「日本キラー」が千葉ジェッツを救う? 豪代表クックスが見せるクールな攻撃と熱い守備

大島和人

DFと「エナジー」にプライド

手足の長さと動きの鋭さ、読みを生かした守備は強烈 【(C)B.LEAGUE】

 クックス自身は「一番プライドを持っているのはDF、エナジーを持って戦うこと」と述べていたが、確かに守備は攻撃以上のインパクトを感じた。ガードとのマッチアップを苦にせず、相手の選択肢を奪ってしまう「ねちっこさ」は特に印象的だった。相手が強引に突っ込まざるを得ない対人守備で、6日は1試合で2つのオフェンスファウルを奪っている。攻撃ではスマートで無理をしない彼だが、守備では一転して「熱い男」になる。

 クックスはこう説明する。

「大きい割には動ける方かなとは自分も思っています。コーチが事前にスカウティングをして『こういう動きがある』と伝えてもらっていたので、それを生かしてあのときは(オフェンスファウルを)取れました」

 手足の長さやボディバランス、動きの鋭さに加えてコーチから得た情報をすぐ試合に生かせるバスケIQも彼の強みなのだろう。

彼を日本にいざなった縁

パトリックHCは大学時代の彼をリクルートしていた 【(C)B.LEAGUE】

 来日の理由についてはこう述べていた。

「友達がたくさん日本にいて、日本でプレーするのが一番いいと勧めてくれました。千葉ジェッツは素晴らしい組織ですし、JP(パトリックHC)と何回か対戦した印象と、ジョン・ムーニーが昔から知っている選手ということも理由です」

 オーストラリアのW杯代表メンバーでは既にニック・ケイ(島根スサノオマジック)がBリーグでプレーしている。6日の試合で対戦した茨城にもやはりオーストラリア出身のアンガス・ブラントがいた。同郷の選手、過去のチームメイトからBリーグに関する良い印象を耳にしていたようだ。

 パトリックHCとは大学時代からの「因縁」があった。クックスは2018年までアメリカ・サウスカロライナ州のウィンスロップ大でプレーしていた。2018年当時ドイツの「MHPリーゼン・ルートヴィヒスブルク」で指揮を執っていたパトリックはクックスの獲得に動いたのだという。

「ほぼ決まっていたのですが、彼はそのときNBAにチャレンジしようとしていて、(オファーに対して回答する)期限の日はNBAのサマーリーグに出ていました。だから最後は他の選手にオファーをしました。彼の大学は自分の出身地に近くて、結構強いチームでもあったし、前から見ていたんです」(パトリックHC)

 クックスは2018年夏のNBA入りを逃し、ドイツ(ブンデスリーガ)のヴュルツブルクでプロのキャリアをスタートさせた。今回のオファー、交渉についてパトリックHCは関与していないとのことだが、「ウエルカム」だったことは想像に難くない。クックスもパトリックHCに対する好印象を持っていた。

「大学のときは最後の最後まで(契約が)もつれてしまったんですけども、ドイツで何回か対戦する中で『スマートガイ』という印象がありました。自分のバスケIQとフィットして、うまく使ってもらえるのではないかという期待もありました」

ジェッツ浮上の「ブースト」に

 クックスはスモールフォワードからセンターまで3つのポジションをこなし、攻守とも万能性がある。インプットした情報を生かし、なおかつ試合展開を読み、チームのバランスを考えてプレーする「バスケIQ」も高い。そして既にBリーグでプレーしていた仲間たちや、パトリックHCとの「縁」もあった。

 そう考えるとクックスの千葉ジェッツ入りは何かの必然にも思える。その存在はチームの浮上に向けた力強い「ブースト」になりそうだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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