「拾えへんくて当たり前」からの変化 バレー日本代表・福留慧美がイタリアで過ごす挑戦の日々
どちらもスターティングメンバーではなく、途中出場となったがリベロの福留にとってはこの試合が本格復帰、復活に向けた試合でもあった。コートに立ってプレーすること自体が久しぶりだったからだ。
試合に出られない状況もプラスに捉え
常に絶好調ではなく、調子の良し悪しがあるのも当然で、自分のパフォーマンスがよくても相手がさらに上回ることもある。そうなれば交代を命じられたり、試合に出る機会が限られることもあるのだが、相談相手や気晴らしのツールが身近にある日本でのシーズンと異なり、異国での不慣れな環境では試合に出られず過ごす時間が途方もなく長く感じられることもある。福留もまさに、出られない現実を前に葛藤していた。
「せっかくイタリアまで来たのに、試合にも出られない。何しているんやろ、何でここまで来たんやろ、って。時間もあるので、余計に落ち込みました」
うまく行かないことは続くもので、同時期に体調を崩した。高熱で練習に参加できない日が続き、数日を経て体力が回復してからようやく練習に加わった。ただでさえ「試合に出たい」と焦る気持ちもあったが、福留はその状況に置かれたことをあえてプラスに捉えた、と振り返る。
「身体を休める時間もリフレッシュだと思って、頭を切り替えるようにしました。練習に入ってからも、AチームじゃなくBチームに入ったので、むしろエゴヌの球を受けられるからそれだけでめっちゃプラスや、と思って、とにかく練習を頑張ろう、と思ってきました」
その努力が報われたのがコネリアーノ戦だった。前週もコッパイタリアの決勝で対峙した相手との短いスパンでの対戦。「めちゃくちゃ強いから大変」と苦笑いを浮かべたが、交代直後から好守で何度も会場を沸かせた。不安や焦りなど微塵も感じさせない、守護神として堂々たる姿ではあったが、「本当に成長できているのか、不安に思うことがある」と吐露する。
「イタリアに来たばかりの頃は、チームメイトもすごい選手ばかりなので、拾えへんかったり、目が追いつかないのが普通やろな、と思っていたんです。案の定、エゴヌのスパイクとかサーブ、ほんとにすごくて、え、ここに来るん? って毎回びっくりしていて(笑)。でも最近は目も慣れてきたから、拾えへんくて当たり前、ではなくて、拾えへんくて悔しい。そういう気持ちに変わったんです。そもそもそういうことを経験する、そういう考え方になるためにイタリアへ来たので、そこは、自分の中でも変われたのかな、って思っています」