書籍『ジャイアンツ元スカウト部長の回顧録』

元Gスカウトが語る山口俊獲得の舞台裏 不安も多かった清宮の1位指名

長谷川国利

不安も多かった清宮幸太郎

 査定担当をしていた2016年と2017年のドラフト会議にはもちろん関わっていませんが、下級生の頃から目立っていた選手は当然実際に見ていました。現場のスカウトと色々話すこともあって、候補選手はある程度把握していました。2016年はやはり創価大の田中正義(ソフトバンク1位/現・日本ハム)が圧倒的だったと思います。大学生のピッチャーで言えば上原浩治以来の存在という印象でした。体が大きい割に体全体の使い方がとても上手。バランス良く投げることができて、凄いボールを放っていました。巨人は1位で指名して抽選を外していますが、私がスカウトに残っていても絶対に田中を1位で推していました。

 同年に育成5位で指名した明星大の松原聖弥(現・西武)も印象に残っている選手です。岡崎さんがまだスカウト部長になる前、山下さんの後任になることが決まっていたこともあって、松原が4年生の時に一緒に試合を見ていたことがありました。その時に松原のことを候補として伝えていて、実際にきれいにレフト前ヒットを打ちました。岡崎さんから「細いけど、確かにバッティングは悪くないね。足はどうなの?」と聞かれたので、「足は速いんですけどちょっとおっちょこちょいでチョンボが多いです」と話していたら、目の前で牽制で刺されたのです。あまりのタイミングの良さに2人で笑ってしまったことを覚えています(笑)。それでも育成から上がって、2021年はレギュラーとして活躍もしてくれました。

 2017年は早稲田実の清宮幸太郎を巨人も含む7球団が指名しています。1年生の時に甲子園でホームランも打ちましたし、いくら金属バットと言ってもあれだけ量産できるというのは並のバッターではありません。ただイメージとしては少し筒香の高校時代と重なり、高いレベルのピッチャー相手に木製バットで打てるかなという不安はありました。守備についても動きも良くないし肩も強くないため、プロではファーストしかできないという印象でした。バッティングだけでファーストで外国人選手と喧嘩ができるか? と考えるとちょっと疑問は残りました。岡本和真と違ったのはその点ですね。そうなるとどうしてもセ・リーグの球団は指名しづらい。自分がスカウトの立場で残っていたら、ファーストしかできなくても獲る価値があるのかというのは相当悩んだと思います。

 清宮を抽選で外した巨人は、外れ1位でも九州学院の村上宗隆(ヤクルト)を3球団競合の末に外しました。村上のことは入学してすぐに4番を打って評判だということで、1年生の時からチェックしていました。その頃からスイングの軌道が良くて、リストワークも凄く良く、1年生で騒がれるだけのものはありました。ただ清宮と同じで当時のポジションはファーストでしたから、将来のことを考えるとサードを守れるようになれると良いな、と思ったことを覚えています。

 村上の評価ももちろん高かったのですが、「全国区のスター選手」ということで、やはり1位は清宮にしようという話になったのではないかと思います。もし村上が巨人に入っていても、あんなにすぐ活躍できたかは分からないですね。どうしても巨人だと我慢して使うということが難しいですから。本人にとってはヤクルトで正解でしたね。

書籍紹介

【画像提供:カンゼン】

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