荒木絵里香が占うバレーSVリーグの船出「優勝予想は本当に読めない」

C-NAPS編集部

世界トップレベルの選手とアジア人選手が躍動

外国人選手枠の世界トップの選手ももちろんだが、クインシーズのハッタヤ・バムルンスックらアジア人選手の活躍も見逃せない 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 SVリーグは、アジア人選手枠が1つ、外国人選手枠が2つと枠が増えたので、今季のメンバー構成はもちろんですが、今後も日本に来たいと思う外国人選手は増えると思います。ただ、小島選手のように米国の新リーグに行く選手もいるので、新設のタイミングが被ってしまったことは、今後の外国人選手の加入にも多少なりと影響があるかもしれません。

 ただ、エアリービーズにはブラジル代表のオポジットでエースのロザマリア・モンチベレル選手、埼玉上尾メディックスにはセルビア代表のロゾ・サラ選手とパリ五輪にも出場した現役のトップ選手がSVリーグにも所属しています。東レアローズ滋賀にもオランダ代表のロホイス・ジュリエット選手がいるので、今後も外国人選手枠でどんなスター選手が来るのか楽しみですね。

 アジアでは日本のバレーボールの人気が高いので、アジア人選手枠についても注目しています。東南アジア、特にタイはバレーボールの競技レベルも人気も高いですし、SVリーグにもタイ人選手が多く所属しています。タイではSVリーグの放送・配信が決定していますし、日本はもちろん、アジア全体にマーケットを広げていくことも大切ですね。アジアのクラブカップに参加しているチームも多いですし。

 クインシーズにもハッタヤ・バムルンスック選手というタイ代表の選手がいるのですが、自国でものすごい人気を誇るスター選手です。Instagramも50万人以上のフォロワーがいますし、タイでスポンサーをたくさん抱えているのですが、そうした選手がSVリーグを選んでくれています。タイ人選手は人気だけでなく実力の高い選手ばかりなので、各チームの貴重な戦力になっています。

 他の東南アジアの国もフィリピン、ベトナム、インドネシアにはバレーボールのリーグがありますし、他国から外国人選手を招き入れているので、すごくレベルが高くなってきています。そうした意味では、代表レベルにおいても女子バレーのアジアでの勢力図もまた変わってくるかもしれません。

 SVリーグにも東南アジアの新興国の選手が入ってきていて、エアリービーズのセッター、デグズマン・ジュリア・メリッサ・モラド選手がフィリピン人ですし、マーヴェラスの蓑輪幸選手は、旧名アライジャ・ダフニ・アントニオ・サンティアゴで、今年フィリピンから帰化しています。同じく帰化選手では、PFUブルーキャッツ石川かほく所属のキューバ出身、バルデス・メリーサ選手がいます。そうしたさまざまなルーツを持つ選手たちの活躍も楽しみですね。

14チームの頂点に立つ「初代女王」はどのチームか

SVリーグ初代女王に輝くのはどのチームか。優勝争いとともにリーグ自体の発展からも目が離せない 【写真は共同】

 各チームの選手についてこれまで触れてきましたが、どの選手も口をそろえて「初代女王になりたい」と言っていますね。レッドロケッツの山田選手が会見で言っていたのを筆頭に、口にする選手が多いと思います。最初のチャンピオンはすごくキャッチーですし、初代女王の座を目指している選手が多い、競争力の高いリーグになることを期待しています。

 女子は14にチーム数が増えましたし、ホーム&アウェーのゲーム方式になりました。試合数が44試合と昨年度の倍になり、リーグの開催期間も長くなっています。シーズン終盤はチャンピオンシップ方式で8チームによるファイナルラウンドで頂点を争いますし、観ている側としても初代女王にどのチームが輝くのかが最後まで分からない楽しみな長丁場の戦いが待っています。スタメン6人だけでは戦い切れませんし、若手やベテランらの総合力が求められる点もSVリーグを観るうえでのポイントになるでしょう。チーム数が増えて日本各地で試合が行われる点もポジティブな要素です。

 SVリーグは今後、JリーグやBリーグのようにより地域に密着し、愛されるスポーツにしていく必要があると思います。ほとんどのチームが名称に地域名を入れましたし、プロリーグに移行していく成長する過程も多くの方々に見守っていただけたら嬉しいです。

 SVリーグになったことでの変化としては、地域とのつながりがより強化された点が挙げられます。地域の小中学校との交流や、フードロス事業や街の美化活動など、積極的に各チームが関わる機会が増えています。一番大きな変化としては、各チームがジュニアチームを持つようになったことです。ジュニアチームがあることでより地域との関係性が強まりますし、育成した選手がシニアチームの顔になることも今後期待されます。育成世代のコーチやスタッフの雇用にもつながりますし、バレーボールの発展だけではなく、地域との連携においてもとてもいい取り組みだと思います。

 長期的な視点では、SVリーグをお客さんで満員になる人気のリーグにしていきたいですし、地域の人により気軽に来てもらえるようにしたいですね。現状はバレーボールが好きな人や実際にプレーしていた人が主な客層になりますが、将来的にはもっとハードルを低くしていきたいです。たとえば、家族でフラッと試合観戦に訪れたり、デートで気軽に来れたりするリーグになるとより盛り上がると思います。

 試合の前後、セット間のエンターテイメント要素も各チームが今まで以上に力をいれて取り組んでいます。試合前のイベントやキッチンカーのフードなども含めてSVリーグになってから各チームがいろいろな仕掛けを用意していると思うので、総合で楽しめるエンターテイメントとして、バレーボールはまだまだ伸びしろがあるはずです。そういう意味でも今後の発展を私自身が楽しみにしています。

荒木絵里香(あらきえりか)

【本人提供】

1984年8月3日生まれ。岡山県出身の元バレーボール選手。186cmの長身を生かしてミドルブロッカーとして活躍。成徳学園(現・下北沢成徳)時代には高校3冠を達成した。全日本では2008年北京、12年ロンドン、16年リオデジャネイロ、20年東京(コロナ禍の影響で21年開催)と4大会連続で五輪に出場。ロンドン五輪では主将として銅メダルを獲得した。2014年第一子出産後、競技復帰を果たし、東京五輪で選手生活を引退。現在はクインシーズ刈谷のチームコーディネーター、バレーボールの普及活動や強化、JOC理事、アスリート委員、講演など様々なフィールドで活躍の場を広げている。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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