決勝進出の決め手は「HT後の1投目」 近江谷杏菜がロコ・ソラーレの快挙を分析

竹田聡一郎

スイスとのリベンジマッチとなった準決勝を制したロコ・ソラーレは、初となる決勝進出を決めた 【Photo by Lintao Zhang/Getty Images】

 18日、北京五輪のカーリング女子準決勝が行われ、2018年平昌五輪銅メダルの日本代表「ロコ・ソラーレ」は、前日の1次リーグで敗れたスイスを8-6で下した。世界選手権2連覇中の強豪との雪辱戦を制した日本は、史上初の五輪での決勝進出を決めると同時に、今大会での銀メダル以上を確定させた。

 準決勝進出を懸けた大一番でスイスに完敗。そして、他国の結果によってかろうじてトーナメントに駒を進めたロコ・ソラーレだったが、この日は何か吹っ切れたかのように会心の試合運びを見せた。優勝候補大本命に対して、五輪の準決勝という舞台で勝利できた要因はどこにあったのか。北京五輪代表決定戦で大接戦を繰り広げたフォルティウスのセカンド・近江谷杏菜さんに、準決勝の雌雄を決したポイントと決勝への展望を語ってもらった。

敗戦を引きずらずにフロントエンドが流れを作った日本

前日に負けたスイスとの再戦では気持ちを切り替えた日本。特に序盤はフロントエンドの仕事ぶりが光った 【Photo by Lintao Zhang/Getty Images】

――スイスとの連戦での準決勝、世界選手権や五輪などの長丁場の大会では負けた相手との再戦で戦術面で変化をつけることはあるのでしょうか?

 負けた要因にもよりますね。ショットセレクションの部分で大きな問題がなく、相手のショットが自分たちを上回った、または自分たちにミスが出てしまった。そんな敗因であれば、アイスやストーン(石)、シート(試合コート)の情報をもう一度、チームで共有して集中力を持って臨む感じです。あくまで私の場合ですが、僅差で惜敗するよりもしっかり力負けしたほうが切り替えやすいですね。開き直ったほうがゲームには入りやすい。勝っているチームのほうが再戦にやりにくさを感じるケースもあると思います。

――そういう意味では一度は敗退も覚悟したロコ・ソラーレだけに、うまく切り替えられたように見えましたか?

 そうですね。1エンド目でリードの吉田夕梨花選手の1投目から躊躇なくハウス(円)内に入れていきました。すぐに相手にテイクアウト(相手ストーンをはじき出すショット)されてしまうのですが、アイスの状況を探りながらの展開は定石ですので、いつも通りの入りができていたと思います。特にロコ・ソラーレの場合は、ラウンドロビン(総当たりの予選)でショット率1位の夕梨花選手が序盤からしっかりセットアップ(ストーンの配置による作戦の組み立て)を続ける強みをしっかり出せていました。

――1エンドは両軍探りながらのブランク(両チーム無得点)に終わりますが、2エンドで夕梨花選手がセンターガード(味方のストーンを守るために中央に置くストーン)をふたつ置き、相手のミスが出たところで鈴木夕湖選手がすかさずハウスに「強い石」を作ります。

 やはり夕梨花選手が安定してストーンを置いてくれるので、2エンドをはじめ多くのエンドで先手を取れていたと思います。リードのところで少しでもアドバンテージができると、セカンドはそのセットアップをより強固にするためのショットを狙えます。

 一方でリードのところでズレがあるとセカンドはそのズレを挽回するショットが求められてしまいます。リードの良し悪しでセカンドの役割が変わりますね。この試合でのロコ・ソラーレはフロントエンド(リードとセカンド)でアドバンテージを積み上げる戦い方ができてきました。スイスにとっては後攻でもガードストーンを外すなど後手に回らないといけない。序盤はそんな攻防でした。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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