村岡桃佳「攻めの滑り」で掴んだ金メダル “二刀流”生かし、アクシデントを乗り越える

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大会初日、アルペンスキー滑降の女子座位で村岡桃佳が金メダル獲得。日本勢メダル第1号となった 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 4年前から立場が変わり、追う側から追われる側へ。重くのしかかっていた重圧から解放されたのか、日本の若きエースは、喜びより安堵(あんど)の表情が印象的だった。

 北京パラリンピック競技初日の5日、国家アルペンスキーセンターで滑降種目が行われ、女子座位の村岡桃佳(トヨタ自動車)が金メダルを獲得した。また、女子に続いて行われた男子座位の森井大輝(トヨタ自動車)が3位に入り、日本チームに勢いをつける好スタートを切った。

 日本勢メダル第1号となった村岡。ゴールした瞬間、左手を突き上げて喜びを表現した。5種目あるアルペンスキーだが、滑降は北京パラリンピック最初の種目。その後の日本チームの流れを左右する大事なレースでもあった。4年前の平昌パラリンピックでは、金メダルを含む計5個のメダルを獲得。今大会は日本選手団の主将にも抜擢(ばってき)され、本人が意識をしなくても、日本のエースにのしかかっていたプレッシャーは相当なものだっただろう。

「レースまではめちゃくちゃ不安でしたが、ゴールして嬉しさと安心感がこみ上げてきました。日本選手団の主将として何ができるのかと考えたときに、自分がメダルを獲得して日本チームに勢いをつけられたらと思っていたので、実現できて嬉しく思います」

「鬼門」の直角カーブを冷静に対応

途中棄権が相次いだ難易度の高い北京のコースで「攻めの滑り」を貫いた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 同種目の男子座位で銅メダルを獲得し、5大会連続のメダリストとなった森井大輝(トヨタ自動車)が初めて試走した際、思わず「度肝を抜かれた」と明かすほど、これまでのパラリンピックと比べても難易度が高い北京のコース。

 スタートしてすぐに急斜面があり、緩斜面に入ったと思ったら「鬼門」の直角カーブが選手たちを待ち受ける。そこから落ち着く暇なくすり鉢状のコースがあり、2度目の直角カーブに入っていく。滑降種目は時速100キロを超え、一歩タイミングを間違うと転倒やコースアウトに繋(つな)がる。そういったアクシデントを避けるため、一瞬たりとも気が抜けないコースとなっている。

 そんなパラリンピック屈指の難コースを目の前にしても、村岡は「絶対金メダルを取りにいく」と気持ちを固めていた。そのなかで、「守りの滑り」はしないと心に誓った。

「久々のダウンヒル(滑降)のレースでしたし、大会前のトレーニングランをする中で、金メダルを取りたいという気持ちがどんどん大きくなりました。どうしても今日、金メダルを取りたかったです。そのためには『守りの滑り』ではなく、『攻めの滑り』をしないと勝てないなと思っていました」

 熱い気持ちを抱えながらも、「鬼門」の直角ターンや難所を冷静に対応。2大会連続となる金メダルを獲得した。

「ポイントの90度ターンからのすり鉢もスピードに乗って繋(つな)げることができたと思います。大きなミスもなく、自分のベストな滑りができました」

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