週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#28】中学から評判の大型右腕!寺西成騎 今年の東都No.1右腕、坂口翔颯

西尾典文

「今年の東都No.1右腕。故障気になるが実力は大学球界屈指」

【写真提供:西尾典文】

坂口翔颯(国学院大 4年 投手 180cm/80kg 右投/右打)

【将来像】金子千尋(元オリックスなど)

スムーズに縦に腕が振れ、回転の良いボールと制球力の高さは金子とイメージが近い

【指名オススメ球団】DeNA
先発タイプの右の若手投手が不足していることから

【現時点のドラフト評価】★★★☆☆
上位指名(2位以上)の可能性あり

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 昨年は一部、二部合わせて7人もの投手がドラフト1位で指名された東都大学野球。今年は投手については少し寂しい印象は否めないが、その中でも上位指名の可能性を秘めているのが国学院大の坂口翔颯だ。報徳学園では1年秋から投手陣の一角に定着。2年秋の県大会では、同学年でドラフト上位候補として呼び声の高かった明石商の中森俊介(現ロッテ)にも投げ勝って優勝を果たしている。国学院大でも1年春からリーグ戦デビューすると、1年秋には5勝0敗、防御率1.18と見事な成績を残してチームを優勝に導き、最優秀投手とベストナインも受賞した。1学年上には武内夏暉(現西武)もいたが、当時の投球は坂口が上回っていたことは確かである。

 2年秋には肘を痛めてリーグ戦登板なしに終わるなど、成績については1年秋がキャリアハイとなっているが、ピッチングを見ていると着実に成長を重ねてきたことは確かだ。特に今年強く印象に残っているのが春季リーグ戦の開幕戦となった4月8日の青山学院大との試合だ。1回に味方のエラーからピンチを招いてドラフト1位候補の西川史礁(4年・外野手・龍谷大平安)にタイムリーを浴び、これが決勝点となって負け投手となったものの、被安打4、自責点0で相手の強力打線を抑え込んで見せたのだ。打たれたヒット4本のうち3本は内野安打だったということも投球内容の凄さをよく表している。ストレートの最速は筆者のスピードガンで150キロをマークし、試合終盤でもコンスタントに145キロ以上を記録。奪三振は6個とそこまで多いわけではなかったが、全て空振りで奪っており、数字以上に打者の手元でボールの勢いが感じられた。その勢いを生み出しているのがフォームだ。下級生の頃とはマイナーチェンジし、左足を上げる動きは少し大谷翔平(ドジャース)を彷彿とさせるものがある。しっかり右足に体重を乗せてから引っかかることなくスムーズに体重移動しており、躍動感も年々アップした印象を受ける。そしてスムーズに肘が高く上がり、真上から腕を振り下ろすことができるため、上背以上の角度が感じられるのだ。昨年ドラフト1位でプロ入りした東都大学野球出身の投手と比べると、スピードガンの数字は少し落ちるものの、ボールの質という意味では上回っている部分が多いことは間違いないだろう。

 一方で課題となるのは今週紹介した寺西成騎(日本体育大)と同様にコンディションの部分だ。春の青山学院大戦以降は明らかに調子を落として0勝に終わると、秋のリーグ戦でも肘の不調から出遅れて序盤はベンチ外が続いた。10月9日の中央大戦でリリーフとしてようやく復帰し、2回をパーフェクトと好投を見せたことで胸をなでおろしたスカウトもいたと思われるが、最終学年で成績を落としたというのはやはり気になるところだ。

 ただ、春の開幕戦で見せた投球に関しては今年のドラフト候補の中でもトップクラスのパフォーマンスであることは間違いなく、ボール自体は着実にレベルアップしてきたというのはプラス要因である。好調時を高く評価するのか、安定感の無さから低く評価するのか、球団によって判断は分かれそうだが、成績を落としたことで競争相手となる球団が減ったと内心喜んでいるスカウトがいることも十分に考えられるだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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