「日本キラー」が千葉ジェッツを救う? 豪代表クックスが見せるクールな攻撃と熱い守備

大島和人

クックスは11月下旬から千葉に合流している 【(C)B.LEAGUE】

 B1の強豪・千葉ジェッツが苦しんでいる。2022-23シーズンは53勝7敗と圧倒的な勝率でチャンピオンシップに進出した彼らだが、今季は主力外国籍選手の移籍や、東アジアスーパーリーグとの掛け持ちによる強行日程もあり成績を落としていた。12月6日の茨城ロボッツ戦を迎えた時点で、戦績は9勝7敗の東地区3位。しかも11月30日(木)の島根スサノオマジック戦で日本代表の原修太と二上耀が負傷し、12月1日(金)の再戦は59-90と完敗を喫していた。ただ、茨城戦は94-72と快勝している。その立役者の一人が新加入のゼイビア・クックスだった。

W杯の日本戦で大活躍

 チームはテコ入れのため、リーグ戦の中断期間に外国籍選手の入れ替えを行っていた。クックスは11月21日に加入が発表され、島根戦から起用されている。6日の茨城戦はホームデビュー戦だった。

 今夏のワールドカップ(W杯)をご覧になったバスケファンならば、彼の名前をご記憶かもしれない。8月29日のW杯1次ラウンド・日本戦ではオーストラリア代表の一員としてコートに立ち、24得点を挙げて109-89の勝利に貢献している。

 オーストラリアはW杯こそベスト8入りを逃したが、東京オリンピックで銅メダルに輝いている世界的な強豪。W杯も登録12名のうち9名が現役NBAプレーヤーという豪華な陣容だった。

 28歳のクックスも2022-23シーズンにワシントン・ウィザーズで10試合プレーした元NBAプレーヤーだが、代表チームの彼は脇役で、日本戦もベンチスタートだった。しかしインサイドショットを量産し、「柔らかいタッチで正確にシュートを決める選手」として印象に残った。日本から見れば「クックスにやられた」印象が強い試合だった。

 日本戦は主にセンターでプレーしていた。ジョック・ランデール(ロケッツ)の負傷でインサイドが手薄になり、203センチ・95キロと細身な彼が代役を担った部分もある。ただ、千葉では全く違うスタイルを見せている。攻撃の効率性はそのままだが、3番ポジション(スモールフォワード)で多彩なプレーを披露。俊敏性や「しなやかさ」を感じる、スキルフルなアタックを見せている。

ホームデビュー戦でも本領を発揮

クックスはW杯の日本戦で24点を決めている 【(C)FIBA】

 6日の茨城戦は23分59秒の出場で13得点、8リバウンドを記録した。60%というシュート成功率はクックスがあまりエゴを出さず、無理なアテンプトを避けていた証明でもあるだろう。ただ前半の流れが悪くなりかかった時間帯、第3クォーターの一気に突き放す時間帯と、勝負どころで貴重なスコアを挙げていた。

 ジョン・パトリックヘッドコーチ(HC)はそのプレーについてこう評していた。

「積極的にファストブレイク(速攻)でプッシュしていました。身体が細長くて、ガードっぽいプレーをします。良いエネルギーを発揮して、彼とD.J.ステフェンズはウイングフォワードとして非常に大事な存在だと思います」

 クックスは相手を背負うのでなく動きながらパスを受け、ときに自ら運び、スムーズにフィニッシュまで持っていくタイプ。左右両手で正確なシュートを打てるところも強みだろう。茨城戦もディフェンスリバウンドから一気にコートを縦断する『コースト・トゥー・コースト』の速攻、コーナーからの3ポイントと多彩な形を見せていた。

 キャプテンの富樫勇樹は新しいチームメイトについてこう述べる。

「僕が思っていた以上に外からのアタックができる選手でした。基本的にインサイドかと思ったら、今日も長い時間3番で出ていました。リバウンドだったり、サイズを生かしたアタックだったり、チームに色んなアドバンテージを与えてくれています」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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