4年越しの大舞台で、トリプルアクセルを決めた樋口新葉 フリー『ライオンキング』では完璧な滑りを目指す

沢田聡子

4年間の思いがこもったトリプルアクセル

北京入り後、樋口は本調子ではなかった。しかし、本田太一氏への相談をきっかけに復活。SPでのトリプルアクセル成功を引き寄せた 【Photo by Matthew Stockman/Getty Image】

 4年前の平昌五輪にあと一歩で出場できなかった樋口新葉が、北京五輪に向けて磨いてきたのがトリプルアクセルだ。思いのこもった大技を、樋口は北京五輪シーズンに手中におさめている。

 今季の本格的な開幕前となる昨年10月に行われたジャパンオープンで、樋口は初めて試合で加点のつく出来栄えでトリプルアクセルを決めた。そして、国際スケート連盟公認大会となる昨年11月のスケートカナダ・フリーでも成功。4年前の悔しさを抱えて臨んだ北京五輪代表最終選考会となる全日本選手権でもフリーでトリプルアクセルに挑み、着氷が乱れながらも降りている。念願かなって北京五輪代表となった樋口は、五輪ではショートからトリプルアクセルを入れることを目指していた。

 ただ、北京五輪の団体戦でショートプログラムに出場した樋口は、自らの役割を果たすことに専念した。確実にロシアに続く2位をとるため、当日の朝にトリプルアクセルではなくダブルアクセルを跳ぶことを決断し、演技をまとめたのだ。その堅実な選択が、団体戦での銅メダルにつながったといえる。演技後のミックスゾーンで、樋口は納得しての決断だったことを口にしている。

「こっちに来て一回も(トリプル)アクセル跳べなかったですし、不安要素を一つでも消すためにダブルにしたというのもあって。本当に失敗できないので、ダブルでやってよかったなと思います」

 北京に入ってからの練習でジャンプの調子が上がらず、コンビネーションでは最初のジャンプで斜めの方向に上がってしまうためセカンドジャンプがつけられないことに悩んでいた樋口は、元フィギュアスケーターの本田太一さんに相談。「コンパクトに跳べばいいのではないか」という意見を取り入れ、ジャンプを修正している。

 冷静な判断で臨んだ団体戦のショートでは、トリプルアクセルを入れずに74.73という高得点をマークし「そこに(トリプル)アクセル入れられたら、もうちょっと高くなるな」といい欲も出ていた。

「個人戦に向けて、まだまだ足りないところがあるなと思ったので。まずはこちらに来てから一番いい演技ができたことでほっとしてはいるのですが、トリプルアクセルだったり、ちょっとしたところでプラスがもらえるような演技が目指せればいいなと思います」

 選手村の部屋でも坂本花織がいつも一緒にいるという状況で「すごく安心して過ごせている」と話した樋口は、個人戦に向けていいスタートを切った。個人戦のショートではトリプルアクセルを入れるのかと問われ、樋口は「本当に(トリプル)アクセル入れる気持ちで、ここから乗っていきたいなというふうに思っている」と答えている。

「今回のショートはダブルアクセルで滑りましたけど、大きいミスがなく滑れたので、そこは自信を持って。あとは『あと一回転増やすだけ』っていうふうに考えて頑張りたいです」

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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