「拾えへんくて当たり前」からの変化 バレー日本代表・福留慧美がイタリアで過ごす挑戦の日々

田中夕子

日本代表で戦ってきた仲間が支え

関菜々巳(左)らの存在に「助けられている」と語る福留 【田中夕子】

 自ら点を獲るのではなく、獲らせる。リベロはスパイクやブロックのように、成長の度合いや効果が数字に現れるポジションではないため、伸び率や伸び幅を実感しにくい。だがイタリアではサーブやスパイクのスピードも常に数値化して伝えられるため、100キロ近いサーブをピタリと返せたときは「自分もレベルアップしているんだ、と思える」と笑う。

 何より、福留にとって大きいのは同時期に石川、関という共に日本代表で戦ってきた仲間たちがイタリアにいること。時差を気にせず、同じリーグで戦う悩みや葛藤を分かち合える存在に「本当に助けられている」と噛みしめる。

「何かあったときにすぐ相談できるし、落ち込んで、メンタルがしんどいときもみんな同じような経験をしているので、わかってくれる。私が一番歳上なんですけど、いつも2人に相談して励まし合っているし、むしろ私が一番励まされています」

 それでも時折、孤独を感じることもある。だが、その時間も成長へとつながる糧。

「日本に帰ったとき、こっちで経験したことが成長につながった、と実感できるように。今はしっかり頑張ります」

 日本でも数度、話を聞く機会はあったがキョロキョロと大きな目を動かしたり、所在なさそうに「人見知りだから人前で話すのが苦手で」とはにかむ姿が強く残っていたが、イタリアでは試合直後にも関わらず堂々と、大きな声で1つの質問に対してこれも、あれも、とばかりに言葉を紡ぎ出す。大変で、悩みながらの日々ではあっても充実の日々を過ごしていることが十分伝わってきた。

 そしてもう1つ、目立つのは、日本ではあまり聞かなかった京都弁。

「日本語をしゃべらないから、めっちゃ方言が出るんです(笑)。日本にいるときは標準語をしゃべっているつもりなんですけど、こっちだとダメですね。関西弁でしかないです(笑)」

 帰国後もまた笑顔で、そして京都弁で。流暢に、いくらでも、胸を張って思いの丈を語ってくれる日を楽しみにしている。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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