権田修一が語るアウェイ連戦への臨み方 「自信がなければ日本代表の資格はない」

舩木渉

落ち着いてドンと構えていられたからこそ

一体感が素晴らしかったオーストラリア戦。埼玉スタジアムでのW杯予選の勝率は8割4分と驚異の高さを誇る 【Getty Images】

――個々に感覚を研ぎ澄ましていった結果、チーム内でコミュニケーションが増えるなどの変化はありましたか?

 そこまで変わったと感じませんでしたね。むしろどんな試合でも、限られた時間の中でコミュニケーションを取るべきところで取って、全員が常に最善の準備をしている自信があります。例えば、オマーン戦は相手の方が良い準備ができていたのは確かですけど、僕たちの準備が足りなかったとは思っていない。僕らは僕らなりにベストの準備をし続けていると思います。

 オーストラリア戦に関しては、誰も慌てなかったのが良かった。焦って「やばい! 何かやらなきゃ!」とならず、落ち着いてドンと構えていられたのが勝てた要因のひとつだったと思います。

――11月にはベトナム、オマーンといずれもアウェイで対戦します。この連戦の重要性をどう捉えていますか?

 もう勝つだけだと思います。それがカタールW杯につながる道ですし、難しい相手だとか、長距離移動があるとか、困難はいろいろあるかもしれないですけど、W杯の出場権を獲得することは、日本代表に課せられた使命。それには、この2試合に勝つ以外にありません。僕らは勝利のためにとにかく最善の準備をするだけです。

――前回対戦で日本に勝利したオマーンは、ホームゲームということもあって相当な自信を持って臨んでくるのではないでしょうか。日本にとってはリベンジ必須の極めて重要な試合になります。

 このアジア最終予選は、どういう状況であっても、すべてのチームと2回対戦することが決まっていますよね。初戦で負けたからもう1試合やらなければならないわけではない。「一度負けたんだから、次こそは絶対に勝とう」という強い気持ちで試合に臨むこともできるけど、そうやって1試合の結果に一喜一憂するのは危険だと思います。最初の対戦で勝とうが負けようが、とにかく目の前の試合に勝つことが大事。そのための準備をするだけだと思います。

 そもそも、自分たちの力をしっかりと発揮できれば勝てる、という自信がなければ、日本代表として試合に出る資格も、戦う資格もない。自分たちがこれまでにやってきたことを出せれば、ベトナムにもオマーンにも勝てると僕は思っています。

世界のトップ・オブ・トップを目指す

W杯予選でも、Jリーグの試合でも、どの試合でも温度感を変えない。それが権田のモットーであり、流儀だ 【Getty Images】

――権田選手にとって最終予選の先にあるW杯とは、どんな存在ですか?

 日常の中のひとつの大会、くらいのテンションでやらなければいけないと思っています。W杯直前の試合でケガをしてもいいくらいの気持ちでプレーできないといけないと思っているし、自分の中での今のテーマはそこなんですよ。W杯予選だろうと、Jリーグの試合だろうと、どの試合でも温度感を変えてはいけない。毎日練習して、毎日ベストを尽くしてここまでやってきた人間なので、その感覚をズラしてはいけない。例えば、Jリーグでケガをしたときに「もうすぐ代表戦があるから、大事をとって休んだ方がいいかも」と考えてしまうようなら、自分に日本代表に入る資格はないと思っています。

――W杯はなんとしても出たい夢の舞台というより、燃え尽きるまで日常にすべてを捧げた末にたどり着ける場所と捉えているわけですね。

 それが僕らしいかなと。日々すべてを出し尽くしてきたことで今の自分が出来上がったわけですし、近道だったのか遠回りだったのかは分からないけど、僕にとっての道はこれしかなかったんだろうなって。だから、これからも、もっともっとチャレンジしなければいけないとも思っています。

 日本代表としてプレーすることには国を背負う責任が伴うのは当然ですけど、たとえW杯の後だろうと、所属クラブの試合に全力で臨まなければならないのも当たり前のこと。仮にW杯で良い結果を残しても、クラブに戻ってきてすぐの試合でミスをして負けたら、すごく悔しいわけじゃないですか。

 だから、どの試合にも強い気持ちで臨むということを今までやってきたし、これからも変わりません。「W杯はどんな大会でしたか?」という質問は、ぜひ大会が終わった後にしてみてください。もしかしたら中田英寿さんみたいに「引退します」という気持ちになっているかもしれないし、未来はどうなるか分からないので。

――言い方を変えると、ストイックに努力を続ければ、どんな可能性も拓けてくる、と。

 そう信じてやっていますし、年齢が上がると現役選手として残された時間は短くなっていくわけですけど、それでも世界のトップ・オブ・トップを目指すという考えに変わりはありません。W杯優勝を目指す日本代表でプレーしている以上、GKとして「世界で10位以内でOK」なんて言っていたら、チームとして頂点に立てるわけがない。常に貪欲に上を目指さなければいけないし、個人としても世界一を狙わなければいけない。そうでなければ、日本代表のゴールを守る資格はないんじゃないかと思っています。

――11月のアウェイ2連戦はDAZNでの配信となります。最後にベトナム戦とオマーン戦に向けて、日本から応援してくれるファン・サポーターのみなさんへ意気込みとメッセージをお願いします。

 日本代表戦を見てくださるみなさんに満足してもらえるような試合をしたいと思っていますし、僕らは日本全体の代表として、「日本のサッカーはやっぱりいいね」「日本代表は強くて面白いね」と感じてもらえるようなサッカーを見せたい。日本サッカーを盛り上げていくためにも、そういう魅力的なサッカーをしたうえで、2試合とも勝ち点3を取って帰ってきたいと思います。

権田修一(ごんだ・しゅういち)
1989年3月3日生まれ。東京都出身。FC東京U-15、FC東京U-18を経て2007年にトップチーム昇格。プロ3年目の09年にプロデビューを飾ると、15年シーズンの途中までFC東京の守護神としてゴールを守った。オーストリアのホルンに在籍したのち17年、18年はサガン鳥栖でプレー。さらに二度目の海外挑戦となるポルトガルのポルティモネンセでのプレーを経て21年から清水エスパルスに所属する。日本代デビューは10年1月のイエメン戦。12年にはロンドン五輪に出場。14年のブラジルW杯のメンバーにも選出されたが、出番はなかった。22年カタールW杯アジア予選では正GKを務めている。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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