二軍成績から見る12球団の「有望株」ーパ・リーグ編ー

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日本ハムの松浦慶斗は昨季、二軍戦で防御率1.85、奪三振率11.08をマークした 【写真は共同】

 春季キャンプが始まり、いよいよ幕を開けた2025年のプロ野球シーズン。徐々に紅白戦や練習試合など実戦の機会が増えてきた。ルーキーや外国人選手といった新戦力が話題の中心となることも多い時期ではあるが、チームがリーグ優勝を目指す上では若手の成長や台頭が必要不可欠である。本コラムではこれから本格化する対外試合を前に、昨季の二軍成績から今後の飛躍が期待される若手を中心に取り上げる。

※本文は2025年2月8日時点の情報をもとに執筆
※選手年齢は2025年12月31日時点
※表中の平均球速はストレートの球速、および単位はkm/h

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 昨季最下位に沈んだ西武は、クローザーを務めたアブレイユや増田達至といった救援投手が退団している。その中で、今季のブルペンを支える存在として期待されるのが2年目の上田大河と糸川亮太だ。

 上田は二軍で防御率1.71を記録し、8月以降は一軍に定着。二軍では左打者に対して被打率.351と打ち込まれたが、シーズン中に習得したチェンジアップが有効に働き、一軍では左打者を被打率.196に抑えた。 

 糸川は自慢のシンカーが威力を発揮し、二軍で防御率2.19をマーク。与四球率も優秀な数字を残しており、安定したピッチングを披露した。一軍マウンドではボールを低めに集める普段の投球ができずに打ち込まれ、4試合の登板に終わったが、本来のパフォーマンスを出すことができれば一軍でも結果を残せるだろう。

 高卒ルーキーだった杉山遙希は、スライダーとチェンジアップが被打率1割台と質の高い変化球を持っており、将来的にはローテーション入りが期待される。昨季は得点圏で打ち込まれる場面が目立ったため、実戦経験を積んでピンチを切り抜ける投球術を身につけたいところだ。

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 一軍チーム打率.212と深刻な打力不足に陥った野手陣。昨季まで二軍監督を務めた西口文也が一軍監督に就任したこともあり、若手選手にとってはレギュラー獲得のチャンスが多くなりそうだ。

 牧野翔矢は前半戦で打率.317をマークし、6月25日に支配下登録への復帰を果たした。一軍の捕手は2年連続で100試合以上に出場している古賀悠斗などライバルは多いが、実戦経験を積んでいけば、一軍でもシュアな打撃を見せてくれるだろう。

 次代の中軸候補として期待されるのは村田怜音。ルーキーイヤーの昨季は序盤から二軍で結果を残し、5月に一軍昇格を果たしたものの、直後に左膝後十字靱帯(じんたい)の損傷で離脱を余儀なくされた。それでも9月に実戦へ復帰すると、以降は二軍で19打数7安打を記録。出場数が少ない中ではあるが、残した成績は素晴らしく、今季のブレークを予感させる。
 
 育成契約で新加入した仲田慶介は内外野をこなせるユーティリティー性が魅力。ソフトバンクに在籍した昨季は開幕前に支配下契約を勝ち取り、一軍の舞台も経験した。二軍では打席数は少ないものの4割を超える高打率をマークしており、バットでアピールできれば新天地でも早期の支配下契約をつかめるだろう。

 昨季の育成ルーキー・奥村光一はイースタン平均を上回るOPSを残しており、13盗塁を記録した脚力も武器。6月の支配下昇格後は一軍でも45試合に出場して貴重な経験を積んでいる。今季の飛躍が期待される一人だろう。

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 昨季は4年ぶりのBクラスに終わったオリックス。投手陣は故障者が相次いだものの、チーム防御率はリーグ2位の2.82と層の厚さを示した。
 逸材がそろう若手の中で、特に大きな期待を背負うのが椋木蓮だ。開幕前に支配下選手に復帰した昨季は、二軍で21試合に登板して防御率1.58をマーク。9月には一軍でリリーフとして登板を重ねるなど、22年に受けたトミー・ジョン手術からの復活を印象づけた。4年目を迎える今季は年間を通した活躍が期待される。

 育成選手では、鋭く落ちるフォークを武器とする入山海斗が二軍で39回2/3を投げて35奪三振を記録。後半戦にやや成績を落としたものの、前半戦の投球内容を維持できれば支配下登録が見えてきそうだ。同じく育成の大江海透は、力強い直球を武器に奪三振率9.15をマーク。オフに台湾で行われたウインターリーグでも好成績を残しており、貴重なリリーフ左腕として春先から存在感を示したいところ。

 今季から育成選手として再出発する6年目右腕の前佑囲斗にも注目だ。昨季は前年から与四球を大きく減らし、二軍で防御率1.98と安定感のある投球を披露した。今季は実戦でさらなる結果を残し、一軍の舞台に返り咲くことができるか。

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 野手陣に目を向けると、育成の河野聡太が1年目から二軍で存在感を発揮。打率.301のハイアベレージを残し、四球割合12.8%と選球眼の良さも光った。守備では内野の4ポジションすべてを経験しており、ユーティリティープレーヤーとして楽しみな存在だ。

 オフに阪神から加入した遠藤成は、昨季ウエスタンで最高出塁率のタイトルを獲得している。加えてリーグ2位の30盗塁を記録したスピードも大きな武器だ。阪神では一軍での出場機会に恵まれなかったが、新天地でアピールを続けて出番を勝ち取りたい。

 4年目外野手の池田陵真は8月に二軍で月間打率.359をマークしたものの調子の波が激しく、シーズンを通しては打率.232と低迷した。しかし、前年から三振割合が19.4%から14.2%、四球割合は9.2%から12.7%に良化しており、打席内でのアプローチは改善している。ドラフト1位ルーキーの麦谷祐介が加入した今季は、外野のレギュラー争いがし烈を極めると予想されるが、競争を勝ち抜くだけのポテンシャルは持っているはずだ。

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 昨季はチーム防御率がリーグワーストの3.73だった楽天。ドラフト1位ルーキーの古謝樹が一軍のローテーションに定着したものの、先発陣の層は厚いとはいえない。そこで期待したいのが2年目の松田啄磨だ。夏場からは二軍で先発として起用され、8月以降は5試合で防御率2.12を記録している。投球の安定感を生んでいるのが与四球率の低さで、ゲームメーク能力をさらに磨けばローテーション入りに近づけるだろう。

 昨季が高卒1年目だった坂井陽翔はリリーフを中心に21試合に登板し、10月には一軍デビュー。地元・兵庫県で開催されたフレッシュオールスターにも出場するなど、貴重な経験を積んでいる。

 坂井と同学年の日當直喜は30試合に登板し、多くの項目で好成績を記録。特に得意のフォークは被打率.089と抜群の威力を発揮した。順調なルーキーイヤーを過ごした坂井と日當は、将来的には投手陣の中心を担う存在となることが期待される。今季のさらなる成長に注目したい。

 育成7年目を迎える王彦程は昨季9試合に登板。年々防御率は改善されており、昨季は2点台をマークした。課題は右打者への投球で、左打者を被打率.121と抑えたのに対して右打者には同.324と苦戦。今季は右打者を封じることでアピールし、支配下登録を手繰り寄せたい。

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 現在はセンター・辰己涼介とライト・小郷裕哉がスタメンに定着していることで、外野手はレフトのポジション争いの激化が予想される。

 そのレフトで昨季スタメン出場が最も多かったのが中島大輔だ。二軍では各指標でイースタン平均より優れた成績を残しており、8月には一軍で月間打率.293を記録するなどアピールに成功した。課題は打率1割台にとどまった対左投手の打撃だが、二軍では同.357をマークしているように、改善の見込みはある。今季は一軍の出番をさらに増やし、レギュラー争いの先頭に立ちたいところ。

 高卒4年目を迎える吉野創士と前田銀治は、ともに一軍デビューを目指す。二軍で自己最多の74試合に出場した吉野は、6月に月間打率.380を記録するなど、ドラフト1位としてのポテンシャルを徐々に発揮しつつある。ただ、9失策と外野守備に課題を抱えており、打撃のさらなるレベルアップと並行して守備面の改善に取り組む必要がありそうだ。

 同じく昨季が自己最多の出場数となった前田は、打率こそ1割台だが180打席に立って公式戦初アーチを含む4本塁打を記録しており、パワフルな打撃は目を引くものがある。平均を大きく下回るコンタクト率を改善し、確実性を身につけることができれば、成績は一気に伸びそうだ。

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日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

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