プレッシャーショットの精度で日韓に明暗 ロコ・ソラーレの敗戦を近江谷杏菜が解説

竹田聡一郎

連勝街道をひた走っていた日本だが、ライバル・韓国に完敗。1次リーグは混戦模様となってきた 【写真は共同】

 14日、北京五輪のカーリング女子の1次リーグが行われ、2018年平昌五輪銅メダルの日本代表「ロコ・ソラーレ」は、同大会で銀メダルの韓国に5−10の敗戦を喫した。同日に行われた中国戦に勝利して4連勝と波に乗っていた日本だが、これで通算成績は4勝2敗に。この試合で90%に到達する高いショット成功率を見せた韓国のスキップ・金恩貞(キム・ウンジョン)の気迫に、押し切られる試合展開となった。

 連勝街道をひた走っていた日本は、今大会では負けが先行して苦戦を強いられていた韓国になぜ敗れたのか。また、続く15日の英国戦に向けてどう気持ちを切り替えていくべきなのか。北京五輪代表決定戦で対戦したフォルティウスのセカンド・近江谷杏菜さんに、ロコ・ソラーレの逆境に立たされた際の強さと次戦への切り替えの重要性を語ってもらった。

悪くない出だしながら3エンドで3失点を喫する

藤沢の強気のショットはロコ・ソラーレらしかったが、3エンドでダブルテイクアウトを決められる 【写真は共同】

――昨夜の韓国戦、ロコ・ソラーレは粘りましたが、惜しくも敗戦。午前中の中国戦でほぼ完勝といったゲームを見せてくれましたが、やはり五輪は甘くないですね。
 
 今回の五輪は本当に強い10チームがそろいましたので、それぞれのカードでどんな勝敗になっても驚きませんね。ただ、中国戦に関して言えば、ロコ・ソラーレは3点を取ってからはほぼ大きなプレッシャーを受けることなく、終始ゲームを支配する展開でした。

 完勝だったものの、「勝敗に直結するプレッシャーショットはほぼ投げていないこと」は見逃せませんね。そういう意味ではストーン(石)の研磨をした後で、さらに朝から夜の試合に移ってアイスのコンディションに変化がある中で、「キーショット、プレッシャーショットの感覚を中国戦で養えなかったこと」は、次の韓国戦での精度に影響を与えたかもしれません。

 一方の韓国は、これまでフィフスだった金栄美(キム・ヨンミ)選手がセカンドに入っています。平昌五輪でリードを務めていた選手ですね。韓国は五輪や世界選手権などでは負けが先行すると時々、こうしてメンバーの入れ替えをするのですが、それがいい方向に作用しました。

――日本は1エンドでスチールされましたが、2エンドで2点を返します。ミスはあったものの、そこまで悪くないで進行でしたが、3エンドでビッグエンドを作られてしまいました。
 
 3失点してしまいましたが、ロコ・ソラーレにとって終始いい展開で進んでいたエンドではありました。フロントエンド(リードとセカンド)でセンターラインにセットアップをして、バックエンド(サードとスキップ)に入ってからも、吉田知那美選手が2本ともほぼ完璧なヒット&ロールを決めるなど、ストーンの配置としては日本のチャンスにも見えました。

 あれだけ綺麗なヒット&ロールを決めると2点、3点の可能性が出てくるのがカーリングではセオリーなんですが、金恩貞選手が1投目で日本のストーンを減らして、2投目も少し距離のあるダブルテイクアウト。素晴らしい2本のテイクを決めましたね。

――日本としては藤沢五月選手の2投目のところで自分たちのストーンを押して、ハウス内にNo.1、No.2ストーンを作るというどちらかと言えば強気なショットを選んでいます。あそこが分かれ目だったのでしょうか?

 ロコ・ソラーレらしいというか、いいチョイスだと思います。ただ、何を言っても結果論にはなりますが、相手のストーンが2つハウスにかかって自分たちがNo.1ストーンを持っている状況でした。こういう場合、相手のストーンをケアして複数得点のリスクを減らしていくのか、スチールまで視野にいれて自分たちのストーンを守りにいくのか。どのチームも本当に悩ましい2択を迫られます。

 どちらかと言えば3エンドでは、ロコ・ソラーレが主導権を握っていました。自分たちのNo.1とNo.2ストーンを作る選択をしましたが、結果的に少し距離のある難しいダブルテイクアウトを韓国のスキップ・金恩貞選手にうまく決められてしまいましたね。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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