大阪桐蔭の韋駄天・山田がプロ入りした先輩から学んだモノ 敗戦を乗り越え、最後の夏も「平常心で」

沢井史

日本代表候補合宿が刺激に

気持ちを全面に出すこともあるが、大阪桐蔭で最も成長したことは「どんな場面でも平常心でいられる」ことだという 【写真は共同】

 センバツが終わった直後の4月上旬に行われたU18日本代表候補合宿では、一次候補選手として2泊3日の合宿に参加した。

「各チームからうまい選手が集まって、レベルの高い中で練習するのは楽しみがありましたが、真鍋(慧・広陵)くんや佐倉(侠史朗・九州国際大付)くんとか、身体が大きい選手が多くて圧倒されました。実際に練習で色んな選手の動きを見ていたら、鈴木(叫・常葉大菊川)くんのスローイングの良さにも見入ってしまいました」

 多くの選手とコミュニケーションを図る中、同じ外野手で選出された田上夏衣(広陵)は、「自分と似たタイプなので聞いてみたかった」と、普段どういう意識で打っているのかなどを尋ね、野球談議に花が咲いたという。全国の能力の優れた選手たちとの貴重な時間には、刺激しかなかった。

「桐蔭に戻ってからも、みんなに全国の選手はこんなことをやっているよと伝えました」

 全国で目標とされる大阪桐蔭だが、全国の精鋭たちのことは気にならないはずがない。新たな気持ちで夏に向かっていくはずが、春先はケガ人が多く出た上に、エースの前田がコンディション調整のため不在。そのような中でも、どう勝ち切るかが最大のテーマだった。

 春の大阪大会は決勝で金光大阪に1-2と敗れ、20年秋から続いていた府内の連勝が56でストップ。近畿大会も初戦で智弁学園に6-8で敗れた。追い上げムードだった終盤も、なかなか相手を追い越すことができず「自分がもっと仕掛けていかないといけないといけなかった」と悔やんでいた。

 試合をすれば、いつか負けることはある。ただ、大阪桐蔭は負けたことが否応なくニュースになってしまう。府内で2年以上負けなかった、さらに甲子園でも無類の強さを発揮してきた先輩たちの功績ゆえだろう。敗戦から現在の立ち位置を再確認し、前を見つめ直すナインの今夏の足取りにも注目だ。

 山田にこの2年半で最も成長できた要素はどこか尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「どんな場面でも平常心でいられるようになったことです」

 心は熱くても、頭は冷静に――。

 正念場の夏。本気でぶつかってくるライバルを前に、その上を行く山田のアッと驚くプレー、そして成長した姿を、この目にはっきりと焼きつけたい。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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