歴代日本人F1ドライバーと比較した角田裕毅の強さとは?

柴田久仁夫

角田の契約更改の発表はこれまでで最も早いタイミングとなった。チームの角田への期待の高さが窺える 【Photo by Rudy Carezzevoli/Getty Images】

 角田裕毅がビザ・キャッシュアップRBとの契約を更改し、5年連続のF1参戦が確定した。今季の角田はここまでの9戦で予選Q3進出7回、レースでも5戦入賞、19ポイントを獲得してドライバーズ選手権10位につけている。

 今シーズンのF1はレッドブル、フェラーリ、マクラーレンら強豪5チームと、角田の所属するRBなど残り5チームとの戦闘力の差が非常に開いている状況だ。後者のチームに所属するドライバーが1ポイントでも獲るのは至難の業で、実際ザウバーの二人のドライバーと、ウィリアムズのローガン・サージェントは依然として一度も入賞できていない。

 だからこそトップ5の一角を崩し、選手権10位以内に割って入る活躍を見せる角田を、ライバルチームも放っておくはずがない。すでにこれまでにウィリアムズやハース、ザウバーが、角田側に接触してきたと言われる。中でも再来年にアウディのワークスチームとして再出発するザウバーは、獲得に非常に積極的だった。

 RBがシーズン前半、6月初めという異例に早いタイミングで角田との契約更改に踏み切ったのは、まさにそんな動きを阻止するためだった。一時はレッドブルからの指示で角田を放出し、来季のドライバーラインナップはダニエル・リカルド、リアム・ローソンになるのではという観測も流れた。しかし最終的にRBは、最もチームに貢献してくれるであろうドライバーを選んだことになる。

 では角田はここまでどう成長し、今のF1でどんな位置を占めているのか。その考察の一助として、これまでF1に参戦してきた日本人ドライバーたちと比較するのも面白いかもしれない。

角田の魅力は「原石の輝き」だ

2012年の日本GPで3位表彰台を獲得した小林可夢偉。しかしその後まもなくチームからの離脱が決まり、可夢偉のF1キャリアは事実上終わりを迎えた 【(C)柴田久仁夫】

 筆者は去年すでに、「歴代日本人F1ドライバーランキング」という記事を書いた。

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 1987年にF1デビューした中嶋悟から角田まで、1シーズン以上F1に参戦した10人の日本人ドライバーを比較したものだ。時代も違えば、マシンも全然違う。それでも比較可能な普遍的な部分があるはずだと考えての企画だった。

 当時の角田は、F1デビュー3年目。2021年に「20年に一度の大型ルーキー」(当時F1の技術総括責任者だったロス・ブラウン)など、F1関係者の期待は非常に高かった。しかし初年度はチームメイトのピエール・ガスリーに、まったく歯が立たず。予選やレース中のキレた無線ばかりが話題になった(自己最高の4位入賞を果たした最終戦アブダビGP以外は、ガスリーに予選全敗)。

 それでも2年目にはやや落ち着いたレース運びができるようになり、予選でもガスリーに対して9勝13敗まで盛り返した。そして3年目のこの年は、マシン自体はかなり非力だったにもかかわらず、ほとんどのレースで入賞に絡む戦いを繰り広げた。

 走行中のセルフコントロールに関しても、まだ感情を抑えきれない時もあったものの、かなり改善していた。なので僕はこの時の角田に、今後の成長への期待も込めて、佐藤琢磨に次ぐ10人中2位の評価を与えた。

 そして角田の一番の魅力は、「素の速さ」だと思う。原石としての可能性と、言い換えてもいい。うまく磨けば、これからどこまでも伸びていってくれるはず。中島以来全ての日本人F1ドライバーを取材してきた中で、そんな可能性を感じたのは、角田以前には小林可夢偉だけだった。残念ながら可夢偉は、今も記憶に残る足跡をいくつか残しながらも、わずか4シーズンでF1を去って行った。だがそんな可夢偉と同じ潜在能力の高さを、角田からも感じるのだ。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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