阪神・湯浅らに次ぐ逸材は? IPBL加盟リーグのドラフト候補をピックアップ・投手編

データスタジアム金沢慧

今季大躍進を遂げた阪神・湯浅も独立リーグの出身。それに続く候補は? 【写真は共同】

 9月30日(金)と10月1日(土)にリブワーク藤崎台球場で行われる「日本独立リーググランドチャンピオンシップ2022」、さらに10/20(木)に迫ってきたプロ野球ドラフト会議に向けて、前回は過去の指名選手をレビューした。

 今回からドラフト候補選手をピックアップしていく。

独立リーグからの指名は22~24歳の年度の選手が多い

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 前回のコラムでも触れたが、現在の独立リーグはNPBを目指す選手が高卒でドラフト指名されなかった後の進路として主流ではないため、大学や社会人経由の選手が多く、必然的にドラフト指名される選手の年齢層もやや高めになる。ドラフト指名のボリュームゾーンは22~24歳になる年度、特に大卒1~2年目にあたる23、24歳が多い。

 22歳になる年度での指名も多いのは特徴で、この学年は高卒で独立リーグに入った選手、社会人を経た選手、大学を中退して独立リーグで再起した選手など多彩なバックグラウンドを持っている。

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 現在IPBL加盟リーグの各チームに所属する選手を年齢別に見ると、やはり大卒1年目となる23歳の年度の選手が一番多い。2年後の25歳で約半分、その1年後の26歳でまた半分に減っている。27歳以上で現役を続けられるのは限られた選手だけで、確固たる地位を築いた中心選手か、元プロ野球選手、または選手兼任コーチがほとんどだ。

 独立リーグでドラフト指名される選手は24歳以下がメインで、リーグには23~25歳の選手が多い。この年齢帯の情報も頭に入れながら、まずは投手のドラフト候補をみていこう。

奪三振の多い近藤、玉置、芦谷、白川に注目

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 まずは、IPBL加盟4リーグ(四国アイランドリーグplus=IBLJ、ルートインBCリーグ=BCL、ヤマエ久野九州アジアリーグ=KAL、北海道フロンティアリーグ=HFL)の投手を奪三振の多い順に並べた。

 独立リーグ出身の投手はNPBでは基本的にリリーフ要員として考えられるため、奪三振の能力は大きなポイントとなる。今年NPBでリリーフとして活躍している藤井皓哉(ソフトバンク)、宮森智志(楽天)、石井大智(阪神)、湯浅京己(阪神)は独立リーグ時代には主に先発で投げており、彼らは独立リーグで年間通して先発で目立っていれば、NPBでもリリーフで活躍できる可能性があると示してくれた。

 実際、2020年は戸田懐生(徳島→巨人)が奪三振1位、石井が奪三振2位、2021年は藤井が1位だった。藤井に至っては2021年に180奪三振のIBLJ歴代最多記録を打ち立てるなど、独立リーグで先発として実績を残した投手がNPBでも一軍で登板している傾向にある。

まだ20歳と若く、それでいて奪三振数の多い玉置隼翔に注目したい 【写真提供:日本独立リーグ野球機構】


 奪三振数でフィルタリングした上で「奪三振割合25%以上」と、ドラフトに指名されやすい「24歳以下」の2つの条件をつけると、近藤壱来(香川)、玉置隼翔(愛媛)、芦谷汰貴(火の国)、白川恵翔(徳島)が浮上する。特に20歳と若い玉置、左腕という希少性がある芦谷は支配下での指名の可能性も考えられる。

 他には、独立リーググランドチャンピオンシップに出場する鈴木駿輔(信濃)、平間凜太郎(高知)の両エースにも注目したい。

 鈴木は150キロ超の直球だけでなく多彩な変化球を武器にBCLでは2位の奪三振数をマーク。奪三振割合は昨年の16%から21%へと5ポイント改善している。平間は常時140キロ台半ばを計測する直球とナイアガラカーブと称される大きなカーブが持ち味で、IBLJの年間総合優勝を決める「トリドール杯 チャンピオンシップ」の第1戦では8回1失点と好投し、MVPを獲得した。

 鈴木が24歳、平間が28歳になる年度で、NPBの各球団が即戦力として評価するか注目だ。

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 次に、より若手を抽出するために20歳を迎える学年以下の投手で絞り、奪三振トップ10を一覧化した。

 今年は高卒1年目よりも2年目にあたる学年が目立っており、この中で注目したいのは玉置に加えて野里慶士郎(高知)、長尾光(埼玉武蔵)、西濱勇星(群馬)だ。

 特に西濱は奪三振割合が16%で与四球割合が11%と成績は今ひとつだが、最速150キロ台半ばの速球が魅力の投手で、9月13日に行われた巨人三軍との試合でBCリーグ選抜として出場し1イニングを3人で抑えてスカウトへアピールした。

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 リリーフ投手からも指名候補を挙げるため、奪三振割合が突出している投手もピックアップしておく。昨年、独立リーグから唯一支配下で指名された石森大誠(火の国→中日)はリーグ戦での奪三振割合が45%とほぼ2人に1人から三振を奪う圧倒的な成績を残しており、注目度が高かった。

 今年の奪三振割合をみると石森ほどの突出した選手はいないが、テイクバックの小さいフォームから140キロ台後半の速球と縦に曲がるスライダーを投げる谷井怜央(愛媛)、ホップ方向への変化量が多そうな速球が魅力の藤原直也(徳島)、打者130人に与四球1と制球力の高い左腕の大木稔貴(徳島)と個性のある投手が並ぶ。

 短いイニングに全力を出せるため、リリーフ投手の成績は先発と比べて良くなりやすい。これは独立リーグだけに限らないが、先発以上にリリーフを専門としていた投手についてはNPB以外の成績をもとに評価することが難しいと感じる。石森もいまのところNPBでは一軍登板がなく苦戦しており、各スカウトや球団編成部がリリーフでの起用が多い独立リーグの投手を今年はどう判断するか注目したい。

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著者プロフィール

データスタジアム株式会社 フェロー 主にプロ野球各球団でのデータ活用のサポートやメディア出演多数。 NHK「ワールドスポーツMLB」、「球辞苑」やAbemaTVのプロ野球中継でデータ解説役として出演。

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