メダル届かずも初の決勝T進出 スマイルジャパンの挑戦は、4年後に続く

沢田聡子

ソチ五輪から歩んできた、メダルへの道程

メダルには届かなかったものの史上初の決勝トーナメントに進出したスマイルジャパン。北京でまたひとつ歴史を作った 【Photo by Sarah Stier/Getty Images】

 ブルーラインで、長い手を伸ばしてパックを止める。その一つのプレーだけで、フィンランドの圧倒的な強さが伝わってきた。

 アイスホッケー女子日本代表(スマイルジャパン)は、この北京五輪にメダル獲得を目指して臨んでいた。男子のトップリーグが日本のチームだけで運営できなくなりアジアリーグという形態に移行するなど、苦しい状況が続く日本のアイスホッケー界において、スマイルジャパンは常に希望であり続けてきた。

 1998年長野大会は開催国枠で出場したが、その後アイスホッケー女子日本代表にとり、五輪はあと1点、またはあと1勝で届かない、夢の舞台であり続けてきた。しかし2014年ソチ大会の最終予選では、3点差を逆転した試合も含め強い意志を持って戦い抜き、ついに大舞台への切符をつかむ。だがソチ大会では5戦戦って勝ち星を挙げることはできず、最下位という成績に終わった。再び最終予選を勝ち抜いて出場した2018年平昌大会では初勝利を挙げ、8チーム中6位となっている。

 そして2022年北京大会には、日本は2020年4月時点での世界ランキングが6位だったため、上位6チームに与えられる出場枠を自動的に得ての出場となった。三大会連続で出場している五輪において、日本は確実に前進している。コロナ禍により海外遠征が組めない難しさはあったものの、選手たちは意識を高く持って北京五輪に臨んでいた。

 1次リーグB組に入った日本は、3日に行われた初戦でスウェーデンを3−1で下し白星発進。続いて5日にはデンマークを相手に6−2で勝利をおさめた。ゲームウイニングショット戦(GWS)までもつれこんだ6日の対中国戦では2−1で敗れたものの、やはりGWSまで戦った8日の対チェコ戦では3−2で勝利している。この結果日本はB組の1位となり、初めて決勝トーナメントに進んだ。スマイルジャパンは、この北京大会でまたひとつ歴史を作ったことになる。また、グループ1位で予選リーグを通過したことで、現在圧倒的な強さを誇るアメリカ・カナダと準々決勝で対戦する事態を避けられたことになり、メダルへの距離を縮めた。

期待の若手がゴールを決めたが……

決勝トーナメントで唯一得点をあげた志賀紅音。今後のスマイルジャパンを引っ張っていく存在だ 【Photo by Harry How/Getty Images】

 12日に行われた準々決勝の対戦相手は、世界ランク3位で前回銅メダルを獲得している強豪、フィンランドだった。ゲームの序盤から、大きい体の選手たちが速い動きとパス回しで圧倒する。フィンランドの勢いにのまれたようにも見えたスマイルジャパンは、開始早々に反則をおかし、2分8秒に一人選手が少ない状態でフィンランドの先制ゴールを許す。続いて4分32秒にもゴールを決められ2−0となるが、第1ピリオド後半、15分1秒に期待の若手である20歳・志賀紅音が貴重な得点を挙げた。2−1となり、日本にも勝ち目があるかと思わせる一瞬だった。

 しかし、その後の試合は一方的な展開になる。フィンランドがさまざまな形のゴールを決めて力を見せつけ、第2ピリオドに2点、第3ピリオドに3点を追加したのに対し、日本は得点できない。猛攻をしのいできた日本の守護神・藤本那菜が相手選手との接触で首を痛め、第3ピリオド半ば過ぎにリンクを下りて小西あかねに交代。小西は追加点を許さなかったものの日本も点がとれず、7−1のまま試合は終了した。前回の平昌五輪と同じ6位という結果で、北京五輪でのスマイルジャパンの戦いは幕を閉じた。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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