母国での五輪を戦う優勝候補ペア、スイ/ハン 会場の熱い期待を受け、ショート首位で金メダルに向かう

沢田聡子

ROC3組とスイ/ハンが滑った最終グループ

僅差でスイ/ハン(中国)ペアに迫る2位につけたタラソワ/モロゾフ(ROC)ペア 【写真は共同】

 最終グループの4組は、ROC3組の中にスイ/ハンがただ一組混じるという構成になっていた。二番目の滑走順となるスイ/ハンが登場すると、会場中から拍手と声援が降り注ぐ。貴賓席かと思われる最上段の座席で立ち上がって手を叩く男性の姿が見え、ボランティアたちも通路から一斉に拍手を送る。「加油!加油!」という声と共に中国国旗が振られ、今までのフィギュアスケート競技の中で最も地元・中国の熱を感じる雰囲気の中、スイ/ハンはスタート位置についた。

 スイ/ハンのショートは、『ミッション・インポッシブル』のオーケストラバージョンを使用する。黒いシックな衣装の二人が最初の要素となるトリプルトウループのソロジャンプをしっかりと決めると、大歓声が起こる。男性が女性を投げるスロージャンプの3回転フリップには2.50の加点がつき、続く3回転のツイストリフトもGOE2.40と高い出来栄え点を獲得。すべての動作に気迫があふれ、地元の期待に全力で応えようとする二人の思いがひしひしと伝わる。スピン・ステップでは、当然のようにすべてレベル4の評価を得ている。演技構成点では満点の10点も散見され、世界最高得点となる84.41というハイスコアも当然と思える、素晴らしいプログラムだった。

 会場の熱烈な後押しを受けたライバルが高得点を出した直後に滑走することになったタラソワ/モロゾフだったが、こちらもさすがと思わせる強さをみせる。現代音楽となるフィリップ・グラスの楽曲を使用するプログラムはベテランらしい味わいのあるもので、二つ目の要素となるトリプルツイストリフトには3.00という高い加点がついた。こちらも演技構成点に10点がいくつかつく完璧といえる演技で自己最高得点を更新する84.25を得、スイ/ハンを0.16という僅差で追う2位につけている。さらに3位につけたアナスタシア・ミーシナ/アレクサンドル・ガリアモフも自己ベストとなる高得点82.76をマークしており、ペア・ショートは上位3組がそろって自己最高得点を更新するハイレベルな展開となった。

「オリンピックという大舞台を楽しみたい」

採点待ちのときに両手でハートマークを作るスイ/ハン(中国)ペア。オリンピックを楽しみたいと話す 【Photo by Justin Setterfield/Getty Images】

 ハンは「私たちは、母国開催のオリンピックで最善を尽くしました」と語っている。

「これは、新しい出発だといえます。明日のフリーに向けて、よい土台ができました。私たちはちゃんと準備をして、オリンピックという大舞台と、それらがもたらすさまざまな感情を楽しみたいと思います」

 スイも、会場の雰囲気を楽しんでいたことを言葉にした。

「世界最高得点を出すことよりも、氷の上で喜びを感じ、そして観客や審査員、私たちの競技を見ている人たちを驚かせたかったのです」

「最終グループで滑走したカップルの中で、オリンピックの個人戦でのメダルを獲得しているのは私たちだけでした。私たちの原点はここにあり、それを基盤にして良いショートプログラムを演じることができました。フリーではよりハードにあらゆる要素に取り組み、競技を楽しみながらベストを尽くしたいです。そして、どの色のメダルを獲得するかは、他に任せます」と続けた。

 2018年平昌五輪では2位だったスイ/ハンは、地元の五輪で悲願である金メダル獲得を目指している。自らの目標である五輪での優勝を母国で果たすためには大きな重圧を乗り越える必要があるが、それを成し遂げた時の喜びは格別だろう。スイ/ハンは4年前の雪辱を果たし、母国での五輪をハッピーエンドに導くため、フリーに挑む。

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著者プロフィール

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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