能登半島地震の被害を受けた選手たちはVリーグの「北陸ダービー」をどう戦ったのか?

田中夕子

黒部でも、氷見とともに

KUROBEの選手たちは氷見のエスコートキッズとともに入場 【撮影:田中夕子】

 本来会場となる予定だった氷見の子どもたちがエスコートキッズとして選手と共に入場し、KUROBEのホームゲームを彩るチアリーディングクラブ、PUPPYSの子どもたちが会場を盛り上げる。

 最初に先行したのは、ホームのKUROBEだ。佐藤黎香のサービスエースや高橋愛未のスパイクで連続得点し、25対20で第1セットを先取。しかしPFUも第2セット終盤にバルデス・メリーサのスパイクで連続得点し、27対25で第2セットを奪取。続く3、4セットもメリーサのスパイクや細沼綾のブロックで得点を重ね、セットカウント3対1でPFUが6勝目を挙げた。

 敗れたKUROBEの佐藤彩乃主将が、試合直後のコートで多くの声援を送った観客に向け、1つ1つ丁寧に、言葉を紡ぎ出す。

「大きな地震があって、氷見から黒部に会場が変更された中、たくさんの方にご尽力いただいたおかげで試合をすることができました。今までもそうでしたが、今まで以上に、私たちが試合をできることは当たり前じゃない、と感じさせられる中、勝っても負けてもたくさんの声やハリセンの音で後押しをしてくれる方々がいるから、戦うことができています。1つ1つに感謝して、もっと強くなれるように、全員で戦い続けます」

「元気につながる起点」として

試合後には募金活動が行われた 【撮影:田中夕子】

 試合後は、両チームの選手が募金活動を行った。翌週、金沢で開催されたPFUのホームゲームでも同様に募金活動を実施しただけでなく、収益の全額を被災地の復興支援に向けた義援金として寄付すべくチャリティーグッズの制作、販売も行われた。

 レギュラーラウンドはPFUが10位、KUROBEが11位で上位6チームによるファイナル6進出は逃したが、これからも日々は続き、Vリーグのレギュラーラウンドに続いてVカップも実施される。

 被災地に勇気を、希望を、と軽はずみに言うことなどできない。常に思いを寄せ、心をひとつに、できることをするだけ。PFUの坂本将康監督が言った。

「数日前の新聞に『今こそ石川のスポーツを』と書いてありました。僕個人の思いを言えば、今バレーボールなんて見られないぐらい大変な人たちもたくさんいる中で、バレーボールで力を、と簡単に言うことなどできません。でも、もし少しでも情報を得られたり、会場へ足を運んだり、見る余裕がある方々に僕らがスポーツをしていることがきっかけで、元気になった、と思ってもらえて、その人が元気になったからまた別の人も元気になった、とつなげることができたなら、それはいいことだと思うし、元気がつながる起点になれれば嬉しいです」

 必死で戦う今が、誰かの勇気や力になるように。“特別な”北陸ダービーと同様に、これからも願い、信じて、戦い続けていくだけだ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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