元代表主将・荒木絵里香が見たバレー女子ブラジル戦「日本がやるべきことを相手にやられ続けた」

田中夕子

「いつも通り」を出すのが難しいのが五輪

途中出場の井上が古賀に次ぐチーム2位の9得点と、ゲームチェンジャーとして機能したのは数少ない収穫だ 【Photo by Jared C. Tilton/Getty Images】

 0-3という厳しい結果になり、かみ合わないまま終えてしまった。日本にとっては非常に悔しく、悔いが残る試合でした。

 途中出場の井上愛里沙選手がバックアタックや、ブロックをうまく利用した攻撃でゲームチェンジャーとしての役割を果たしていたのは収穫でしたが、メンバーやサーブレシーブの陣形が頻繁に変わることで、ローテーションのミスが生じてアウトオブポジションを取られたり、ギクシャクする場面も目立ちました。

 いいプレーが出てもそこから一気に乗り切ることができず、流れをつかみきれなかった。終盤にかけてブラジルのブロックポイントが増えたのも、攻撃が単調、単発になってしまったところにブラジルのブロッカーがしっかり待っていたからです。絶妙だったはずの岩崎こよみ選手のツーアタックに対して、しっかりガビ選手がレシーブに入ったブラジルの集中力に対し、日本はうまくかみ合うきっかけをつかめなかった。

 ブロックディフェンスも機能していなかったので、上がるボールが上がらなかったり、ブロックと後ろのレシーブが連動していないので変なところにボールが飛んでいったり、落ちてしまう。ブロックを抜いたコースでレシーブを確実に上げたブラジルと、守備の面でも大きな差が生じてしまいました。

 2試合を終え、0勝2敗。2勝したブラジル、ポーランドがすでに準々決勝進出を決めたので、日本が準々決勝に進めるかはA組、C組の結果次第。自力の可能性は潰え、非常に厳しい状況ではあります。

 いつも通りをいつも通り出すのが難しい。これがオリンピックなのか、とあらためてその難しさに直面している選手も少なくないはずです。

 とはいえ、日本にはまだ1試合、ケニア戦が残っています。オリンピックという大会は他の大会以上にたくさんの方々、日本中の方々が注目して、応援してくれる。特別な舞台です。

 ここまでなかなか自分たちがやってきたバレーボールを出しきれずに苦しんでいますが、だからこそ、次のケニア戦ではベストを尽くしてほしいし、チームとして何年も築き上げ、葛藤して、もがきながらやってきた軌跡があるからこそ、すべてを出しきってほしい。サポートメンバーの山岸あかね選手や、13人に入ることができなかった選手たちの思いも背負って、そして応援してくれる人たちに向けて、ここまで練習してきたこと、やってきたものをすべて出し尽くしてほしい。そんな姿を見たいし、私も日本から精いっぱい応援します。

(企画・編集/YOJI-GEN)

荒木絵里香(あらき・えりか)

1984年8月3日生まれ、岡山県出身。成徳学園高(現・下北沢成徳高)では高校3冠を経験し、卒業後は東レアローズに入団。ミドルブロッカーとして1年目からVリーグで活躍し、同年に日本代表にも選ばれた。東レにはイタリアでのプレーを挟んで通算9シーズン所属。出産後の2014-15シーズンからは上尾メディックスでプレーを続け、2021年にトヨタ車体クインシーズで選手生活にピリオドを打った。日本代表ではオリンピックに4回出場。2012年ロンドン五輪では主将としてチームを牽引し、銅メダル獲得に貢献した。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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