水沼 貴史の視点:最後は割り切って最低限の結果を確保。試合を重ねるごとに修正できた今回の遠征で得たものは大きい【ACL 全北現代vs横浜FM】

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激闘が繰り広げられるAFCチャンピオンズリーグ。グループステージ突破を狙うJリーグ勢はアジアの難敵相手にいかなる戦いを見せたのか。DAZN解説陣が鋭い視点で試合のポイントを分析するとともに、グループステージの6試合を総括する。

今日は試合にスムーズに入れて、先制点も取れましたが、その良い流れに乗れませんでした。これは今シーズンのJリーグでもよくあることで、同点とされた時は、大丈夫かなと思って観ていました。それでも結果的に引き分けで終えて、首位をキープできたので、すごくよかったと思います。アタッキングフットボールを掲げるチームですが、最後は時間を使いながら、グループを突破することにフォーカスしてやれていましたね。

最後は割り切っていたと思います。もちろん、相手にすごく大きな穴があれば、そこは突いていくべきですが、引き分けでも勝ち抜けが決まる状況だったので、勝利を追い求める必要はなかった。最終的に、うまく運べたのではないでしょうか。

前半はちょっとイライラするような展開になっていました。ホアンアイン ザライとの第1節や、全北現代との第2節を思い出すような時間帯もありましたね。シンプルに高さを使われて、それにうまく対応できない時もあって、嫌な感じもしました。それでも、失点後はしっかり耐えて、それ以上の失点を許さなかったので、よかったと思います。

今日の試合では、藤田(譲瑠チマ)が目立ちました。喜田(拓也)は3試合連続で先発したので、ちょっと疲労感が見えました。そのぶん、藤田がリズムをつくり、1点目に繋がるアシストも素晴らしかった。相手のパスを巧みに狙ってインターセプトし、ダイレクトで見事なラストパス。試合全体で観ても、テンポを生み出せる選手だなと、あらためて思いましたね。彼はワンタッチがとても上手いし、縦にズバッと入れるパスもいいですよね。ショートパスはほとんど浮かないですよね。そういう蹴り方ができる素晴らしい技術を持っています。

アンデルソン ロペスは、先制点のほかに、あと2回ぐらい決定機があったので、それらを決めていればパーフェクトでした。とはいえ、先制点はチームに大きな勇気を与えてくれました。彼自身、レオ セアラとの併用が続いているので、個人的にも得点が欲しかったでしょう。

一方、エウベルと宮市(亮)に結果が出なかったのは、すごく残念です。それ以外のアタッカーでは、(水沼)宏太もアシストがあったし、マルコス(ジュニオール)もPKを決めているし、レオ セアラや西村(拓真)もゴールを奪っています。

グループ全体を通して言えば、GK高丘(陽平)が好印象でした。今日は股間を抜かれて失点し、そのピンチも自身のパスミスからでしたが、気にしなくていいと思います。6試合を通して、しっかりと仕事をしてくれました。巧みなセーブでゴールを守るだけでなく、ビルドアップの起点としてもよかった。今日は1点を取られたけど、その前の3試合は完封しましたし、大きく成長していますよね。

守備陣は毎試合、メンバーが変わっていたので、なんともいえないところがありますが、岩田(智輝)が最終ラインの中央でも見事な働きを見せてくれました。ボランチやサイドバックもできる選手で、シドニー戦ではとどめのアシストもマークしている。多機能性の鉄人というか、彼もすごく頼りになりますね。

それから、ボランチでは10代の山根(陸)、サイドバックでは角田(涼太朗)ができるところを見せてくれました。いろんなポジションに良い選手が台頭してきているのは、とても素晴らしいことですね。

いろいろな課題が出た大会でしたけど、試合を追うごとに修正していって、だんだんと良くなっていった。そして今日はグループステージの集大成的に、やるべきことをやれた。過酷な環境やスケジュールの中、一筋縄ではいきませんでしたが、この遠征で得たものは大きかったのではないでしょうか。

蒸し暑いコンディションに少しずつ身体が順応できたのもよかったですよね。汗のかき方に慣れ、水分補給のタイミングも掴んでいき、(ケヴィン)マスカット監督が言っていたように、選手たちの状態が上がっていった。気候だけでなく、ボールやピッチの状態にも慣れていきました。

他のグループでは川崎Fが敗退し、浦和には負傷者が出るなど、どこも大変だったはずです。ただマリノスが入ったグループも、本当に難しかった。初戦ではホアンアイン ザライがこれほどまでにやるのかと、衝撃を受けました。次の全北戦は敗北。シドニー戦で盛り返して、次のシドニー戦でもっとよくなったかと思ったら、ホアンアイン ザライ戦は意外と手こずりました。

このグループ、いや、この大会の本戦に出てくるチームは、やはり侮れません。アジア全体のレベルも上がっています。さまざまな問題を抱える中国はさておき、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、香港といった国と地域から、良いチームがどんどん出てくるようになった。それは面白いし、切磋琢磨する意味で良いことですよね。さらに言えば、決勝でしか対戦しませんが、西地区にも強豪が揃っています。難易度は確実に増しています。でもそのぶん、以前にも言いましたが、優勝できたときの喜びは大きいはずです。

決勝トーナメントについては、まずは組み合わせを待ちましょう。開催地がどこになるか、そして日本勢と対戦するかもしれない(※ラウンド16のカードが発表され、横浜FMは神戸との対戦が決定した)。8月までいったんACLを忘れてもいいかもしれませんね。Jリーグも上位は混戦模様なので、サポーターのみなさんにも、まずはそっちに集中してもらって。

サポーター、選手、スタッフ、みんなが大変だったと思いますが、グループを突破できて本当によかったと思います。今はほっと一息をつけることが何よりですね。

最後は割り切っていたと思います。もちろん、相手にすごく大きな穴があれば、そこは突いていくべきですが、引き分けでも勝ち抜けが決まる状況だったので、勝利を追い求める必要はなかった。最終的に、うまく運べたのではないでしょうか 【©J.LEAGUE】

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