アスリートにとって『最強のライバル』とは? アスリートトークバトル VOL.3

構成:スポーツナビ
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提供:BOATRACE

最強のライバルを倒したことでやり残しはなくなった

K-1 WORLD MAXで2度優勝し、魔裟斗さん最強のライバルだったアンディ・サワー 【t.SAKUMA】

DJケチャップ 続いては、魔裟斗さんの『最強のライバル』。

魔裟斗 オランダの選手で、アンディ・サワーという選手。僕の引退試合の最後の対戦相手だったんですけど、その選手とは3回、2005年と2007年、そして2009年と戦っているんです。

 1回目はトーナメントの準決勝で当たって。その時は判定で負けたんですけど。パンチ、キックと総合的にバランスのいい選手で、(自分と)似ているタイプだったんです。似ているタイプってあんまり作戦はいらないんですよ。だから、そのままいけば勝てるかなと思ってやったら勝てなくて……。

 次にやったのが2007年のK-1のトーナメントの決勝戦だったんです。でもその時は、トーナメントの1回戦がムエタイのチャンピオンのブアカーオという選手だったんです。当時世界最強と言われる選手と1回戦で戦って、ブアカーオに勝つことだけ考えたんですよ。ブアカーオだけに意識を集中していて、勝つことができたんです。だけどそれで決勝まで行けて、アンディ・サワーとまた試合することになって。その時点でもうブアカーオに勝てたので、3試合目はあんまり気持ちが乗っていなかったというか。でも(リングに)上がらないわけにはいかないなというので、決勝はまたリングに上がって、サワーからローキック蹴られて心が折れちゃったんですよね。2ラウンド終了時にタオルを投げてもらったんです。ローキックで倒れる時って、心が折れたときなんですよ。

宮下 痛みとかじゃないんですね。

魔裟斗 痛いんですけど、心が折れなければ立っていられるんですよ。

DJケチャップ アドレナリンで向かっていける?

魔裟斗 引退試合の相手としては、やっぱり2回負けているサワーとやりたいという思いがあって、それで最後にダウンを取って判定勝ちで勝つことができたんですけど。自分にとって格闘技でのやり残しはもうなくなったんですね。「またリングに上がりたいか?」と聞かれることがあるんですけど、全く未練はないですね。自分の中でやり切ったというのがあるので。

 まあそれは、サワーがライバルがいてくれたからこそ。相手に負けたくないと思ってこっちも頑張るし、逆を言うとライバルがいるから盛り上がってくれるし、一人よりライバルがいたほうがいいんだなと、やっぱり引退して思いますよね。ただ、現役中はちょっとうっとうしい存在なので(笑)。

宮下 お前がいなければ簡単に勝てるのに、って。

魔裟斗 そうなんですよ(笑)。

亡きライバルに笑われないように、胸を張って仕事したい

将来を期待されながらも、40歳の若さで亡くなった今坂勝広選手 【(C)BOATRACE】

DJケチャップ 最後は徳増選手の『最強のライバル』。

徳増 強いて言うと、同期の今坂勝広選手、5年前に癌で亡くなったんです。同期で、ボートレーサー養成所に一緒に入るんです。そこで1年2か月の間、一緒に生活をするんです。支部も同じ静岡で、デビューしてからもお互い切磋琢磨してたんです。

 常に、今坂の方が僕より一歩先を進んでいたんです。初めの頃はただ「悔しい、悔しい」でやっていて、「ちくちょう!」と思ってやっていたんですけど、その気持ちだとやっぱり彼に勝てなかったんです。やっと追いついたと思った時が、彼を認めることができた時です。彼の強さ、彼のうまさ、彼のスタイルというものを初めて認められて、自分が受け入れられるようになって、そこのレベルまで達することができたなと思いました。あいつ気に入らないなと思っていても、(相手を)認められないうちはやっぱり成長しないですね。相手の強さを認められることができて、受け入れられて、初めていいライバルだなってお互いが認識できたときに上がっていくというか。

DJケチャップ まだねたんでいるだけの時では、自分も成長できないということですよね?

徳増 逆にいなくなったことによって、常に自分は見られている。だから今坂に「なにやってるんだよ!」と言われないようにやっているのが現状ですね。存在しない人がライバルって結構しんどいですよ。僕は本当に彼に笑われないように胸を張って仕事したいので、そういうつもりでやっています。

DJケチャップ ということで、第3ラウンド最強のライバルトークバトル、WINNERは徳増秀樹選手。今坂選手の分まで頑張ってもらいましょう!

<第4回『最強の未来』編に続く>

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