SNSで拡散したアンソニー・バンダのポケモン本社訪問 ドジャース御一行「聖地巡礼」の舞台裏に密着!

丹羽政善

念願のポケモン本社訪問の夢がかなったアンソニー・バンダ 【筆者撮影】

聖地訪問がなぜ実現したか?

 今回の来日で、アンソニー・バンダ(ドジャース)は、ポケモン本社だけでなく、ポケモンカフェ、ポケモンセンターを訪れた。いかつい容貌とのギャップも相まってか、ドジャースがインスタグラムなどSNSでそれを紹介すると、瞬く間に拡散した。
 
 では、いかにしてそれらが実現したのか。

 バンダから、ポケモン好きだと聞いたのは、去年のシーズン半ばのこと。正確な日時は覚えていないが、遠征先のミルウォーキー(8月5日~7日)で彼のポケモン愛を聞いているとき、隣にいたマイケル・グローブ(ドジャース※今季は肩の手術で全休)がバンダに対し、「お前はいったい、何語を話しているんだ?」と眉をひそめたのを覚えている。グローブにとっては、ポケモンキャラの名前、会話そのものが、外国語に聞こえた。

 9月に入って、ドジャースがアトランタへ遠征(9月13日〜15日)したとき、元阪神のピアース・ジョンソン(ブレーブス)もポケモンが大好きだということを知った。

 隣のロッカーのディラン・リー(ブレーブス)と、こんな会話をしていた。

「珍しいカードが手に入った」
「ちょっと見せてみろ」
「俺はこの間、このカードを手に入れた」

 そのやりとりが耳に入ったので、「そんなに好きなの?」と話しかけると、2人から“ポケモン愛”を聞かされた。

 そのとき、ジョンソンから意外な選手がコレクターであることも知った。そのことはまた後日、本人と話してから紹介したいが、いずれにしても、ジョンソンと話をしているとき、友人がポケモン米国本社で働いていることを伝えると、「会社訪問とかできないのか?」と聞かれ、友人に聞いてみると、「会社にはインフルエンサー担当がいるので紹介します。これまでも、NBA(全米バスケットボール協会)、NFL(全米フットボールリーグ)の選手もきましたよ」と返信があった。

 さっそくジョンソンに伝えると、翌シーズン――つまり今季の日程を調べ始めた。しかし残念ながら、遠征予定はなし。

「なんてこった!」

 本当に悔しそうだった。

 一方、ドジャースの予定を見ると、シーズン最後の遠征がシアトルだった。バンダに行きたいか聞いてみると、「お前は、何を言っているんだ?」という表情になった。

「行きたいに決まってるじゃないか」

 ただ、よく考えれば、ドジャースは25年の開幕を日本で迎える。

「9月まで待たなくても、3月に行けるんじゃないかな」と伝えると、口をあんぐりとさせた。

「俺たちにとって、そこは聖地だ!」

※リンク先は外部サイトの場合があります

参加者が当初の予定を大幅に上回る

今回の訪問はアンソニー・バンダ以外にも多くのポケモンファン?が参加 【筆者撮影】

 彼は子供の頃――まだ、インターネットが電話回線を使っていた時代に、ポケモンのカードが売っているお店が日本のどこにあるのか調べていたそうだ。

 まだ時期が早いので、キャンプが始まったら、また詳細を話そうということになった。バンダがドジャースに残る保証もない。

「絶対に残る。ダメなら、カブスに移籍する」

 冗談とも本気ともつかない口ぶりだったが、果たしてチームに残り、2月にキャンプが始まってから改めて意思を確認すると、「いつでもいい。予定を入れてくれ」。気持ちはぶれていなかった。

 試合予定は出ていたが、3月に入るまで練習スケジュールが分からなかったのでなかなか日にちを確定させられなかったが、14日は午後2時半からの練習になったので、午前中はフリー。ポケモン米国本社の友人から、日本の本社に連絡をしてもらい、日時を確定。当初はバンダ家族3人(奥さんと息子のエイデン君6歳)と自分の4人だけで行く予定だった。

 3月11日、筆者はドジャースよりも1日早く、米国を出発。日本に着くと、ドジャースのSNSを担当する女性ディレクターからメッセージが入っていた。

「バンダが14日に、ポケモン本社を訪問するって聞いたんだけど、一緒に行ってもいい?」

 当初、撮影は難しいかもと聞いていたが、本社の担当の方に連絡をすると、「撮影できる場所は限られますが、それでもよろしければ」という連絡をもらった。

 「それでいいか?」とドジャースのSNS担当者に連絡をすると、「もちろん」。その後、何通もメッセージのやり取りをしたが、すべて彼女は、日本に向かうチャーター機の中から送ってきた。

 何人来るのか? と聞くと、「3人」。SNS用の取材にしてはやけに人が多い。

 人数に関しても、「対応させていただきます」という連絡をもらったが、14日午前、彼らをホテルへ迎えに行く途中で、バンダから連絡があった。

「投手コーチ補佐のコナー・マクギネスと奥さんも行きたいと言っている。追加できるか?」

 全部で9人になった。

 ホテルで合流し、みんなでタクシー乗り場へ。1台に3人ずつ乗れば問題ないと思い、ホテルにもタクシーの確保を伝えていた。ただ、ふと人数を数えると10人いる。

 あれ? 1人多い。

 メンバーに入っていないその1人と目が合った。

「こんにちは、チコです」

 彼の名前は、フランシスコ・チコ・ヘレラ。ブルペン捕手である。詳しくはいつかまた紹介したいが、元々バットボーイで、2020年のコロナ期、開幕前の紅白戦で外野手が足りないときに、彼は外野を守った。すると、見事な守備を見せ、強肩で捕殺も記録。憎めないキャラクターも相まって、ドジャースではマスコット的な存在となった。

 知らない人ではないが、なぜ、ここにいるのかわからない。唖然としていると、「僕もポケモンが大好きなんです」。今さらどうしようもない。六本木へ向かうタクシーの中から、「すみません、あと1人増えました」と連絡。「大丈夫ですよ」という返事をもらったが、SNS担当の中にも絶対、単なるポケモンファンがいる。3人も必要ない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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