週刊ドラフトレポート2025(毎週金曜日更新)

大谷、朗希に次ぐ大台なるか?健大高崎・石垣の速球は「ドラ1」級/選抜V左腕エースは屈指の総合力と完成度に

西尾典文

センバツでも持ち味を発揮した健大高崎・石垣元気(左)と横浜・奥村頼人 【撮影:西尾典文】

 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 今回紹介するのは、3月30日に幕を閉じた選抜高校野球で持ち味を発揮した石垣元気(健大高崎・投手)と奥村頼人(横浜・投手)の2人。その魅力に迫ります。

スピードは歴代の高校生投手でも屈指、夏は万全での登板に期待

健大高崎のエースである石垣は伸びのある速球を安定して投げられる 【撮影:西尾典文】

石垣元気(健大高崎 3年 投手 178cm/78kg 右投/両打)

【将来像】今井達也(西武)

フォームは少し違うが、肘から先の強さと球威で圧倒するスタイルは近い
【指名オススメ球団】ヤクルト
太い先発の柱となれる高校生投手の獲得が必要なチーム事情から
【現時点のドラフト評価】★★★★☆
1位指名の可能性あり

 今年の高校生投手で目玉と見られているのが、健大高崎のエースである石垣だ。全国から力のある選手が入学してくる健大高崎で、1年春から投手陣の一角に定着。昨年春の選抜高校野球では背番号10だったものの、全5試合に登板してチームの初優勝にも大きく貢献した。同学年でエースだった佐藤龍月が昨年夏の群馬大会後にトミー・ジョン手術を受けて長期離脱となった後は背番号1を背負い、秋の関東大会では球場表示で158キロもマークして話題となっている。会場となった等々力球場のスピードガンはかなり速く表示されることも多いため、本人もこの数字は誤計測だと話しているが、それでも投げる度に150キロ以上をコンスタントに記録する出力の高さは圧倒的だ。

 今年の選抜高校野球では、大会直前の練習試合でわき腹を痛めた影響で、初戦の明徳義塾戦では登板を回避。しかし続く敦賀気比戦では1点リードの9回裏ツーアウト一塁から登板し、全て150キロ以上のストレートを5球続けて試合を締めている。さらに準々決勝の花巻東戦では、選抜大会史上最速となる155キロをマーク。準決勝の横浜戦では4回2/3を投げて3失点と悔しい投球でチームも敗れたが、この試合でも度々150キロを超えるスピードボールを投げ込み、改めてそのポテンシャルの高さを証明した。

 ストレートの速さにとにかく注目が集まる石垣だが、ただ速いだけでなく、無理のないフォームで投げられるのは得難い長所。身長、体重を見ても投手としては決して大柄ではない。体が大きくない投手が速いボールを投げようとすると、どうしても反動をつける動きが大きくなることが多い。しかし石垣についてはそういった無理がなく、軽く投げているように見えても150キロ近いスピードが出る。特に目立つのが背筋や体幹の強さで、腕を振っているというよりも体全体を使って手先とボールを加速させているように見える。逆に下半身についてはまだ粘りが乏しいように見え、投球リズムが単調になりがちなのは課題。150キロのストレートでも合わせられるケースが目立つのはそういった要因からではないだろうか。

 ただ選抜ではストレート以外にも成長が見られたことは確かだ。敗れた準決勝の横浜戦、5回に3失点を喫した後にはカットボールなどの変化球を上手く使って、相手打線に的を絞らせないような投球も見せている。コントロールに関しても昨年と比べて安定してきており、ストライクをとるのに苦労するようなこともなかった。

 左わき腹を痛めていた状態でこれだけの投球ができたことは、プロのスカウト陣にも大きなアピールとなったことは間違いない。体が万全の状態に戻ればストレートも変化球もまだ威力を増す可能性は高く、大谷翔平、佐々木朗希以来となる高校生での160キロ到達も夢ではないはずだ。まずはしっかり故障を治して、夏にはさらに進化した投球で驚かせてくれることを期待したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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