【フィギュアスケート】北京2022:カップル競技が強化された日本、団体でメダルを獲得

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【(C)Getty Images】

※女子フィギュアスケート、およびフィギュアスケート団体戦の成績は全て暫定扱いとなる。

団体:弱点を克服し、ついにメダル獲得

男子、女子、ペア、アイスダンスの4種目全てに最高のメンバーを送り込み、全てのプログラムで上位3位以内を確保したROCが、フィギュアスケート団体圧倒的な強さを見せつけた。アメリカ合衆国の65点、日本の63点を上回る合計74点を獲得し、参加10チームのトップに立った。

しかもショートプログラム(SP)とフリースケーティング(FS/アイスダンスはリズムダンスとフリーダンス)に、それぞれ異なる選手/組をエントリーする強豪国も多い中で、ROCは全種目を欧州選手権チャンピオンのみで戦い通した。女子シングルで1位の選手に与えられる10点満点をきっちり2つそろえると、現役世界チャンピオンでもあるペアのアナスタシヤ・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組は、SP2位、FS1位で19点を手に入れ、同じく世界チャンピオンのアイスダンス組ヴィクトリヤ・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフは、2本とも2位で18点を加えた。

世界最高峰ぞろいのROCの中で、唯一の弱点と見られていた男子さえ、マルク・コンドラチュクが渾身の演技をやり遂げた。SP3位で8点、FS2位で9点の合計17点を記録し、チーム内の仲間たちと喜びを分け合った。

4種目に一切の穴がなかったROCに対して、米国は男子とアイスダンスの2種目で、可能な限りの得点を稼ぎだした。団体1種目の男子SPで、世界選手権3連覇中のネイサン・チェンが真っ先に10点をもぎ取ると、アイスダンスのマディソン・ハベル/ザカリー・ダナヒュー組がリズムダンスで、マディソン・チョック/エヴァン・ベイツ組がフリーダンスで、やはり10点を射落とした。

また男子FSでヴィンセント・ジョウが3位で8点と、期待通りの順位を獲得。4種目で合計65点を計上し、団体が初めてオリンピック種目として採用された2014年から3大会連続で、メダルを持ち帰ることになった。

一方で日本はソチ2014も、平昌2018も5位に終わっていた。男女シングルは上位に食い込むものの、カップル競技で得点が伸び悩んできた。

これまで同様、シングルは文句なしに強かった。男子も女子も、4人全員が、現実的に望める限り最高の順位に入った。つまり宇野昌磨はチェンの次点の2位で、鍵山優真はトップで、合わせて19点を獲得。女子は、樋口新葉と坂本花織がそれぞれ2位で18点を得た。

過去2大会と違ったのは、世界と肩を並べられるペアを有していたこと。異なる2人のパートナーとともに、すでに2度のオリンピックを戦ってきた木原龍一は、過去2回の団体ではいずれもSP8位、FSは最下位の5位に沈んできた。

ところが、わずか2年前にカップルを結成した三浦璃来とともに、予想をはるかに上回るような快進撃を見せる。SPでは自己ベストを塗り替えたばかりか、4位という素晴らしい結果を出した。FSではさらなる快挙を達成した。自己ベストを4点以上更新する見事なパフォーマンスで、2位に飛び込んだのだ。三浦/木原組はSPで7点、FSで9点と、極めて高い得点を勝ち取った。

また、アイスダンスは小松原美里/小松原尊組がリズムダンス7位と健闘し、フリーダンスの5位と合わせ10点を計上。持てる力を結集して63点を勝ち取った日本チームは、ついに初めての団体メダルに輝いた。

ペア:三浦璃来/木原龍一組、日本初の入賞という快挙

フィギュアスケート種目全体の「トリ」を、ペアが飾ったのは、地元・中華人民共和国ペアの金メダル獲得を期待したからに違いなかった。そんなとてつもなく大きなプレッシャーを跳ねのけて、スイ・ウェンジン/ハン・ツォン組は、技術面でも芸術面でも最高水準のプログラムを披露した。

団体で記録したばかりの歴代最高得点を、SPでは早くも塗り替えた。ただしSP2位エフゲーニヤ・タラソワ/ウラジミール・モロゾフ(ROC)との得点差は、たったの0.16。平昌2018でもSP首位につけながら、4位につけていたアリョーナ・サフチェンコ/ブリューノ・マッソ組に6点近い差をひっくり返されたスイ/ハン組にとっては、決して安心できる状況でなかった。

だからこそFSは、大技で勝負をかけた。冒頭のツイストで、4回転ツイストにトライ。基礎点こそ3回転ツイストより3.3点高いものの、もしも失敗したら取り返しのつかないほどの失点を食らう危険性も秘めていた。そんな極めて難しいエレメンツを、スイ/ハン組は高く、美しく決めた。

この4回転ツイストがなければ、おそらくスイ/ハン組は金メダルを取っていなかっただろう。プログラム中盤のサイド・バイ・サイドの3回転サルコウが、ダウングレード判定となる思わぬ失点があり、2位タラソワ/モロゾフとの最終的な得点差は、わずか0.47点でしかなかった。

FS「明日に架ける橋」を詩的に、力強く滑り切ったスイ/ハン組は、祖国のファンたちの前で、チャンピオンになった。合計239.88点で歴代最高記録を塗り替え、中国フィギュア界に、バンクーバー2010以来史上2つ目となる金メダルをもたらした。

平昌2018ではSP2位から4位に陥落したタラソワ/モロゾフにとっても、悲願のメダル獲得。若い頃から定評の高かったペアエレメンツの正確さはもちろん繊細で叙情的、2つの珠玉のプログラムは、演技構成点で高い評価を受けた。

世界チャンピオンのアナスタシヤ・ミーシナ/アレクサンドル・ガリャモフ組(ROC)は、初めてのオリンピック挑戦を銅メダルで終えた。高い身体能力を武器に、難度の極めて高いエレメンツを次々と決め、FSの技術点だけなら全体の首位だった。

日本の三浦璃来/木原龍一組は、SPで手痛いミスを犯した。サイド・バイ・サイドの3回転トーループで、三浦が2回転しか飛べず、3点近く点数を失った。ただしそれ以外のエレメンツは全て加点の付く出来。8位でFSへと進出した。

FSでも決してミスがなかったわけではない。2度のサイド・バイ・サイドは、いずれも回転不足と判定された。また、3回転ツイストやデススパイラルで、レベル4が取れなかった。一方では難しい工夫が凝らされたリフトや、スロージャンプの完璧な着地で、得点を伸ばした。なにより風を感じるほどのスピードと、見る者の心を引きつけて離さない表現力は、高い演技構成点に反映された。

団体でSPの自己ベストを更新した三浦/木原組は、個人戦ではFSとトータルで自己ベストを更新。FS141.04点、合計211.89点で、日本ペアとしてはオリンピック過去最高位の7位入賞を果たした。FSだけなら世界5位と、まさに快挙だった。

アイスダンス:小松原美里/小松原尊組はフリーダンスに進めず

平昌2018での悪夢は、きれいさっぱり吹き飛ばした。4年前に取りそこなった金メダルを、今度こそその手につかんだ。ガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロン組(フランス)が、ついに自分たちに唯一足りなかったタイトルを手に入れた。

ステップやターンの正確さが要求されるリズムダンスでも、その高い創造性は光った。切れのあるストリートダンス「ワッキング」を、クールに氷上で再現。得点90.83点で、自らが過去5度塗り替えてきた世界最高得点を、あらためて更新した。

フリーダンスの「エレジー」は、もはや美しい1枚の絵画のようだった。4つのエレメントが出来栄え点満点の評価。また、演技構成点でも「構成」で10点満点をたたき出し、ほか4項目も限りなく10点に近かった。フリーダンスに関しては自己ベストにはわずか0.43点及ばなかった。それでも136.15点という、圧倒的な点数を出した。合計226.98点は、やはり2人にとって6度目の歴代最高記録だった。

世界選手権4勝、欧州選手権5勝、グランプリファイナル2勝……というそうそうたる経歴に、ついにオリンピック金メダルも加わった。パパダキス/シゼロン組にとっては平昌2018の銀に続く、2大会連続のメダル獲得であり、フランスにとってはソルトレークシティ2002以来20年ぶりの金メダルだった。

ヴィクトリヤ・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフ組(ROC)は、優美で、幸福で、そして楽しいパフォーマンスで銀メダルに輝いた。前パートナーとソチ2014で団体金・個人銅を手にしているカツァラポフにとっては、8年越しの成功だった。

今季限りの現役引退を決めているマディソン・ハベル/ザカリー・ダナヒュー組(米国)は、うれしい銅メダルとともに、人生最後のオリンピックを締めくくった。日本の小松原美里/小松原尊組はリズムダンスで22位。上位20人に入れず、フリーダンスには進出できなかった。
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