元NBAカークの帰化が決まったB1琉球 1月の強行日程、苦しい戦いを「受け入れて」つかんだもの

大島和人

リン擁する台湾の強敵に快勝

桶谷HCはニュータイペイ戦後に手ごたえを口にしていた 【(C)B.LEAGUE】

 中2日で迎えた24日のEASLニュータイペイ・キングス戦は、明るい予兆を感じさせる快勝だった。EASLは日本、韓国、フィリピン、中華圏の強豪クラブが集まって「東アジア王者」を決めるサッカーのUEFAチャンピオンズリーグ、AFCチャンピオンズリーグと同様の大会だ。

 ニュータイペイはNBAのスター選手だったジェレミー・リンを擁し、既にグループBの突破を決めている。台北で行われた10日の試合は琉球が敗れている台湾の強敵だ。しかしホーム戦の琉球は前半を35-40とビハインドで終えつつ、後半に突き放して90-67と圧勝を遂げた。

 琉球は負傷欠場が続いていたスモールフォワード田代直希、日本代表センター渡邉飛勇がこの試合で実戦に復帰。渡邉は17分12秒の出場で8得点、7リバインドと持ち味を見せていた。白鴎大から加入した期待の新人・脇真大も9分30秒のプレータイムながら8得点を挙げ、存在感を見せた。

 ガードの荒川颯、フォーワードの植松義也など、セカンドユニットの若手も明らかなステップアップを見せていて、戦力として試合に絡みつつある。

 桶谷HCは24日のEASLを終えて、記者会見でこう語っていた。

「今日はまずDFで崩れなかったのが良かったところです。ニュータイペイさんは本当にいいチームで、ジェレミー・リン選手を筆頭にオフェンスが素晴らしい。そんな相手に、これだけ自分たちが我慢できたのはいい経験になりました。前半はシュートが入ってなかったですけど、本当にいいボールムーブメントができていて、後半しっかり(シュートが)入ってきてから点差が開いたと思います。これで自信を持って、自分たちはBリーグ戦っていきたいなと思います」

EASLで新人・脇が台頭

脇は持ち味の得点力、DFを見せた 【(C)琉球ゴールデンキングス】

 EASLは外国籍枠が通常のBリーグより1つ少ないため、24日の試合はインサイドの柱であるジャック・クーリーが欠場していた。しかしそのような中でリバウンド争い、DFを五分以上に進めた。

「出るメンバーがみんなハードワークしてくれました。日頃出ない(荒川)颯や脇がボールプレッシャーをしっかりかけて、ターンオーバーを誘ってくれた。チームとしてインテンションの高いDFができたと思います」(桶谷HC)

 指揮官は脇の活躍について手厚くコメントしていた。

「ここまでやってくれるとは思っていなかったです。1本目のシュートが入って、いい形でゲームに入れた。『大学から来てバスケットの感覚がある間に、早く使ってプロのゲームに慣れさせた方がいい』と話してくれたコーチがいて、いいタイミングがあれば出そうと話をしていました。遅くなるとタイミング的に出せない可能性があるので(キャプテンで同じポジションの)田代にも『タシの前に出すね』と話しました。タシも『気を使わないで出してください』と言ってくれて、それで僕も出しやすくなりました。こういうゲームを1試合1試合続けていくことで、キングスに必要な、なくてはならない選手になるのではないかなと期待しています」

 琉球は3勝3敗でグループBを終えることになり、次のステージへ進出できるかどうかは他チームの結果待ちという状態だ。EASLは国境をまたぐ移動に判定、ボールの違いといった難しさもあるトーナメントだった。それでも指揮官は同大会についてこう述べていた。

「NBAで活躍した人(ジェレミー・リン)がこうやって日本、沖縄アリーナに来てくれたのは本当に素晴らしいことです。EASLの価値はそういうところにもあるのかなと感じています。選手みんなが代表に選ばれるわけではないですから、国際大会にクラブで出られるのはすごく意味があること。スケジュールだけ変えてもらえれば、むちゃくちゃ意義がある大会ではないかと僕は思います」

カークが日本国籍取得

カークは帰化で「外国籍枠」に余裕が出る 【(C)B.LEAGUE】

 翌25日には新たな嬉しいサプライズがあった。それはアレックス・カークの日本国籍取得だ。

 32歳のカークは211センチ・114キロのビッグマン。抜群の跳躍力、センター離れした走力を持ち、NBAでプレーした経験も持っている。2017-18シーズンにアルバルク東京へ加入し、22-23シーズンからは琉球に移籍していた。「腰椎椎間板ヘルニア」の診断で12月1日からインジュアリー(故障者)リスト入りしているが、状態さえ戻ればB1でも屈指のインサイドプレーヤーだろう。

 カークがインジュアリーリストから外れれば「帰化選手」としてチームに復帰させられる。これにより琉球はクーリー、アレン・ダーラム、ヴィック・ローも含めて外国出身選手を4名登録し、そのうち3名を同時にコートに立たせられることになった。

 選手層に厚みを増し、なおかつ「他のクラブと同じ日程」で戦えるようになったB1後半戦……、そしてチャンピオンシップの琉球が今から楽しみだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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