工藤公康の野球ファイル《シーズン2》

工藤公康と森保一が語る「勝利へのデータ活用術」 監督が抱える共通の悩みとは?

構成:スリーライト

監督の仕事は「決断」と「責任」

監督は「決断すること」が仕事と話す森保監督だが、どうしても決断に悩むこととは? 【写真:スリーライト】

工藤 トーナメントのような短期決戦とリーグ戦とでは戦い方や意識も違ってくると思います。私は「負けたら終わりの一発勝負」の経験があまりないのですが、そのような試合で一番意識していることはどんなことですか?

森保 代表の試合はほぼトーナメントだと思っています。「一戦必勝」です。ワールドカップアジア最終予選は10試合のリーグ戦ですが、1ヶ月に2試合ずつしかありません。トーナメントとして考えた方がいいと思っています。リーグ戦、トーナメントどちらにしても、相手を無失点に抑えて先制点を奪いに行くという我々のコンセプトの根幹は変わりません。我々が追う展開になってバタバタすると普段の力を最大限発揮できずに、相手の術中にはまって試合を落とすこともあります。そこはリーグ戦といえども、守備をしっかりしながら攻撃の姿勢を出していくことをやっていかなければいけません。私がサンフレッチェ広島の監督時代は、シーズンを通してハイパフォーマンスを維持して、勝つ可能性を高められる選手起用とコンディションの維持を考えていましたが、代表はもう一試合一試合、目の前の試合に勝つために全力を尽くすことを考えています。

工藤 目の前の一試合ということですが、主力選手のコンディションがあまりよくないと報告が来た場合、どう決断されますか? それでも「あいつにはやってもらわないと困る」ということで起用するのか、「ここで何かあったら」と思い留まって出場させないのか。その境目はどんなところですか?

森保 その境目はドクターの意見です。私は、ドクターがダメと言った選手は1回も起用したことはありません。選手は当然試合に出たい気持ちを持っていますが、そこはドクターに従います。私も「できるんじゃないの?」と思うこともありますけど、これまでは一度も使ったことはなく、ドクターに判断を任せています。でも、選手が100パーセントの状態でなくても試合に出られるという場合に関しては、答えがずっと出ないですね。

 チーム全体を信頼するという意味ではコンディション重視で選手を起用していくこともやっていかなければいけませんが、でもずっとこれまでチームを支えてきた選手がプレーできるかどうか分からない状態で、メンバーから外した方がチームとしてパフォーマンス高いだろうけど、でも本人はプレーする意思を持っているという場合は、使う方に行くかもしれません。そこはいまだに答えが出ないですね。

工藤 監督としてどちらを選択した方がいいのだろうか。選手に怪我をされるのも困るし、選手の意思も尊重してあげたい。私も監督をやっていて、答えが見つからなかったです。どちらかということではなく、そのときのチーム状況、いろんなものが決断の要素に入ってきます。シーズンの初めならば止めるかもしれないけど、シーズン後半で優勝がかかっている大事な試合ならば起用する決断になるかもしれないですね。本当に決断する最たるものが監督かなと感じます。私はずっとそれを自覚しながら監督をやってきました。

森保 「決断係」ですね。

工藤 サッカーも同じなんですね。

森保 そうだと思います。チームにはいろんな決めることがあって、監督は一つひとつを決めていく係かなと思っています。

工藤 最終的な責任は監督が取るのであれば、決断するべきところを決断して、責任を取るべきところは取る。そこを明確にした方がコーチも選手たちもやりやすいのかなと思います。

森保 おっしゃる通りです。「決断係」と「責任取り係」。まさに工藤さんと同じ気持ちです。

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