元王者・狩野亮、本命種目でメダルならず コロナ禍で「世界との距離」測れず浮彫りに

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2大会ぶりのメダルを目指した狩野だが、得意種目での獲得とはならなかった 【写真は共同】

 得意の種目でメダルを逃したが、選択に悔いはない。パラリンピック5大会連続出場のベテランは冷静に結果を受け止めていた。

 北京パラリンピック3日目の6日、アルペンスキーのスーパー大回転が行われ、女子座位の村岡桃佳(トヨタ自動車)が2日連続の金メダルを手にした。また、女子に続いて行われた男子では座位の森井大輝(トヨタ自動車)が今大会2個目の銅メダルを獲得。高速系種目(滑降、スーパー大回転)のスペシャリスト、狩野亮(マルハン)は途中棄権に終わった。

前日の滑降では7位と表彰台を逃していた

狩野は宣言通り攻めの姿勢を貫くもコース中盤で転倒、途中棄権という結果に終わった 【写真は共同】

 スーパー大回転は滑降と同じく、一発勝負で行われる。

 昨日に引き続き、晴天に恵まれた延慶会場の国家アルペンスキーセンター。風も時折軽く吹く程度で、選手にとっては滑りやすいコンディションとなった。

 狩野は全体の2番滑走。前日の滑降ではまずまずの手応えも、7位と表彰台を逃していた。だからこそ、得意種目でメダルを獲得するために、より厳しいライン取りを選択すると覚悟を決めていた。

「今日はスタート順が早かったですし、情報がない中でも攻めていくしかないと思っていました。『のるかそるか』と思っていったので、どんな結果でも納得はしています」

 腹をくくってゲートから飛び出した狩野。心の中で決めた通り、序盤は厳しいラインを突いていき、プラン通りのレース運びで進める。中盤、他の選手が速度を落とし入っていくポイントで、宣言通りの攻めの姿勢を貫いた。その結果わずかにタイミングが合わず、転倒となってしまった。

「僕にとっては(北京は)難易度の高いコースなんですよね。転倒するか、なんとか滑り切ってタイムを出すか。ギリギリだった思います。昨日はダウンヒル(滑降)を滑り切れたので、今日はチャレンジだなと思っていました。悔いはないですね」

3連覇を目指して挑んだ4年前はメダルを逃す

3連覇を目指した18年平昌大会ではメダルを逃す結果に終わった 【写真は共同】

  北海道出身の狩野は父親の影響もあり、物心がつく前からスキーを始める。小学3年生の時に交通事故に遭い、脊髄(せきずい)を損傷。下半身に麻痺(まひ)が残る障害を抱える。中学1年生の時に開催された1998年の長野パラリンピックを見たことがキッカケでチェアスキーを始めた。

 パラリンピック初出場は2006年トリノ大会。結果は大回転で27位と惨敗だった。先輩の森井が同種目で銀メダルを獲得し、表彰台にのぼる姿を見て「これまでの努力では追いつけない」と4年後に向けて一念発起する。

 文字通り“チェアスキー漬け”の日々を送った狩野は、10年バンクーバー大会の滑降で金メダルを獲得すると、続く14年ソチ大会では滑降とスーパー大回転の2冠を達成。冬季パラリンピックでは日本人初となる、2大会連続の金メダルという快挙を成し遂げた。

 そして、3連覇を目指して挑んだ4年前の平昌大会。気温が上がった雪面に適応できず、5種目中3種目で途中棄権とミスが相次いだ。金メダルはおろか、まさかのメダルを逃す結果に終わった。

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