書籍『ジャイアンツ元スカウト部長の回顧録』

プロ入り後の成長に“後悔” 元G敏腕スカウトが見抜けなかった近藤健介の将来性

長谷川国利

【写真は共同】

 横浜の敏腕スカウトはなぜ巨人へ移籍したのか?今明かされる長野久義、菅野智之獲得の舞台裏。30年にわたるスカウト人生の一部を綴った『ジャイアンツ元スカウト部長のドラフト回想録』(長谷川国利著)から2011年のドラフトに関するエピソードを抜粋してお届けします。

プロで明暗分かれた野村と藤岡

 この年は菅野以外では東洋大の藤岡貴裕(ロッテ1位)と明治大の野村祐輔(広島1位)が評判のピッチャーでした。特に藤岡の人気が高くて最終的に3球団の競合になっています。左ピッチャーでも左右のコントロールがしっかりしていて、コーナーにしっかり投げ切れますし、ボールの力もスタミナもありましたから人気になるのもよく分かりました。ただプロでは思うような成績を残すことはできませんでした。大学時代に比べるとストレートが走っていないように見えて、上手くスタイルを変えられなかったのが原因かもしれません。東洋大出身のピッチャーではソフトバンクに入った大場も苦しみましたし、大学時代の投球をプロでも同じようにやるというのは簡単ではないのだと改めて思い知りました。

 野村もシュートとスライダーの両方のコントロールが良くて、テンポ良くポンポンと抑えることができるピッチャーでした。バッターに打ち気がない時には簡単に真っすぐでカウントもとれるクレバーさがある一方で負けん気もなかなか強い。実にピッチャーらしいピッチャーでした。これは1年目から一軍で勝てるだろうという印象でしたし、野村は実際新人王も獲ってその後も先発で活躍しました。広島スカウトの苑田さんは野村を高く評価していて何度も何度も見ていましたから、単独で指名できた時は嬉しかったでしょうね。

 大学生の野手では中京学院大の菊池涼介を広島が2位で指名しています。巨人担当スカウトの評価はあまり高くありませんでしたが、「高く評価している球団もあるみたいだから」ということで、部長の山下さんも見に行っていました。巨人では、自分はそこまで評価していなくても他球団が評価しているという話を聞くと「とりあえず部長にも見てもらおう」ということがよくありました。私も実際にリーグ戦を見に長良川球場まで行きました。守備はもちろん動きが良く、打つ方でも体が小さいわりに振る力があって遠くに飛ばせる。高く評価する球団があっても不思議ではないなという印象でした。広島としては2位という順位で獲って大成功でしたね。

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