日本シリーズの次は都市対抗野球! 補強制度や応援合戦など見どころ満載

西尾典文

負けたチームから補強できる「独自ルール」

補強先のチームで2年連続Vの橘朋晃。今年は自チームで優勝なるか 【写真は共同】

 都市対抗野球の独自ルールとして特徴的なのが「補強選手制度」で、その名の通り同じ地区の本大会出場を逃したチームから選手を補強できるというものである。戦後、人気の高まりを見せてきたプロ野球人気に対抗するために、その都市の最強チームで本大会に出場するという趣旨で1950年の第21回大会から設けられた。

 現在は1チーム最大3名まで補強することができ、北海道、北信越、四国以外の本大会に複数の代表チームが出場している地区では第1代表から順に選手を指名する仕組みとなっている。実力のある選手は所属チームが予選で敗退しても補強選手として本大会に出場するケースが多く、日本製鉄かずさマジック(君津市)の橘朋晃が一昨年はJFE東日本(千葉市)、昨年はHondaと異なるチームから補強選手に選ばれ、いずれも優勝に大きく貢献している。今年も前述した日本生命、東芝など予選で敗退した強豪に所属している選手が多く補強選手に選ばれており、彼らの活躍が優勝の行方に大きく影響してくる可能性も高い。

大きな見どころの一つ「応援合戦」

都市対抗野球ではバラエティーに富んだ応援を見ることができる。なまはげが登場した年も 【写真は共同】

 そして都市対抗野球の大きな見どころの一つが、各チームの応援団による応援合戦である。応援席となっている一塁側、三塁側スタンドの最前列にはステージが備え付けられ、チアリーディングなどのあらゆるパフォーマンスが行われるのが恒例だ。1963年の第34回大会からは応援団コンクールが実施されており、最優秀賞、優秀賞、敢闘賞が選出されている(特別賞、努力賞が贈られる年もある)。昨年は新型コロナウイルスの影響で応援が禁止となったが、今年は人数制限や演技中以外のマスク着用など細かいルールが取り決められながらも2年ぶりに応援が復活となっただけに、各チームの応援団のパフォーマンスにもぜひ注目してもらいたい。

優勝候補筆頭は昨年VのHondaではなく…

 最後に今大会の展望だが、優勝候補の筆頭としては夏に行われた単独チームでの日本一を競う日本選手権を制した大阪ガス(大阪市)を推したい。投手陣は右の河野佳、左の秋山遼太郎の先発投手2人が安定し、他にも力のある投手がそろう。打線も広島から6位指名を受けた主砲の末包昇大、ベテランの青柳匠、ルーキーの三井健右など長打力のある打者が並び、得点力も高い。更に日本生命から実績のある選手3人を補強しており、更に隙がなくなった印象だ。

 三菱重工East(横浜市)、三菱重工West(神戸市・高砂市)もチーム統合によって選手層が一気に厚くなった印象だ。両チームとも経験豊かな投手を複数そろえているのが大きな強みと言える。1回戦屈指の好カードと言えるのが日本通運(さいたま市)とパナソニック(門真市)、NTT東日本(東京都)とトヨタ自動車(豊田市)の対戦だ。どのチームも全国大会では上位進出の常連であり、今年も安定した強さで予選を勝ち抜いてきた。1回戦の勝者が優勝争いに絡む可能性は高い。昨年優勝のHondaは、1年を通じて打線に元気がないのが気がかり。投手ではルーキーの片山皓心がエース格となっているが、昨年本大会で活躍した朝山広憲も故障からの復活途上であり、連覇への道は険しい印象を受ける。

 中にはプロよりも高い技術を感じさせる選手も確かに存在しており、そんな高いレベルの選手たちが負けたら終わりの一発勝負で全力プレーを見せるというのが都市対抗野球の醍醐味である。今年も初冬の寒さを忘れさせるような大人の本気がぶつかり合う熱戦に期待したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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