書籍『ジャイアンツ元スカウト部長の回顧録』

鳥谷敬、青木宣親の巨人入りはあり得たのか? 元G敏腕スカウトが振り返る2003年ドラフト

長谷川国利

見抜けなかった青木のポテンシャル

 鳥谷の早稲田大のチームメイト、青木宣親はヤクルトが4巡目で指名して大成功した選手です。巨人の担当スカウトは同大出身でもある〝青い稲妻〟松本匡史さん。足も速いしミート力もあるとリストアップもされていました。ただそこまで高く評価している感じでもなく、私自身もまさか日米通算2730安打も打つ選手になるとは全く想像できていませんでした。後に同じ早稲田大から巨人に入った重信慎之介のような足の速さを売りにするタイプの選手になるイメージを持っていましたから。

 近畿大からピッチャーとして日本ハムに自由枠で入団した糸井嘉男も後に野手に転向して大活躍しました。糸井は宮津高(京都)時代からピッチャーとして横浜のリストに入っていた選手で、大阪のどこかの球場まで実際に見にも行きました。馬力はありそうなものの、とにかく投げ方、フォームが硬いという印象でした。私が少しパニック障害みたいな症状で目眩がして、ふらふらになりながら試合を見たこともあり、よく覚えています(笑)。大学に入ってからもスピードは出るようになりましたが、高校時代から一貫して柔らかさがないなという印象は変わりませんでした。プロに入って野手に転向したばかりの頃、日本ハムのスカウトをされていた今成泰章さんが「長谷川、糸井はバッティングマシンのフリーバッティングだけを見たらメジャー級だぞ」と言っていました。まさかあそこまでの選手になるとは誰も予想していなかったでしょうね。

 関東の高校生では横浜高の成瀬善久がロッテに6巡目で指名されています。部長の小倉清一郎さんからは「栃木の中学からいい左ピッチャーが入ってきたよ」ということは早くから聞いていましたが、正直、ボールの力は感じませんでした。阪急で活躍した星野伸之とちょっとフォームが重なってボールが見えづらいかなとは思ったものの、そこまで評価できませんでした。6巡目という評価は妥当で、ロッテでよく頑張ったと思います。

 球団は変わってもスカウトとしてやることは変わらないと思っていましたから、巨人だからといって特別に苦労したということはありませんでした。原監督としては高校、大学の直属の後輩である私がスカウトにいることで、ドラフトやスカウトに関して言いたいことも言いやすいでしょうし色々とやり易いというのもあったはずです。平岡の時のように、担当地区外の選手獲得を突然振られるようなことはこの後もありました。それだけ自分には頼みやすかったのでしょうね。他のスカウトはそんな仕事はなかったと思いますが(笑)。

書籍紹介

【画像提供:カンゼン 】

「いいか国利、これが大人のケンカだぞ」(原辰徳監督)

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