“37-35”で決したVファイナル第2セット 敗れてなお「プロの輝き」を見せた西田有志
チームは敗れたが、西田(写真左)は印象的なプレーを見せていた 【(C)JVL】
ただストレートの決着ではあっても、完敗ではあっても、パナソニックが「爪痕(つめあと)」を残した1時間45分だった。
西田が果たした「ゲームチェンジャー」の役割
パナソニックが20-20でタイムアウトを取ると、そこからは一進一退の攻防が続いた。21-21、22-22、23-23、24-24、25-25……。セットの決着となる2点差に行き着かないまま、スコアは積み上げられていった。
どんなチームも勝負どころでは「一番自信のある選択」をする。結果としてファイナルの第2セットは両チームのオポジットが打ち合う展開になった。サントリーは徹底的に218センチのドミトリー・ムセルスキーにボールを集めた。パナソニックは186センチのレフティー、西田有志が打数を重ねていた。
西田は第2セットだけで13本のアタックを決めている。そのうち7本はデュースとなってから。量だけでなく「質」も抜群で、試合を通してのアタックの成功率は69.6%だった。
試合後の記者会見で西田はこう述べていた。
「監督から『ゲームチェンジャーとしてしっかりと仕事をしてほしい』と言われていました。見に来ていただいている方々を味方につけるのは自分だけかなと、それが役目だと思っていました」
西田は6週間前に負傷し、レギュラーラウンドの終盤戦を欠場している。ファイナルも第1セット途中からの出場だった。彼は自身のコンディションについて「結構いい状態」と述べていたが、やはり不安はあったのだろう。ロラン・ティリ監督は悪い展開を立て直す、もしくは五分の展開を勝ち切るための「ゲームチェンジャー」として、彼をベンチに温存していた。
しかしパナソニックは劣勢となり、第1セットの途中から西田をコートに送り出さざるを得なかった。そして彼は期待に応えて、実際に試合の流れをパナソニックに引き戻した。西田は手応えと悔しさが入り混じった様子で、こう述べる。
「ゲームチェンジはできたと思います。怪我から復帰した直後かもしれないけど、スパイクの決定率は良かった。でも自分の強みであるサーブをしっかり活かせなかったところが反省点です」
サーブミスで「もう1本」を逃す
サーブは西田の強みだが、ファイナルではフィーリングが合わなかったという 【(C)JVL】
一方で内面がクールだからこそ、あえて「熱さ」を表現し、観客を巻き込んでモメンタムを変えようとしていた。サービスエースを決めると、パナソニックが激しい打ち合いを制すると、彼は激しく咆哮(ほうこう)し、思いをコートに叩きつけた。彼はそんな場面をこう説明する。
「(トスが)上がったら決めるだけなので、そこまで何も考えてなかったです。だけどリアクションしてチームを盛り上げて、(チームが)軌道に乗ったかなと思います」
パナソニック、サントリーはともに大阪府に本拠地を置くチームだが、ファイナルのチケットは完売し、東京都江東区の有明コロシアムは立ち見も出る盛況だった。そしてパナソニックの「ブルー」を身にまとった観客が、アリーナの半分強を埋めていた。西田のベクトルは、そこにも向いていた。
ただし26-26、33-33の場面ではサーブミスを犯すなど、サーブについては勝負どころで彼本来の強みを出せなかった。
「(サーブは)フィーリングが合わなかったんですけど、3セット目にやっと戻ってきた感じでした。ただそこでもミスが目立ってしまって、そこが敗因だったと思っています」(西田)