チームメイトからの刺激を力に変えた鍵山優真 「普通の試合みたいな気持ち」で挑んだ初の五輪

沢田聡子

樋口新葉と宇野昌磨から受けた刺激

鍵山は団体戦ならではの醍醐味(だいごみ)も感じていた。 【Getty Images】

 鍵山は団体戦ならではの醍醐味(だいごみ)も感じていた。最後のジャンプとなるトリプルアクセルを降りたのは日本のチームメイトの目の前で、自然と笑顔が出てきたと話す。

「今日はチームのみんながいたので、さらに嬉しさを感じられたというか。みんなが一緒に喜んでくれたので『これが団体戦だな』ということをしっかりと感じ、雰囲気を楽しめたので良かったです」

 チームメイトの存在も、鍵山の背中を押した。

「今日、午前中に(樋口)新葉ちゃんがショートでいい演技していたのを、点数だけ確認して。さらに勇気というか『僕も頑張らなきゃ』という気持ちが芽生えたので、チーム戦としての良さを味わえた」

 また、男子SPで好演技を見せて2位になった宇野昌磨(トヨタ自動車)は鍵山の憧れの存在であり、お互いに刺激し合う関係だ。宇野からは、LINEで「今日はトレーニングがあるので、見に行けない」と伝えられたという。

「『個人戦の練習だと思って頑張れ』という応援の言葉をいただいたので。なんか、宇野選手らしい応援の仕方だなと」

 そう言って笑う鍵山からは、宇野への信頼が感じられた。

「これから(団体戦の演技を)やる選手については、全力で応援するので『頑張ってください』という気持ち」という鍵山。明日は、メダルを目指して戦うチームメイトに声援を送るつもりだ。

心の底から楽しく過ごせた団体戦

「変なプレッシャーとか緊張とかは全然なくて、むしろとても楽しく最後までできた」と演技を振り返る鍵山 【Getty Images】

「変なプレッシャーとか緊張とかは全然なくて、むしろとても楽しく最後までできた」「自分らしくいられた」と振り返る鍵山にとって、初めての五輪は本当に楽しい舞台でしかないようだ。

「今日6分間(練習)の時から謎の自信と、緊張を全然感じなくて。ある意味五輪というか、普通の試合みたいな気持ちの持ち方。そういう感じです」

 初出場で銀メダルを獲得した昨季の世界選手権でも緊張はせず、この北京五輪でも同じ感覚だったという鍵山には、大舞台を楽しめる強さも備わっているようだ。

「『せっかくの五輪なので、変に緊張して悔いを残したくない』という気持ちが大きかったので、楽しく。今までは緊張して、自分を騙すために『楽しまなきゃ』と思っていたのですが、今日は心の底から楽しく過ごせました」

 シニアデビューと同時に快進撃を続け、世界選手権2位という結果を出した昨季に比べ、今季前半の鍵山は苦しそうに見えた。怖いもの知らずの昨シーズンに残した自身の好成績が、鍵山の重荷になっていたのかもしれない。しかし、鍵山はグランプリシリーズ2戦を戦いながら少しずつ調子を上げると、全日本選手権では3位という結果を残して北京五輪への切符をつかむ。そして、初めての五輪で最高の滑りを見せた。その強心臓を支えているのは、日々積んでいる地道な鍛錬なのだろう。

 二人三脚で歩んできた正和コーチには、「団体戦の一区切りとして、いい演技ができたので良かった」とねぎらわれたという。それと同時に、個人戦への気構えも説かれている。

「これから個人戦が控えているので、またそこに向けてしっかりと気持ちを切り替えて。今日はしっかりと休みたいと思います」

 自らの貢献によって団体戦のメダルを勝ち取ることができれば、きっと個人戦にも勢いがつく。鍵山優真の北京五輪は、楽しさしかないものになりそうだ。

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著者プロフィール

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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