小1の時、"野球はできない"ほどの大ケガ負った本多雄一 それが這い上がる原動力に
プロ野球という組織
さらに、近年は多くの球団が育成契約での指名を行うため、年によって人数は大小しますが、2022年の場合は、57名の育成契約での指名がありました。
合計130名ほどが、新たにプロ野球の世界に足を踏み入れた、ということになります。
1チーム9人でプレーするスポーツであることを考えれば、大きな数字かもしれません。
だけど、プロ野球の世界には支配下選手登録枠という、各球団70名(育成契約は除く)の上限があります。
枠があるので、入ってきた分は誰かが出ていく必要があります。入団時の華やかさとは打って変わっての静けさで、毎年、多くの選手がプロ野球の世界を去っていきます。多くの場合は入団と退団の間には数年という時間しかない。
プロ野球の世界は、激しい新陳代謝を繰り返す組織。未来の保障が少ない契約の社会たとイメージしてもらえばいいでしょう。
しかも、一軍の試合に出場できる選手数も決まっています。出場選手登録という枠で、これは29人。そして、野手であれば毎日のように試合に出るレギュラー、投手であればローテーションや、セットアッパー、抑えといった一軍の常連はさらに一握りといえます。
このように数字で見ると、プロ野球という世界で一軍選手を続けていくことは、とても狭き道であることが明確になります。
だから、一軍で活躍している選手の多くは、日々たゆまぬ鍛錬を続けています。才能以上にやるべきことをやっていく資質を持った人たちなのだと僕は思います。
でも、そこに至らず去っていく選手の中には、その資質を見失っている選手がいることも事実。
入ってくるのはみんな才能豊かな選手ばかり。
当然です。高校や大学、社会人といったアマチュアだけでなく、独立リーグを含め、輝きを放つ選手は数えきれないほどいます。
その中から、多くのスカウトたちが能力や素質、将来性を吟味し、指名リストに残った強者たちばかり。プロの一軍で通用する何かを持っていると期待されたから、ここにいることになります。
選手としての13年間を終え、コーチに就任し、人を導くことの難しさを痛感しながら日々を過ごしています。
どんな世界でも、うまく人が育てば、組織はうまくいくし、育たなければ衰退していく。便利になった今の時代でも、大事なのは人間力であり、その結束が組織の力になると僕は信じています。
指導者として選手が、華やかな一軍の試合でそれを披露する姿は、うれしい。
そして、そんな経験が僕に指導者としての新しい気づきを与えてくれます。コーチというポジションが今なお、僕自身を成長させてくれています。
そこで、本書では僕が選手生活の中でプレーヤーとして大切にしてきた習慣と、コーチという立場になって得たいくつかの気づきや考え方を書き記してみたいと思っています。
僕は野球一筋で生きてきた人間なので、どうしても野球中心の話になってしまいます。でも、僕が大事にしてきたものは、広い分野で同じことがいえるのかもしれないとも考えています。
もしかするとプロ野球という非常に厳しい世界だからこそ、社会では見えにくい要素か短期間でハッキリ浮き彫りになるかもしれません。
僕がプロ野球選手や、コーチに選んでもらえたのは、続けてきた習慣の結果に過ぎないと思っています。そして、僕が本書を通じてお伝えできるのは、その結果に至るまでのフロセスになるのだと思っています。