元NBAカークの帰化が決まったB1琉球 1月の強行日程、苦しい戦いを「受け入れて」つかんだもの

大島和人

琉球は1月前半から苦しい戦いが続いた 【(C)B.LEAGUE】

 琉球ゴールデンキングスは2024年の幕開けで、明らかにつまずいた。1月1日(月)の仙台ERS戦を81-83で落とし、6日(土)のファイティングイーグルス名古屋戦も57-68と敗北。7日(日)の再戦こそ勝利したが、10日(水)にあった東アジアスーパーリーグ(EASL)のアウェイ戦「ニュータイペイ・キングス戦」も63-67で終わっている。

 さらにオールスターゲーム直後の17日(水)に開催された名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦も75-77の惜敗だった。西地区首位こそキープしていたが、1月に入ってチームとして明らかに苦しんでいた。僅差の試合を落としている負け方も、明るい材料とは言い難かった。

「自分たちの立場を受け入れる」

 琉球を苦しめた最大の要因は強行日程だ。20日の宇都宮ブレックス戦で、68-66と接戦を勝利した直後に、桶谷大ヘッドコーチ(HC)はこう口にしている。

「昨日のミーティングで『自分たちの置かれている立場を、1回ちゃんと受け入れましょう』と話しました。(選手が)『自分らはもっとできる』『もっと勝てる』思っているんですよね。言い訳にしたらダメですけど、スケジュールはやはりタフです。(10日に)EASLで台湾に行って帰ってきましたし、(14日の)オールスターもありました。今村(佳太)と岸本(隆一)は色々なイベントに3日とも出っ放しで、練習をしていません。昨日(19日)は練習をやりましたけど、今日は2時からのゲームだから朝の練習はなしです。そういうのを受け入れて、『こんなチームに負けるはずがない』『接戦するはずない』と思っている自分たちはもうやめよう』と(選手に)伝えました」

 岸本隆一はこう振り返る。

「試合以上に大切に思わなきゃいけない部分があると感じていたので、桶さんがそういう話をしたのも、改めて自分たちのマインドセットを考えるきっかけになりました。ちょっと前まで『バイウィークまで何試合ある』などと考えていたのですが、まず毎試合全力を出すところにもう1回立ち返ろうというのは個人的にテーマとして持っていました」

試合への準備は調整も

岸本は時間が限られた中で「より良い準備」を模索した 【(C)B.LEAGUE】

 琉球は2022-23チームのB1王者で、そこは自信にしていい部分だ。しかし過去の成功体験と現状の「ズレ」が、チームの小さな危機を生んでいた。

「言葉にしていなくても、昨シーズンの優勝が少なからず影響していると思います。いつもなら勝てそうな試合に勝てなかった、自分たちが感覚的に足踏みしていた要因だったかなと感じています。今日は我慢比べの中で試合を取れて、一つ一つの積み重ねが最終的に実を結ぶね……と改めて思えた試合にもなりました」(岸本)

 試合には全力を尽くす一方で、そこに向けた準備は加減も必要だ。

「個人的には、いい意味で諦めている部分もあります。すべてやろうとしてしまうと、本当に僕はパンクしてしまうタイプなので……。あらかじめ『これはちょっと難しいです』ということはもちろんコーチ陣にもちゃんと(共有して)、『できない』という意味でなく、よりいい道があるはずというところを、一緒に模索してもらえています。準備に時間を割けないことが、チームとしてやっぱり懸念されている部分です。だけどその中でどう『いいアプローチ』をしていくかについて、コーチ陣がすごくコミュニケーションを取ってくれています」(岸本)

敗戦の中に成長あり

21日の宇都宮戦は6点差で敗れた 【(C)B.LEAGUE】

 琉球は21日(日)の第2戦で、68‐74と宇都宮に敗れた。第4クォーターの終盤で連続得点を許し逆転される苦い展開だったが、試合後の桶谷HCは「受け入れる」姿勢を強調していた。

「しっかりこの状況を受け入れるのがまず先決です。それをやりながら、一つずつ自分たちが強くなっていくことが重要かなと思います。去年も、もちろん『(西地区)1位を獲らないといけない』というのはありましたけど、とはいえそういうところばかり見て、自分の足元を見ていなかったら一番良くない。去年もまず自分の足元を見てしっかりやり続けることをしたら、流れが来て結局、自分たちに風が吹いてきました」

 宇都宮戦の結果についてはこう述べる。

「今の僕たちのチームが宇都宮さんに1勝1敗って、まったく悪くないって正直思っています。もちろん(宇都宮に)ギャビン(・エドワーズ)選手がいなかったり、今日はフォトゥ選手がいなかったりという中ですけど、ポイントになる比江島選手とニュービル選手はいました。良い部分も悪い部分もありましたけど、とはいえ成長はしているのかなと感じています。この前(17日の)の名古屋戦、(1日の)仙台戦とまったく違う1敗です。今回は成長しながら負けたのかなと思っています」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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