安藤美姫が見る最強ロシアの地元GP展望「北京五輪代表争いの前哨戦として注目」

沢田聡子
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女子での世界最高得点となる265.08を叩き出したワリエワを筆頭に歴代最強メンバーとも言われるロシア。GPシリーズ最終戦は地元開催となる 【Photo by Matthew Stockman - International Skating Union/International Skating Union via Getty Images】

 国際試合としての本来の姿に戻った今季のグランプリ(GP)シリーズも終盤戦に入った。ファイナルに向けての最終第6戦となるロシア杯が11月26〜28日、ソチで行われる。注目は女子フィギュアスケート界を席巻する地元・ロシア勢。北京五輪金メダル最有力の呼び声高いカミラ・ワリエワはもちろん、エリザベータ・トゥクタミシェワ、マイア・フロミフと今季のGPで結果を出した面々が出場する。

 一方、日本からは松生理乃(中京大中京高)がエントリー。北京五輪代表決定戦となる全日本選手権(12月22〜 26日、埼玉)に向けて弾みをつけたいところだ。また、男子では田中刑事(国際学園)と友野一希(セントラルスポーツ)が出場予定。同じく全日本を見据えたうえで、自分の滑りをいかに表現できるかが注目される。今大会についてトリノ、バンクーバーと2大会連続で五輪に出場し、世界選手権で2度の優勝を経験した安藤美姫さんに、展望をうかがった。(取材日:11月17日)

羽生欠場の男子は田中刑事の4回転の出来に注目

世界選手権を2度制した安藤美姫さんに、女子シングルを中心にNHK杯の見どころを聞いた 【写真:本人提供】

――ロシア杯にエントリーしていた羽生結弦選手(ANA)は、右足関節靭帯損傷の回復が遅れているため、残念ながら欠場することになりました。

 NHK杯から期間も短かったので、欠場は致し方ないですね。ただ、前回の平昌五輪シーズンもNHK杯の公式練習でケガをして、その後は五輪本番まで試合に出場しませんでした。過去にもこうした逆境を乗り越えてきた経験のある選手です。調整の仕方や大事な試合でのモチベーションの上げ方は分かっているはずなので、その点は大丈夫なはず。復帰を信じましょう。

――日本男子は田中選手と友野選手が出場します。2人とも初戦のグランプリシリーズ(田中選手 スケートカナダ・10位、友野選手 ISUグランプリ・6位)では力を出し切れなかったようですが。

 田中選手の場合、アクセルを含むトリプルジャンプはほぼミスしないイメージなので、一番の鍵になるのは4回転だと思います。4回転が成功した時は他の演技に余裕が見られるので、プログラムがより引き立つでしょう。問題は、4回転が失敗した時のメンタルかもしれません。おそらくフリーで4回転を2本入れると思うのですが、1本失敗した場合でも、2本目で緊張しないように調整することが重要になりますね。

 実力もありますし、五輪経験もあるので、どこが大事でどこを強化すべきかが分かっていると思います。今大会で自身のベストの演技に近いものを発揮できれば、全日本では代表争いに食い込んでくるでしょう。

 友野選手はフリーに2種類の4回転を入れていますが、いい時と悪い時の落差がある印象を受けます。音楽表現の部分ではトップの選手に劣らないものを持っているので、自身の武器を引き立てるためには、やはりジャンプの成功が重要かなと思います。まずは2種類の4回転とトリプルアクセルでミスしないこと。そうすれば、全日本でもいいイメージを持って臨むことができるのではないでしょうか。
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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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