「秋春夏連覇」を狙う大阪桐蔭 絶対王者がチャレンジャーとして挑む夏

センバツLIVE!
 今年の夏の甲子園で優勝する高校は?

 高校野球ファンにそんな質問をぶつけると、多くの人が「大阪桐蔭」の名を挙げるだろう。今年の選抜大会。大阪桐蔭は決勝まで3試合連続2桁得点を奪うなど圧倒的な打力を武器に勝ち上がった。近年は当たり前のように甲子園に出てくる。自他ともに認める超強豪校だ。

 そんな高校球界の横綱が今年、ある偉業に挑戦している。それは大阪桐蔭がまだ成し遂げたことのない秋春夏連覇。言い換えれば、高校野球の全国大会完全制覇とも言える。そんな偉業がかかった夏を前に、今年の大阪桐蔭の道のりを振り返る。

「真の挑戦者」になっている理由

今春の選抜大会で優勝した大阪桐蔭 【センバツLIVE!】

 夏の大阪大会直前の7月上旬。大阪桐蔭と高知の練習試合がメディアに公開された。午前9時から気温30度を超える猛暑のなか、自慢の打線が大爆発して11-6で快勝。暑さも相手も圧倒する戦いぶりに王者の風格すら漂ったが、それ以上に驚いたのは試合後の取材だった。

 チームをまとめる星子天真主将(3年)、2年生ながら選抜決勝で先発した前田悠伍投手、百戦錬磨の西谷浩一監督ら大阪桐蔭のメンバーたちは次々と「秋春夏連覇」を口にした。そこに、驕りや慢心は存在しない。過去の先輩たちも成し遂げたことのないことをつかみ取ろうと、全員が「挑戦者」になりきっていた。

 大阪桐蔭は過去2度、甲子園春夏連覇を達成しているが、「秋春夏連覇」には届いていない。あの藤浪晋太郎投手(阪神)や森友哉捕手(西武)がいた2012年、「最強世代」と騒がれた根尾昂投手(中日)や藤原恭大選手(ロッテ)らを擁した2018年でも到達することができなかった。

 唯一、松坂大輔投手が活躍した1998年の横浜(神奈川)だけが「秋春夏連覇」を達成している。史上2校目の伝説へーー。今年の大阪桐蔭はまさに挑戦中だ。

一気に春の頂点へ

選抜初の1イニング2本塁打を放った大阪桐蔭の伊藤櫂人選手 【センバツLIVE!】

 2021年夏の甲子園。大阪桐蔭は同じ近畿の近江(滋賀)に敗れた。同時に今年のチームがスタート。夏の頂点に立つ難しさを肌で感じ、秋の大阪大会に臨むことになる。

 秋の大阪大会は1回戦から打線が爆発。4回戦の東大阪大柏原戦は5-4、準決勝の履正社(大阪)戦は5-3と接戦も勝ち切って、さらに力をつけた。

 近畿大会でもその勢いは増すばかり。全4試合で5得点以上を奪い、失点はわずか2。準決勝の天理(奈良)は9-1、決勝の和歌山東戦は10-1と全く寄せ付けない。前評判通りの実力を発揮して、近畿代表として明治神宮大会に進んだ。

 この明治神宮大会。意外にも大阪桐蔭は優勝したことがなかった。そんなジンクスを今年のチームが打ち破る。

 1回戦の敦賀気比(福井)を8-4、準決勝の九州国際大付(福岡)を9-2、決勝の広陵(広島)戦は11-7。主軸に次々とホームランが飛び出し、複数投手がそれぞれ持ち味を発揮して安定した試合を作る。理想的な展開で、一気に初優勝まで駆け上がった。

 春の選抜の大会も文句なしの優勝候補。そんなプレッシャーは感じないのか、1大会で11本塁打の大会新記録を樹立。94回の選抜大会の歴史で初となる記録も飛び出した。準々決勝の市和歌山戦で、伊藤櫂人選手(3年)が1イニング2本塁打を放った。決勝も近江に18-1の圧勝。大阪桐蔭1強、そんな印象をつけてしまうほどの優勝だった。

初めての屈辱

練習する大阪桐蔭の2年生左腕・前田悠吾投手 【センバツLIVE!】

 新チーム発足から公式戦29連勝。明治神宮大会を初制覇し、春の選抜大会を圧勝。春の近畿大会も順調に決勝まで駒を進めていた。

 決勝の相手は智弁和歌山。先発のマウンドには2年生の前田悠伍投手が上がった。

 その1回。智弁和歌山にソロ本塁打など3点を先行される。その後はゼロ行進を続けるが、打線に1本が出ない。2-3で敗れ、ついに土がついた。

 公式戦30試合目。今年の大阪桐蔭が公式戦で初めて同じ高校生に敗れた。いつも明るく取材に対応してきた星子天真主将は「負けたことは本当に悔しい」とうなだれた。名将の西谷浩一監督は「この負けがこのチームにどういう影響を及ぼすのか。しっかりやっていきたい」と語った。

 たかが1敗かもしれない。しかし、それは常勝を宿命づけられ、それを実行してきた今年の大阪桐蔭にとっては大きな1敗とも言える。この負けを糧に4年ぶりの夏の頂点に立つことができるのか。今年のチームが目指している「秋春夏連覇」を達成することはできるのか。絶対王者が「チャレンジャー」として挑む夏に注目したい。

(企画構成:センバツLIVE)
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