(3年)や長身ストライカーの大藤颯太(3年)、アンカーの島谷義進(3年)と好素材がひしめき、全カテゴリーが参戦するコンペティションでの「全冠達成」を合言葉に、プレミア制覇を真剣に目指している。

 前述した“自分たちらしさの色”は、リクルーティングでも絶大な効果を発揮する。上記4校の選手たちに入学理由を尋ねると、「〇〇のやっているサッカーに憧れて」「自分は〇〇のサッカーに合うと思って」といったフレーズをよく耳にする。やはり高校名だけで想像がつくような、明確なサッカースタイルを持つアドバンテージは計り知れない。

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著者プロフィール

1979年8月18日生まれ、群馬県出身。高崎高3年時にインターハイでベスト8に入り、大会優秀選手に選出される。2003年に株式会社ジェイ・スポーツへ入社。サッカー情報番組『Foot!』やJリーグ中継のディレクター、プロデューサーを務めた。21年にジェイ・スポーツを退社し、フリーに。現在もJリーグや高校サッカーを中心に、精力的に取材活動を続けている。近著に『高校サッカー 新時代を戦う監督たち』(東洋館出版社)がある。

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