勝ち点6は必須で使命と誓う酒井宏樹「特にオマーン戦には特別な思いがある」

飯尾篤史

悔しさというより、呆然とした

終了間際の失点でベスト8への道が閉ざされたロシアW杯。あの感覚を二度と味わわないように、という思いが常にある 【Photo by Michael Regan - FIFA/FIFA via Getty Images】

――オーストラリア戦を迎えるにあたって、森保一監督はシステム変更を決断しました。4-3-3でいくと分かったときにはどのように感じましたか?

 何かしら変えてくれた方が、次に向けて切り替えやすいなと僕も思っていて。それに伴って選手も少し入れ替わって、雰囲気が変わったというか。新しく入った選手たちがいい刺激をもたらしてくれて、前に進んでいけましたね。

――新たにスタメンになった田中碧選手と守田英正選手は、酒井選手と近いポジションでした。トレーニング中にはどんなことを心掛けたのか、彼らにどんな言葉をかけたのでしょうか?

 声掛けはそんなにしてないですね。彼らがやれる選手だということは分かっていたので、心配していませんでした。ただ、連係の部分に関してはほとんどやったことないですから。もちろん、碧とはオリンピックでやりましたけど、A代表はシステムややり方が少し違う。練習時間も1日ぐらいしかなかったので、試合中に話しながら。試合の中で良くしていくしか方法はなかったので、試合中に「どんどん要求してくれ」と僕も話していましたし、僕も要求していました。ふたりともスムーズに試合に入っていましたし、すごく頼もしかったです。

――スカウティングもされていたと思いますが、酒井選手の対面の選手が11番の速い選手(アワー・メイビル)ではなく、本来はトップ下でプレーする13番の選手(アーロン・ムーイ)で、実際に中に入ってプレーすることが多かったと思います。相手もメンバーを代えてきましたが、問題はありませんでしたか?

 そこはいつも通りですかね。毎試合、相手チームをしっかり分析して臨みますけど、どれだけスカウティングをしても、想定外のことが試合中に起こるので。そのときにメンタルのブレをできる限り少なくするような準備をしています。今回も、相手が想定と違うメンバーだったので、試合が始まって相手の狙いを見極めて、周りの選手たちと話し合いながらうまく対応できたんじゃないかと思います。

――問題が起きたとき、ピッチ内で臨機応変に対処することは、ロシアW杯のベルギー戦以降、日本代表チームのテーマのひとつになっていると思います。このチャレンジは少しずつ実ってきていると感じますか?

 本当のところは、あの大きな舞台じゃないと証明できないですよね。今、成長してきていると言ったところで、証明にならないですから。ただ、準備はしていますし、成熟してきていると思いたいですけどね。それを信じて積み重ねていくしかない。またあの大きな舞台に出られるように必死に戦って、そこで証明したいと思います。

――2-0からひっくり返されたベルギー戦は、今の代表チームの原点です。あの悔しさの借りを返したいとか、あれからさらに成長した姿を見せたい、といった気持ちがモチベーションになっていますか?

 そうですね。悔しさというより呆然とした、そんな感覚だったので。あの感覚を二度と味わわないように、というのは自分にとって戒めになっていますね。

――もう少しこうしていれば、こういうことができたんじゃないか……などという後悔を二度としないように、今、いろいろとチャレンジしていると。

 ただ、こうしていれば……っていうシーンは毎試合山ほどあります(苦笑)。それを毎試合、2つ、3つずつ減らしていく、といった感覚です。本当にパーフェクトな試合はないですね。なるべく後悔を少なくするために、全力で取り組んでいるという感じです。

勝ち点6が必須で使命

新しいチャレンジとさらなる成長を求めて今回、浦和に加入。さっそく右サイドで存在感を示している 【Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images】

――オーストラリアを下したときは、どんな思いが込み上げてきましたか? 思いを新たにした部分はありますか?

 ただただホッとしましたね。とにかく勝ち点3が取れて良かった。代表戦、特に予選は勝たないと意味がないですから。チームの雰囲気が変わったのは明らかでしたけど、これを継続していかなければいけないなって。

――初戦でオマーンに敗れたことが重くのしかかっていたのではないかと想像します。オーストラリア戦での勝利で重荷が取れたというか、楽になった感覚はありましたか?

 楽になった感覚はないですね。本当にホッとしたという感じ。オマーン戦は確かに準備が難しかったですけど、だからといって勝ち点3を逃すのは、絶対にしてはいけないこと。限られた時間の中で最善の準備をして、コミュニケーションをしっかり取って、予選を進めていかなければいけない。過去は取り返せないので仕方ないんですけど、最終予選はあらためて学ぶことが多いです。

――11月11日のベトナム戦、16日のオマーン戦はいずれもアウェイゲームとなります。この2連戦の重要性をどう捉えていますか?

 アウェイでは自分たちの思ったようなプレーがなかなかできないと思うので。不慣れな環境の中で、日本代表のために何ができるか、個人個人が感じて、勝ち点3のために全力でやるしかないと思います。何が何でも勝ち点6を取らないといけない。ベトナム戦も簡単な試合にはならないでしょうけど、特にオマーンには初戦で負けているので、特別な思いがあります。

――酒井選手は夏にJリーグに復帰して、今は国内組として日本代表に合流しています。ヨーロッパから合流するのとは異なる感覚があると思いますが、いかがですか?

 今のところ、メリットはまったく感じていないですね(苦笑)。

――そうなんですね(苦笑)。

 特に10月はアウェイスタートでしたから、コンディション調整が難しかったです。次はアウェイ、アウェイなので、本当に地獄ですよね。でも、その次(2022年1月、2月の連戦)はホーム、ホームなのですごくありがたい。11月のアウェイ連戦をしっかり乗り切りたいと思っています。

――では最後に、11月のアウェイ2連戦はDAZNでの配信となります。ベトナム戦とオマーン戦に向けて、日本で応援するファン・サポーターのみなさんに、意気込みとメッセージをお願いします。

 勝ち点6獲得は必須で、使命だと思って戦います。あとは観ている人たちが安心できるような、内容面でも面白いと思ってもらえるようなゲームをして、強い日本代表を見せられるように、チームみんなで頑張りたいと思います。

酒井宏樹(さかい・ひろき)
1990年4月12日生まれ。長野県出身。柏レイソルU-15、柏U-18を経て2009年にトップチーム昇格。12年7月にハノーファーに移籍した。ドイツで4シーズン過ごしたのちの16年6月にはフランスの名門、マルセイユに加入して大きく飛躍。21年6月、浦和レッズに移籍し、9年ぶりにJリーグ復帰を果たした。日本代表としては12年のロンドン五輪、14年のブラジルW杯、18年のロシアW杯に出場した日本を代表する右サイドバックだ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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